『筥迫工房』のブログ 筥迫の作り方と材料の販売 筥迫!箱迫!箱セコ!ハコセコ!はこせこ! 管理人:Rom筥
3月の花独楽は『花一華(はないちげ)』です。
これは和名で、皆さんにお馴染みの名称は「アネモネ」です。
その他「牡丹一花(ぼたんいちげ)」「紅花翁草(べにばなおきなぐさ)」等の和名があるようですが、日本には明治時代に輸入されました。
今年は冬が暖かいので、「桜」と「アネモネ」どちらを3月に出すか悩んでいましたが、結局は桜の開花状況次第ということになりました。
しかし工房近くの桜並木は今になってもまだ蕾は小さく硬い状況で、東京で桜が満開になるのは3月末との予想が出たので、今月はアネモネをアップして、桜は4月早々を目指してアップしようと思います。
花独楽のおかげで、今年一年は花の開花や花屋の流通に一喜一憂しそうです。
今年初めに、毎月一回花独楽の動画をアップしようと目標を立てたものの、現在出来ている花独楽は10種のみ。
やっているうちに2個ぐらい増えるだろうとの安易な考えで見切り発車しました。
しかし花の種類は多種あれど、全てが花独楽に適した形とも言えず、PCのデスクトップは花画像にまみれる毎日。
今ある花独楽を月別に分けて、空欄の一つが3月でした。
3月は早い春、ということで目についた花がアネモネでした。
赤、ローズピンク、紫のカラフルな色が印象的なアネモネは、この季節になると花屋でも目立った存在でしたが、いつからか私の記憶の彼方へと消え去っていました。
しかし季節は早春の今が盛りのはず。
それなのに、花屋をいくら探し回っても、どこもアネモネを置いている店がない。
ある花屋さんで言われたことは、こんな陽気じゃ仕入れてもすぐ咲いちゃうから仕入れられないとのこと(東京で2月中旬に気温が20度にもなった頃)。
更には、最近の花屋の傾向として、アネモネが減ってラナンキュラスが増えたらしい。
アネモネを作る農家さんも減ったことから、市場にあまり出回らなくなったのだそうです。
確かにアネモネは花持ちも悪いし、花びらの多いラナンキュラスはゴージャスで花持ちも良さそうだし。
巡ること数軒、やっとアネモネが置いてある花屋さんを見つけたものの、それは八重のアネモネ(写真手前)。
う〜ん、アネモネというより矢車草みたい。
これじゃない感を抱えながらも、妥協してこの八重のアネモネで撮影するかと思っていたところ、最後に訪れた花屋でやっと見つけた私の記憶の中のこれぞアネモネ(写真後方)。
ああ、懐かしい、やっと出会えた。
しかしながら、その昔は束になって売られていたアネモネも、今時は3本(300円)がまとめられているだけだったので、アネモネ特有のカラフル感に欠けるというか、何だか普通の花に紛れてアネモネの特別感がないのがちょっと残念。
これではラナンキュラスに負けちゃうよなぁと思いながらも、とりあえず今の目的は動画撮るだけなので、2束買ってミッションクリア。
花独楽動画は自然光で撮影しているのですが、工房の自然光が入る窓は北向きのため、天気のいい日でないと撮影できません。
そこで天気を見ながらアネモネが完全に開かないように暗い部屋に置いていたのですが、いざ撮影しようという段になってまだ半開き状態のまま(汗)。
慌ててエアコンのそばにおいてみると、あっという間にのけぞるがごとく開き過ぎている。
急いで撮影!と何回か撮り直しをしている間に、みるみる枯れていくアネモネに焦る焦る、、、。
結局、半分枯れかけぐらいの状況なんですよ今回のアネモネは(泣)。
ということで、花集めの舞台裏の奮闘を交えつつ、どうぞ雰囲気だけ味わってください。
でも私としては、記憶の彼方に消え去っていたアネモネに再会できて満足です。
アネモネはカラフルな組み合わせが印象的なので、今回はまとめて3色作ってみました。
(白のアネモネも好きなのですが、白だけは単色でまとめた方が可愛い気がする)
もうちょっと本物のリアル感を追求しても良かったんですが、あまり凝った作りにすると生徒さんたちが作る時に大変なので、それなりのデフォルメに留めておきました。
要は一目見てアネモネ!とわかればいいのよ。
風の花(Wind flower)
アネモネは、クリスマスローズ、ラナンキュラス、クレマチスなどと同じキンポウゲ科の植物です。
(ちなみに、同じキンポウゲ科の「秋明菊(シュウメイギク)」は、「ジャパニーズ・アネモネ」と呼ばれているそうです)
アネモネの語源はギリシャ語の「風(アネモス)」で、英名は風を意味する「Wind flower」。
つまり「風の花」ということで、春風が吹き始めると咲く花で、花の妖精とも呼ばれています。
これは花が風に揺れる様というよりは、その種が綿毛になって風に運ばれる様にちなんでいるのだそうです。
カラフルなアネモネの花は、実はガクが変化したもので、あれは花びらではないそうですよ、びっくりですね。
また草全体に毒を持っているので、花を手折った時の汁が肌に触れると、皮膚炎などを引き起こすことがあるそうです。
(ますますラナンキュラスに軍配が上がりそうな、、、)
そして、光や温度に敏感に反応するそうで、動画撮影するまで暗い暖房のない部屋に置いたときは半開きのままだったのも、暖房のそばで一気に開いたのも、これが原因だったということですね。
アネモネにまつわる神話は色々とあるのですが、古代ギリシアではアネモネは悲しみと死の象徴とされてきました。
キリスト教時代になっても、受難の血の色としてマリアの悲しみの象徴とされました。
反対に毎年咲く多年生植物であること、十字軍殉教者の墓地から血のような赤い花が咲いたことによる「血」と「復活(蘇り)」にからめて「奇跡の花」「Easter flower(復活祭の花)」として、復活祭には欠かせない花なのだそうです。
私はクリスチャンなので、教会では「野の花」という言葉がよく使われますが、今までそれはポピーのことだと思っていたのですが、実はガリラヤの地に自生するアネモネの花だということを今回初めて知りました。
筥迫以外の袋物細工を習いたい方はこちら!
筥迫を作ってみたい方はこちら!
筥迫工房のInstagram(@hakoseko_studio)
Pinterestはブログのインデックスとしてお使いください
ハッシュタグは「#筥迫工房」「#筥迫工房の型紙」でお願いします
もしよかったら、こちらもクリックなんぞしてくれるとうれしいです。
前回の「筥迫講師認定C」のテストを受けられたT.Mさんに引き続き、「工芸科進級テスト」に合格された「ままねこ」さんの作品をご紹介します。
「ままねこ」さんは以前よりこのブログで何度か作品を掲載させていただいていますが、講習会から通年開催の教室になっても、静岡から東京まで年に数回通われて、今回めでたく工芸科に進級することになりました。
工芸科進級テストは、実技課題1点(左下)、提出課題2点(縢襠筥迫玉縁付、四ツ襠紙入)で採点します。
実技課題は認定Cと同じ時間で仕上げますが、扱う素材が違うので、より高度な仕立てになります。
「筥迫講師認定」に求められるレベルは、現代で通用する仕立てであり、「工芸科」に求められるレベルは、その昔の筥迫職人によって作られていた古き良き技術に基づいた仕立てなので、採点もより厳しくなります。
このレベルで筥迫や紙入れが作れるようになると、工芸科では本仕立ての筥迫や江戸型筥迫、定家文庫などの仕立てをする資格が得られます。
貼り込みで作る袋物教室では、入門、初級、中級、上級までを「教科」として袋物細工を学び、「工芸科」になると本格的に嚢物工芸を学ぶ技能修練コースと、職人コースに分かれます。
「教科」では、ある程度のステップはあるものの、基本的には自分が作りたいものを作ります。
C認定だけを取りたければ、他の袋物は作らないでひたすら筥迫だけを作り続ける人もいます。
講師認定だけを取りたければ、それに必要なカリキュラムのみをこなしていく人もいます。
自分の楽しみとして全ての型を制覇していく人もいます。
数をこなせば技術は自然に身についていくので、無理なくその人のレベルで純粋に袋物細工を楽しんでいただきたいというのが「教科」です。
「貼り込みで作る袋物細工」は、専門用語が多かったり、処理の仕方も一連のルーティーンを覚えなければならないので、初心者は何をやっているかわからないうちに出来上がっていた、と感じるようです。
工程が難解に感じられるのは、洋裁脳に染まった現代人にはその切り替えが難しいだけで、慣れれば布を使ったただの工作物ということがわかるはずです。
ただ実際に作ってみると、手の掛け方や細部の処理に、日本的な繊細さがふんだんに詰まっていることが感じられると思います。
そんな趣味で作る袋物細工から、一歩目覚めて本格的に工芸の世界に進んで行きたい人たちのために数年前に「工芸科」を作りました。
工芸科で作るような高度な袋物は色々な素材を用いて作るため、使うものによって作り方を変えざるを得ません。
私もアドバイスはしますが、最終的には自分で考えて悩んで修練を重ね、作品作りをしていく段階に入ります。
そのため、貼り込みの基礎が完全に身についている必要があり、テストというものが存在します。
急がなくても一定の時間で筥迫を仕上げられるようになるまで筥迫の作り込みをするのはC認定と同じです。
できれば綺麗な柄のある布を使わないでと言っていますが、これは仕立ての精度に集中するためです。
筥迫作りは考えなくても手が動くというレベルにならないと、工芸として本来気を使わねばならないところに集中できないですから。
私自身は意図せず工芸的な物作りの道に入りましたが、現代では貼り込みの袋物が作れる職人がいなくなったことから、ニッチな需要に迫られたということがありました。
現代で専業の職人として成り立つかは疑問ですが、作れる人がいなければそれも困るというニッチにありがたがられる世界なので、私には職人や作家を育てるという使命もあります。
今回、工芸科進級をされたままねこさんは日本刺繍がご専門なので、自身の刺繍で提出課題の作品を作りました。
工芸科の提出課題は自分の好きな布を使って作品を作るというものですが、日本刺繍で提出課題を作ったところで作品点が数点あがるぐらいですよと言ったところ、ボツにした刺繍が残っていたのでそれを使って仕立てただけとのことでした。(なんて贅沢な使い方)
ままねこさんはこれまでは教科での型を中心に作品作りをされてきましたが、今後は江戸型筥迫や定家文庫などの本格的な型で筥迫作家、袋物作家として活躍して行く姿が見られると思います。
ままねこさんはInstagramでも作品を発表されています。(@eastglen110)
緻密な刺繍は袋物作品を作るにはぴったりですが、今後は更に華やかな作品が増えていきそうで楽しみです。
四ツ襠紙入れもふっくら丁寧に作られています。
筥迫以外の袋物細工を習いたい方はこちら!
筥迫を作ってみたい方はこちら!
筥迫工房のInstagram(@hakoseko_studio)
Pinterestはブログのインデックスとしてお使いください
ハッシュタグは「#筥迫工房」「#筥迫工房の型紙」でお願いします
もしよかったら、こちらもクリックなんぞしてくれるとうれしいです。
筥迫工房には「認定制度」というものがあります。
先日「筥迫講師認定C」と「工芸コース進級テスト」にそれぞれ合格された方がいたので、今回と次回でそのお二人の作品をご紹介させてただきます。
筥迫講師認定C
まずは「筥迫講師認定C」に合格されたT.Mさんの作品。
試験課題は、縢襠筥迫(基本型)の実技課題(左)と提出課題(右)の二つです。
実技課題は、支給された布を含めた材料一式を使い、事前の準備(自宅で行う)をしてきた上で工房に来て試験を受けます。
試験の内容は、指定時間内に作ること、そしてそこで出来上がった作品を点数化して技術判定します。
認定を受ける人に試験内容を説明すると皆一様に顔を曇らせるのですが、教本を見なくても楽々作ることができないで認定を取ろうと思う方が無謀というものです。
各種認定を受ける人には、試験の前にかなりの作り込みをさせます。
毎回目の前に時計を置いて、工程ごとに時間を測っていきます。
試験でこの「時間」というものを重視しているのは、筥迫を作る時間を競うためではありません。
全ての工程で迷うことなく作り切ることができれば、一定の時間内に仕立てられるようになるものなので、工程ごとに時間がかかっているところは、どこでつまづいているのかを確認して、そこを更に詰めていきます。
合計時間が平均して規定内に達するようになると、そろそろ試験をしようという段階になります。
そして、その頃にはほとんどの人が技術も一定のレベルに達しています。
筥迫というのは、出来上がりは同じに見えても、仕立ての仕方によって大きな差があります。
「筥迫講師C認定」というのは、筥迫工房が販売している教本で使われている型紙を使った筥迫で、最も難易度の低い仕立て方です。
以前講習会で教えていた筥迫もこの基本型になりますが、お客様に商品として出すような筥迫は、もう少し難易度の高い「B認定」での仕立てになります。
講師認定に合格すると、自動的に「技術認定C」と「筥迫講師認定C」の両方が認定されます。
「技術認定C」というのは、対面での販売が可能となる認定で(ネット販売不可)、この「技術認定C」のみを取る人もいます。
テストはこの技術認定に対するものなのですが、それにプラスして講師認定の特別カリキュラムを受講することで「筥迫講師認定C」の両方が認定されます。
C認定で作る筥迫は着物地が限界ですが、画像のようなレベルにはきっちり仕立てられるようになります。
(T.Mさん、よく頑張りました!)
初心者に帯地で筥迫作りを教えるようなことはないので、筥迫講師認定はこれで十分だと考えています。
提出課題(右)は、完全に自宅で作り上げてくるものですが、玉縁仕立てで飾り房までを作った作品を提出します。
作品点も加わるので、好きなだけ凝って作ることができますが、あまり楽しんで作ると細かな技術が疎かになってしまうので、あくまで冷静に仕立てましょうねと言っています(教室の人は筥迫作っていれば幸せな人が多いので)。
筥迫の仕立ての技術は側面にほぼ集約されているので、ここを見ればどのぐらいのレベルかはすぐにわかります。
あともう一つありますが、それはここでは書きません(笑)。
私が筥迫工房を始めたきっかけは、当時販売されていた筥迫と、昔の職人が作った筥迫のあまりのレベルの違いにショックを受けたことからでした。
筥迫専門の職人が作った「高度な仕立て」の筥迫が流通していたのは、昭和20年代ぐらいまでです。
その頃は専門の筥迫職人たちが腕を競い合っていたので、基本的に仕立ての技術が高いものが多いです。
(ただし、アンティークのものには、たまに女学生が作ったであろう素人っぽいものもかなり混ざっています)
その職人たちがいなくなって、筥迫の生きる道が婚礼業界に移ってから筥迫の劣化が始まります。
工芸的な「美しさ」が筥迫に求められていた時代から、「着付けしやすい」筥迫に価値観が変わってしまったからなんですね。
私が筥迫作りを始めた頃は、市販の筥迫もまだそれらしい外観はしていましたが、現代では筥迫としての概念さえ覆されてしまいました。
胴締めのない紙入れを筥迫扱いするのは、白熊をパンダと呼ぶようなものです。(飾り房、びら簪は、時代やスタイルによってあったりなかったりではある)
筥迫工房の認定は、よくあるカリキュラムをこなせば認定されるような商業的なものではなく、本来の技術を問うためのものです。
長く時間がかかる人もいれば、最短で取る人もいます。
昔の職人が作った筥迫を見て「私もこんな美しい仕立ての筥迫が作れるようになりたい!」と願ったように、本来の美しい筥迫を多くの人々に普及させる講師たちが世の中に増えていくのは大変喜ばしいことです。
できれば日本中に筥迫の作り方を教えられる講師の方が増えて、かつての美しい筥迫が巷で見られるようになる日が来ることを願わずにはいられません。
次回は「工芸コース進級テスト」に合格された、ままねこさんの作品をご紹介します。
筥迫以外の袋物細工を習いたい方はこちら!
筥迫を作ってみたい方はこちら!
筥迫工房のInstagram(@hakoseko_studio)
Pinterestはブログのインデックスとしてお使いください
ハッシュタグは「#筥迫工房」「#筥迫工房の型紙」でお願いします
もしよかったら、こちらもクリックなんぞしてくれるとうれしいです。
2月の花独楽(はなごま)は『梅』です。
前回、花独楽の動画を撮影するにあたり、ただコマを回すだけはつまらないので、本物の生花と共演させよう!と思い立ちました。
そして2月になったら「水仙」の動画を撮ろうと決めていたのですが、時は確定申告真っ盛り。
早々に申告を終わらせ、いざ水仙!と花屋に直行したところ、どこを回っても水仙の花がない!
ちょっと前までは見かけたのに、、、(泣)。
用意していた花独楽は一般的な房咲きの白の水仙(日本水仙)で、今年は早々に出回らなくなっていたとのことでした。
ということで、気持ちを切り替えて2月の花独楽は「梅」に変更。
梅の方が時期的にはちょうどいいと思ってはみたものの、すでにある梅の花独楽は教室では一番初めに作る基本型で、デフォルメされすぎて本物の梅と並べてもほとんど同一には思えない(下の赤鹿の子)。
ということで、もう少しリアルを追求した形に変更したのが今回の花独楽です。
リアルでありながらもしっかりと回るというのが私が考える現代の花独楽なのですが、思いの他可愛い仕上がりと安定した重心に、自分としてはかなり満足。
(動画は見た目重視なので回し方が甘くなってしまいますが、うまく回せばもう少し長く回るのよ〜)
さて、無事梅の花独楽も出来たし、次は花木の梅を入手しに行こうと花屋に出向くも、またしても梅がない!
今は梅が盛りの時期なので、一般家庭を探すしかない。
そこで、教室の生徒さんの中からFさん方に目星を付けて連絡したところ、庭には白梅も紅梅もあるのですが、運悪く先月庭木の剪定をしたばかりで、花が残っているのは地上5〜6mで手が届きません(泣)と言われてがっかり。
しかし翌朝に一転して、「先生、朗報です!」というFさんからのメールには白梅の画像が貼り付けられていました。
日が登ってから庭に出てみたところ、手の届きそうなところに少しだけ花が咲いていたのを見つけて、ご実家から高枝切りばさみを借りてきてなんとか採取できたのだとか。
連絡をした翌日には梅の花を入手することができ、花独楽の2月のミッションを無事クリアすることができました。
そして届けてくれた「白梅」の中に、なんと「紅梅」も一枝入れてくれていたので、急遽紅梅も作ったという次第です(少し濃すぎた?)。
それにしても、今時の東京で白梅、紅梅の大木があるお宅、、、なんてステキ♡
Fさん、本当にありがとうございました。
しかし、今年一年は花探しに苦労しそうだわ(汗)。
時代は梅から桜へ
日本人として、花の象徴といえば当然の如く「桜」を連想すると思うのですが、対して「梅」はどうしても古典的なイメージになってしまいます。
しかし「万葉集」に取り上げられた花のランキングでは、1位はダントツの「萩」で141首、2位の「梅」が118首、そして現代に人気の「桜」はなんと8位の40首しかないそうです。
(出典元によりこの数は違うのですが、梅に対して桜は約1/3ぐらいしかないと思ってください)
梅の枝を届けてくれたFさん曰く「思いがけず白梅の枝を届けるなんて、今話題の源氏物語みたいで結構楽しかったです(電車でだけど)」
Fさんなんて素敵なこと言うのかしら、と思いながら「源氏物語」も梅の話題は多そうなので調べてみたところ、万葉集(奈良時代)のツートップである「萩&梅」から、源氏物語(平安時代)になると「梅&桜」がツートップになっているのだとか。
匂い袋の「誰ヶ袖」でお世話になったこちらの歌、
「色よりも かこそあはれと おもほゆれ たが袖触れし やどの梅もぞ」
の古今和歌集(平安時代)でも「梅」の29首に対し「桜」は53首と逆転しています。
「梅」は「桜」と同じく日本的な雰囲気がありますが、実は古くは中国から渡来した外来種で、奈良時代以前は貴族社会で行事などの際に好まれて使われるような花でした。
それに対して「桜」は日本に元々ある在来種なので、庶民には桜の方がずっと身近な木だったようです。
そんなことから庶民により馴染み深い「桜」を愛でようという機運が高まってきたのが平安時代ということですね。
また、梅は花の姿より「香り」が重視されたのに対し、「観賞」を目的にした花見と言えば桜!が庶民の間でもてはやされるようになったのは江戸時代になってからなのだそうです。
歳寒三友
これは中国が起源の言葉で「歳寒三友(さいかんさんゆう)」と読み、冬の寒さに耐える3種の植物をパターン化したものです。
「歳寒」は厳しい冬のことで、その中で常緑である「松」「竹」、花を咲かせる「梅」を「三友」とし、この三友には「梅」「水仙」「竹」というパターンもあるそうです。
これは、逆境でも耐える理想の人、ためになる友だち、清廉潔白、節操を表す絵のテーマとして用いられていましたが、それが日本に渡って「松竹梅」とされ、吉祥の象徴(また等級を表すもの)に変化したそうです。
「四君子(しくんし)」は「蘭」「菊」「梅」「竹」の4種の植物をですが、ここでも梅は登場します。
その昔、梅は原産国の中国で愛された名高い花として、堂々と日本に渡ってきたんでしょうね。
花独楽と貼り込み
梅のシベは長く不安定なので、うねうねしてしまうのはご愛嬌ということで。動画や画像ではあまりよくわかりませんが、実際には回すとシベがキラキラ光って綺麗です。
花独楽は袋物じゃないと思う方もいらしゃることとは思いますが、紙に布を貼って作る物という意味においては「貼り込み」です。
そして、糊、紙を駆使して物を作るのが、誰よりも得意なRom筥です。
私は対外的には筥迫の専門家を名乗っていますが、実際には完成された綺麗な作品を作るよりも、中の構造を考えたり型紙を作っている時間が一番好きです。
見たこともない袋物を見つけたりすると、一瞬で頭の中に展開図が浮かびます。
それを図面に起こして、どこまで自分がイメージした通りの物に仕上げることができるか、試作をしている間が何より楽しい。
試作を作るときはできるだけつまらない柄の生地を使うのですが、これは柄に惑わされると本来の仕立ての誤差が見えずらくなってしまうからなんですね。
教室の生徒さんたちにも、筥迫の作り込み(筥迫特訓みたいなもの)をさせるときは、できるだけ柄のないもので練習した方がいいというのですが、ほとんど却下されます(もちろん無理強いはしませんが)。
いつも綺麗な物を作っていたいということのようです。
私は仕事柄、綺麗なものを見る機会は普通の人より多いと思いますが、綺麗なものなんて感動するのはその一瞬だけなんですけどねぇ。
そんな私が花独楽にハマってしまうのは、「コマ」という構造が好きなんですね。
造花は飾って「綺麗」なだけですが、花独楽はそこにプラス「回る」という動作が付くんです。
花の形によって重心と遠心力が変わってしまうので、微妙に形状を直しつつ、それぞれの部品の重さを調整しながら作っていきます。
最近は道に咲く花を見ると、これは回る形状か否かを考えるのがクセになってしまいました(笑)。
机の上にはいつも花独楽が置いてあって、PC仕事に疲れると花独楽を回してリラックスするという、私にはとても楽しいおもちゃです。
筥迫以外の袋物細工を習いたい方はこちら!
筥迫を作ってみたい方はこちら!
筥迫工房のInstagram(@hakoseko_studio)
Pinterestはブログのインデックスとしてお使いください
ハッシュタグは「#筥迫工房」「#筥迫工房の型紙」でお願いします
もしよかったら、こちらもクリックなんぞしてくれるとうれしいです。
昨日、東京は久しぶりの大雪でした。
午前中は雪が降るような天気ではなかったものの、テレビでは帰宅時間あたりに大雪になりそうとのことだったので、ちょうど教室の日ということもあり、全員に確認して急遽教室はお休みということになりました。
雪国の方から見れば積雪8cmで大騒ぎするなんて失笑ものでしょうが、東京でこのぐらい降るのは2年に一度ぐらいしかないので、そりゃ交通網もマヒしますわ。
しかし昨日はショップからの注文が相次いだので、私は通常通り工房に行って遅くまで仕事をしておりました。
家から工房までは自転車で20分ぐらいなので、雪でも歩いて帰れるわぐらいに高を括っていたのですが、気がつけば夜の8時、、、。
外は一面の雪景色でした。
雪に雷も珍しかったですよねぇ。
真夜中かと思うほど、人も歩いていなければ車もまばら。
雪の中ヒーヒー言いながら自転車を押しつつも、珍しい降雪に心ウキウキで(子供か!)1時間以上かけて家に帰りました。
家に帰ると、家人は早期退社で在宅、娘はたしか春休みで今日は在宅のはず、なのにいない、、、?
家人曰く「雪の夜の街が見たいと散歩に行った」。
ただただ雪が珍しい、これが東京人です(笑)。
母と雪かきの思い出
そして今日、外はどんな状態でも工房には行かねばならぬのです。
なぜかといえば、急いで「雪かき」しなければならないからです。
工房の前は人通りの多い歩道です。
実家の母が生前、雪が降った後はとにかく「急いで雪かきをしないと!」と言っていたのを思い出します。
雪かきをしないと通行人が通れない!というのは表向きで、家の前の雪かきが少しでも遅くなると、隣の家の人に雪かきされてしまうからです。
工房(実家)のあたりは家幅の狭い家が長屋のように連なっているので、自分のところだけやるとそこだけポツンと嫌味ったらしく目立ってしまうし、自分の家の前だけだと距離も短いのですぐに雪かきが終わってしまう、だから隣の家の分までやってしまおう!という感じになるのですが、そうするとやってもらった家の人は、雪かきもしないだらしない家と見られて恥ずかしい(母談)思いをするわけです(めんどくさいなー)。
そんなワケで、母は隣の家の雪かきの音に耳を澄ませ、その音が始まると急いで外に飛び出して雪かきをするので、そこからは近所中で一斉に雪かきに発展します。
こんなに狭いところなんだから2〜3人が代表してやればいいのにと思うのですが、狭い道を大勢の人が大騒ぎしながら雪かきしている様はなかなか笑えるものがありました。
自宅のマンションでも雪かきは住人総出でやるのですが、皆が一斉に出てくるので雪かきスコップ(マンション用)が足りない。
どうしても自分用のスコップが欲しい!と言ったところ、家人から東京なんて2年に一度ぐらいしか雪かきするほどの雪なんて降らないんだから、そんなもの必要ない!と却下されていたのですが、内緒でマイスコップを買ってしまいました(笑)。
それがこれ。
雪国の人が見たら笑われるぐらいささやかな大きさ(笑)。
今は工房に持ってきているので、誰にも文句を言われずに雪かきスコップが使えます。
しかしそんな私でも、さすがに去年圧迫骨折をしたので、雪が硬かったら雪かきはあきらめようと思っていたのですが、今年の雪は10時時点で半分以上溶けていたので、それほど無理なく周辺の雪かきを終えることができました。
今は昔と違って、住人は雪かきなどできない年寄りが増えてしまったので、隣のおじさんと二人で手分けして静かな雪かきでした。
こんな雪かきも楽しいと思えるほど、たま〜にしか雪が降らない東京の雪の日事情でした。
筥迫以外の袋物細工を習いたい方はこちら!
筥迫を作ってみたい方はこちら!
筥迫工房のInstagram(@hakoseko_studio)
Pinterestはブログのインデックスとしてお使いください
ハッシュタグは「#筥迫工房」「#筥迫工房の型紙」でお願いします
もしよかったら、こちらもクリックなんぞしてくれるとうれしいです。
言わずと知れた、コクヨの定番品『ドットライナー』。
文具の大人気商品として、お仕事などでお使いの方も多いことと思います。
実は貼り込みでも、3種の糊のうちの一つ「留糊」としてお世話になっている糊です。
留糊というのは、ちょこっとだけ仮止めしたいときに使うのですが、ドットで糊が出てくるため「5mmだけ出したい」という調整がしやすいのが利点です。
また水分を含まないので、ヨレヨレ、ベタベタを気にすることなく、手軽にすぐに接着できるのもうれしい。
私は酸を含まない「アシッドフリー」と説明していますが、正確にはコクヨ独自の基準で「写真や紙の変色の原因となる酸を抑えたのり」という言い方をしています。
慣れた人こそ使い方に注意が必要
「でんぷん糊」や「サイビノール」は「水性」なので、どちらも使い方には注意が必要です。
糊で作る物はうまく出来ないという方は、ほとんどの場合その正しい使い方がわかっていないだけで、それらの特性をよく理解して使うと、貼り込みでの物作りはとても楽しいものになります。
でんぷん糊やサイビノールと比べると、ドットライナーはそれほど注意をしなくても使える大変優秀な糊なのですが、使い慣れた人に限ってダメにしやすい。
私は最近、新たに詰め替えたテープを2回続けてダメにしました(涙)。
私のようなハードユーザーは、「スタンダードタイプ(16m)」(画像下)ではなく、「ロングタイプ(36m)」(画像上)を使っていると思います。
スタンダードタイプと比べるとかなり大きいですが、慣れてしまえば安定感があってなかなか良い。
これだけあってもすぐに使い切ってしまうので、もちろん詰め替えも常にストックしてあるのですが、最近、詰め替えて間も無くにテープが動かなくなることが2回続きました。
テープが引けなくなってしまった場合は、後ろのコアの側面にある溝にペン先をかませてテープを動かすのですが、そのうちコアを巻いても動かなくなることがあります。
こうなったら、残念ながらもう元には戻らない、、、(泣)。
これを36mの1/3も使っていない状態でやらかすと、やたらと悔しい。
その原因を色々と考えたのですが、テープを勢いよく引くと「糊飛び」してついてしまい、フィルムに残ったドット糊を巻き取ることにより、巻き取り側のコアに糊が付いてが動かなくなるのだろうと思いました。
そこでコクヨのカスタマーに問い合わせたところ、やはりそれが原因の一部とのこと。
こうなってしまうと何をしても直りません。
これは慣れているがためのハードユーザーあるあるです。
普通に使っていても本体の劣化により同症状は出やすくなるので、10回程度詰め替えたら本体も変えましょう(コクヨ推奨)。
リニューアルされたロングバージョン
ところが、今回ドットライナーを改めて調べたところ、ロングタイプの新バージョンが発売されていたことを知りました!
2023年の1月発売ということなので、ちょうど一年前です。
今月従来バージョンの詰め替えをAmazonで箱買いしたばかりなのに、、、悔しい(でも新しいの買ったよ)。
上が従来型で、下がリニューアルされた「LONG50」です。
従来品の白部分がなくなってツルんとした印象ですが、大きな目玉の付いたずんぐりむっくりした形状です。
従来品は青部分をそのまま詰め替えますが、リニューアル版はブルー部分が被せになっていて、これを右側にカパッと開いて、詰め替え用を入れるという構造になっています。
従来品に比べると、詰め替えが骨格だけになった感じです。
従来品と値段はそれほど変わらないので、テープの増量分は、この青色カバー部分が無くなったことと引き換えなのかも?
ドットライナーの発売は2005年ということなので、すでに20年近くも経っているわけで、考えてみれば、そのぐらい長い間使われていれば、リニューアルの一度や二度あるだろうと思いますが、あまりにも目が慣れてしまっているので、デザインが変わるだけでやたらとびっくりしてしまいます。
本体の交換目安も10個から20個になったそうなので、耐久性も増したようです。
フタのバネがやたらと頑丈になったのはわかる。
ちなみに、コクヨの説明によると、
「たっぷり使えてつめ替えの手間を削減する大容量タイプ。ヘビーユーザーにおすすめです。」
くすぐるコピーだわ(笑)。
コクヨではすでに従来品は生産終了しているようです。
リニューアル版が発売されて一年も経つというのに、ほとんど従来品しか目立たないのは、多分、どこも従来品在庫が残っているからなのだと思います。
だって、こちらの「LONG50(50m)」は従来品(36m)と比べて断然長いのに、価格がほとんど変わらないので、誰も在庫の従来型を買わなくなるからですね。
今現在、従来型のロングを使っている方は、リニューアル版は従来型と構造が違うため、詰め替えの互換性はありません。
なくなったら詰め替えを買わずにリニューアル版を買ってくださいね。
更に言うなれば、スタンダードタイプ(16m)とも、ほとんどお値段かわりないですからね。
家ではロング50を使い、持ち運びにはスタンダードを使うのがお勧めです。
Amazonは色々な販売業者が出品しているので、常に値段が変動していて、まとめ買いより単品で買った方が安いということもよくあることなので要注意です。
Amazonの「LONG50」を貼っておきますが、なぜか本体のカートが出てこない。
(そのうち出てくるのでリンクは貼っておきます)
ということで、Amazonプライムのようなものもなく、全品送料無料の「ヨドバシネット」が絶対お勧めです。
そしてAmazonより安い。
野菜は頭で食べる
上記とは全然関係ない話ですが、最近面白いと思った「野菜」の話題を。
我が家の娘は、家族揃って食卓を囲むときは「野菜」を食べるのですが、私がいないときに、各自が小皿に分けて用意しておいたものを食べるという時は、決まって「野菜」の小皿には手をつけません。
完全な野菜嫌いということでもなく、ただ野菜を食べるのは「面倒臭い」のが理由のようです。
小さい頃は野菜を食べなくても、ある程度の年齢になると、美容のため、もしくはダイエットのためなど、体に必要な栄養素と思って食べ始めると思うのですが、二十歳を過ぎても状況はあいも変わらず。
どんなに言っても野菜を無視するので、最近はワンプレートにしているのですが、その時は野菜だけ分けるのも面倒ということもあり、しかたなく食べているようです(その代わりレタスだって一緒にチンすることになるぞ!)。
ところが最近、作り過ぎた野菜のおかずを配膳してもらった時に「多い分は明日に回すから、全部盛り付けなくていいよ」と私が言うと、
「昨日から外食続きでほとんど野菜を食べていないから、自分が全部食べるわ!」
と言い出したのでびっくり!
どういう心境の変化か?と聞いたところ、現在バイトをしているチェーンの喫茶店で、「サラダ」を注文する人は元気なお年寄りだったり、快活に受け答えするようなお客が多い反面、サラダを注文しない人は、相対的に愛想が悪かったり、わがままな客が多い、ということがわかったからだそうです。
最近は入店したお客の様子を見て、この人はサラダを注文する、しない、の予測を立てて楽しんでいるそうです。
実体験に勝る理解なしですね。
ということで、最近とても感心した笠原シェフのサラダをご紹介。
単純なのに美味しい、そんなレシピが好きです。
筥迫以外の袋物細工を習いたい方はこちら!
筥迫を作ってみたい方はこちら!
筥迫工房のInstagram(@hakoseko_studio)
Pinterestはブログのインデックスとしてお使いください
ハッシュタグは「#筥迫工房」「#筥迫工房の型紙」でお願いします
もしよかったら、こちらもクリックなんぞしてくれるとうれしいです。