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母に贈る筥迫

筥迫といえば「ハレの日」に使うものと相場は決まっていますが、最近それとは全く違う目的で筥迫を作られた生徒さんがいました。

それがとても印象的だったので、ご本人の了解を得て今回はそのお話を書きたいと思います。

 

ある日の朝早く、教室に通うMさんからメールが入りました。

その日の教室に飛び入り参加して、どうしてもその日中に仕上げたい筥迫がある、ついては先生の力をお借りしたいとの内容でした。

急に知り合いに結婚式の写真撮影が入り筥迫が入り用になると言うのはよくあることですが、それにしてはかなり切羽詰まった状況に感じました。

「簡易式」であれば1日で作る事は可能ということでMさんにお勧めしました。

 

教室に来たらすぐに作業を開始できるようにこちらも意気込んでいたのですが、いつまでたってもMさんはやってきません。

1時間、2時間と過ぎていき、ついには4時間経ってもこないので、これは不慮の事故にでもあったのか?と教室の人たちとも気を揉んでいたのですが、結局Mさんがやってきたのは他の人たちが帰り支度を始めた教室の終了間際のことでした。

 

これは完成間際まで家で仕上げて遅くなったのかと思いきや、事前作業どころか何も手をつけていない、材料も持ってきていないと聞いて開いた口が塞がらないとはこのことです。

そして、Mさんがおもむろに広げたのは一枚の「留袖」でした。

 

母の留袖

 

それはMさんのお母様の留袖でした。

この留袖で筥迫を作り、母の「棺」に入れてあげたいというのがMさんの願いでした。

そう、Mさんのお母様はその2日前に旅立たれ、今は葬儀が始まる前のあの慌ただしい準備の真っ最中だったのです。

その中で棺に入れるためのお母様の着物探していた時に、ふとこれで筥迫を作って母を見送りたいと言う気持ちがMさんの心に芽生えたのでしょう。

 

教室の時間を延長したとしても、可能なのはせいぜい2時間です。

肝心のMさんは、この2日あまり寝てないというほぼ戦力にならない状態、私がフルに手伝いをしてどこまで作れるかが勝負です。

こんなに急いで筥迫を作ったことがないほどの急ピッチで作業することになりました。

 

急ぐのであれば、綿を入れないで「平仕立て」にすればかなり時間短縮できるとアドバイスしたところ、

Mさん「でも綿を入れた方がやっぱり可愛いし、、、」

作ってすぐに荼毘にふされてしまう筥迫であっても、Mさんにとってはできるだけ可愛い筥迫を母に身に付けさせたいという思いに、ちょっと心が熱くなりました。

2時間で何とか貼り付け作業までを終えたので、簡易式なら抱き合わせは簡単に終わります。

残りの縢りだけなら後は自分1人でできるでしょう。

このような目的で筥迫を作るのは初めてだったので、これは私にとっても非常に印象的な出来事になりました。

 

そして後日、出来上がった写真を送ってくださいました。

留袖は何枚かあったようですが、筥迫用に小さめの柄のものを選んでくれたので、柄出しは収まり良く出来上がりました。

 

この後、筥迫の中に六文銭とご家族様からのお手紙を入れて納めるとのこと。

内布はお母様がお好きな色だったという薄紫の綸子を用意されました。

簡易式なので、被せを開いたところがそのまま懐紙入れになっているので、ここにお手紙と六文銭を入れます。

 

この日出来上りを見届けることができませんでしたが、この画像にて無事筥迫が出来上がったことを知り、私も安堵いたしました。

実は白装束に懐中された画像もあったのですが(あくまで衣装部分のみ)、不謹慎かなと思い掲載は見送らせていただきました。(Mさん、ごめんね)

 

そしてこの教室の翌日から、私はベッド生活に突入したのでした、、、(汗)。

 

その後

 

前回、寝たきりの絶対安静と書いたので、痛みで起き上がれないと思われた方が多かったようですが、更なる連鎖骨折が起こりやすい状態なので(すでに2カ所やっているので)絶対安静にするよう言われただけで、じっとしていればそれほど痛みはありません。

今はコルセットでガチガチに体を固定しているので慎重に動く事は可能ですが、30分もするとすぐに痛くなってしまうので、家族曰く「ウルトラマンのような生活」で何とか乗り切っています。

 

あとはほぼ横になってできるようなことしかできませんが、ブログを書こうにも寝ながらiPhoneやiPadで長文を打つのは疲れるので、他に良い方法は何かないものかと考えて「音声入力」を使うことを思いつきました。

ということで、このブログは自分がしゃべった言葉をそのまま文章化しています。

OSに備わっている音声入力なのでさほど精度が高いとは言えませんが、手直ししながらでも打つよりは楽なので助かっています。

なんで今まで気がつかなかったんだろう。

 

近年ブログに使う参考書籍の引用文を「OCR」を使って自動書き起こしできるようになったことも画期的に楽になった出来事です。

OCRとは、カメラで撮影した活字をそのまま文字起こししてくれるアプリのことです。

袋物の資料は旧漢字が多く、通常の変換では出てこない文字も多い。

以前は一文字一文字ネットで検索しながら書き起こしていたのですが、OCRはそんな古い漢字も一瞬で文字に起こしてくれます。

スクラップしなくても、テキストにできれば場所もとりません。

どちらも一般的なものだとは思いますが、デジタルの世界は次々に新しいものが出てくるので、自分に合ったツールを見つけられた時は、しみじみと便利な時代の恩恵を感じてしまいます。

 

ChatGPTについて思うこと

 

音声入力に気をよくして、この際だからと今話題の「ChatGPT」を試してみることにしました。

ChatGPT(チャットジーピーティー)とは、質問したことに何でも答えてくれる(文章化してくれる)対話型AIのことですね。

自分にはまだ遠い世界のツールと思っていましたが、最近教室の生徒さんに勧められたり、娘が大学で使っているという話を聞いていたので、今この暇な時間を活用しない手はないと早速登録。

 

手始めはやはり筥迫についての質問です。

しかし初めに返ってきた答えは、筥迫は茶道で使うもの、着物を収納するために使うもの、さらには「はこぶくろ」と読むあたり、ツッコミどころ満載の内容でした。

そこから正確な読み方や、その他の情報を少しずつ与えながら回答の精度を上げていきます。

ちょっとした単語の選び方1つで大きく回答の内容が変わってくるので、質問の仕方いかんで最良の回答が返ってくるか、とんでもない回答が返ってくるかは紙一重のようです。

 

私は文章を書くのは好きですが、スラスラまとめられるほどの構成能力はないので、下手をするとブログが書き上がるまで何日もかかるときがあります(それも楽しくはある)。

しかしChatGPTはものの数秒で完璧な文章を生成してくれるので、私のような労力を払いたくない人は絶対使いたくなるでしょうね。
そしてそれがとてつもなく間違った内容でも、完璧な文法と論理的な構成で作られた文章は、それだけで読む人を信じ込ませてしまう恐ろしさがあります。

今後は真偽のわからない情報がネットに氾濫し、それに振り回される世の中がやってくるということですね。

 

でも文章がうまくまとめられない時は、時々は手伝ってもらおうかなと思えるぐらい正直便利なものだと思います。

どんな時代であっても、便利なツールを使いこなすのはそれをうまく使いこなす「知恵」が必要ってことですね。

 

 

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新作 縢襠筥迫(基本型)応用 〜簡易式〜

最近、ある目的のために、基本の縢襠筥迫(教本の型紙)をベースにした応用型筥迫を作りました。

 

これまでの定番筥迫を「本式」とし、三つ並べて、左から「簡易式」「本式」「古式」と名づけました。

 

縢襠筥迫「本式」

 

ここで言うところの「本式」は筥迫工房の教本でも使われている型で、筥迫といったらこれ!とも言うべき定番のスタイルです。

 

江戸時代に用いられていた筥迫はクラッチバックほどの大きさで、当時の「打ち掛け」「お引きずり」に合わせたサイズ感だったので、明治以降の長着スタイルに合わせるにはあまりにもボリュームがありすぎます。

そこで長着にも合うようサイズダウンした現代の筥迫の元となる型が生まれました。

実は明治時代に約30年の時を経て復活した筥迫は、当初「東小町」という名称で販売されていました。

あまりにも本来の筥迫とは違う形状だったので、当時の人もこれを筥迫と呼ぶことを躊躇したんでしょうね。

しかしこの東小町が大ヒットしたおかげで、ここぞとばかりに色々な形状の筥迫が作られるようになりました。

 

当時の「東小町」がどんなものだったのか今となってはわかりませんが、この東小町という名称が出てくるのは明治29年発行の「風俗画報」のみです。

その後様々に作られた東小町風の懐中物が最終的に「筥迫」という名称に統一されていったことからも、江戸時代の型を含め、どれも「外見的な特徴が同じ」で、他の懐中物と明らかに区別できる特徴を持っていたことが考えられます。

それはやはり「共布で作った胴締め」(中央の帯)の存在以外に考えられません。

今回私が作った2点は筥迫工房のオリジナルですが、このように外観は同じでも、中の仕様を少しずつ変えた筥迫がたくさん作られたということです。

アンティークの筥迫も皆さん気がつかないようですが、中は少しずつ違った形状になっていたりするので、お持ちの方は是非見てみてくださいね。

そして昭和10年ごろには、今回「本式」とした筥迫のスタイルに統一されていったようです。

 

それでは、ここで「本式」といっている筥迫の中をもう一度確認してみましょう。

1)本体は前面が三ツ折り(鏡、段口付)、背面が紙入れ(千鳥掛け)の二層構造

2)簪挿しは上置き(飾り房付)

3)胴締めと落とし巾着

 

私があえてこの形を「本式」としたのは、これをフルセットとすると、現代ではこれらの部品を一つづつ差し引いた形で使われるようになってきたこと、そして部品を全て取り外された物が「伝統的な筥迫」となって受け継がれてしまうことを危惧してのことです。

これは現代の筥迫の根幹となるスタイルですし、私もこの形を基本として型紙を作ってきたので、勝手ながら筥迫工房ではこれを「本式」として区別にすることにしました。

 

「伝統」は時代に合わせて変わっていくものです。(変えずに引き継ぐのは伝承)

ただ、変えていい部分と、安易に変えてはいけない部分があるはずです。

例えば「大衆演劇」と「歌舞伎」の違いで考えるならば、大衆演劇がお客さんが喜ぶことなら何でも有りの世界であるとすれば、歌舞伎は伝統と格式の上に成り立つ芸能であり、初音ミクや鬼滅の刃とコラボしようが、誰が見ても「歌舞伎のスタイル」として認識できる要素の中で作られていることが重要です。

つまり筥迫が筥迫と認識できる最大の特徴は「胴締め」の存在ということです。

そして外見さえ筥迫であれば、中はどんな仕様に変えてもいい。

江戸時代の筥迫も二層式で、背面は共通して紙挟みですが(縢りはない)、前面パーツは主に一ツ口で、人によっては七つ道具を納めるための差し込みができる形に作らせましたし(基本オーダーなので)。

 

花嫁や七五三が筥迫以外のものを懐中してはいけないなんて決まりはないので、紙入れだろうが、ポケットティッシュだろうが、スマホだろうが、お財布だろうが好きなものを懐中すればいい。

ただし、着物に懐中すればそれら全てが「筥迫」になると考えるのは大間違い。

大衆演劇の役者が「私は歌舞伎役者です」と言うようなものです。

 

でも、お財布に同素材で作った胴締めを付けて懐中して「これは筥迫です!」と言われたら、それは筥迫じゃないとは言い切れないかもしれません。

だってお財布は立派な紙入れなので、それは現代版筥迫と言うしかない(苦)。

(スマホは袋の定義に当てはまらないので、胴締め巻いても筥迫にはならんよ)

 

 

縢襠筥迫「簡易式」

 

先の型が「本式」(左)で、右が今回新たに制作した「簡易式」です。

「本式」と並べてみてもほとんど変わりがありません。

筥迫を作ったことのある人なら、上の「簪挿し」がないことに気が付くかもしれませんが。

 

しかしこれを下から除いて見ると違いがよくわかります。

そう、とっても薄いんです!

画像だとわかりずらいのですが、触って比べるとびっくりするぐらい違いがわかるでしょう。

でも今時の花嫁さんたちは、この薄型から更に胴締めを外したものを懐中しているんですけどね(それは筥迫じゃないけどね!)

 

被せを開くと中は「紙入れ」パーツのみ!

せめてもの「持出口(表布で作る段口)」を付けてみました。

これを「三ツ折り」パーツに変えれば更に薄くすることはできるのですが、実はあの三ツ折りは「あがき」と呼ばれるもので実は袋物の体を成していない。

それに筥迫の「千鳥掛け」に憧れている人は多いので、やはり紙入れを残す方が筥迫らしくなっていいですね。

 

背面には「背口」を付けています。

これは「玉縁仕立て」に対応するためです。

サンプルは「折り返し仕立て」ですが、やはり筥迫といったら「玉縁仕立て」です。

本仕立てなら一周玉縁にしてもいいのですが、挟み玉縁では無理があるので、背口で玉縁を切るためにあえて付けました。

 

天面部の「簪挿し」がないので、胴締めを外せば「紙入れ」として使うこともできるのですが、こんなに薄くしたんだからジャラジャラ(びら簪&飾り房)も全部付けてほしいな〜という願いも込めて、汎用性のある作りにしています。

簪挿しがなくても、被せの折り掛けに幅がないのでそのままびら簪を差し込むことができます(安定感有)。

びら簪が飛び出すのが嫌ならば胴締めに通してもいいのですが、胴締めだけで支えることになるのでちょっと安定感には欠けます。

 

そこで今回開発した「補助の簪挿し」を中に入れると、安定感のある「横挿し」と「飾り房」も付けることもできます。

これで見た目には「本式」の筥迫と遜色がありません。

 

 

薄型を作る意味

 

この簡易型を作った理由は、兎にも角にも厚みのあるものを懐中したくない!という今時の風潮から。

今時の和装の世界は、襟元を崩さないようスッキリ見せることが美の基準なので、襟元に影響しないような薄く存在感のない筥迫が理想の形。

かたや筥迫至上主義の私にとって、いかにも筥迫が入っていることがわかるボリューム感のある胸元こそが花嫁らしさなので、厚みがあって風格が感じられる筥迫が理想の形。

 

かつて私が筥迫を作り始めた頃、サンプルに買い求めた市販筥迫のあまりの薄さにびっくりしたことをよく覚えています。

びら簪を差し込む「簪挿し」なんて幅が8mmぐらいしかなくて、なんだこれ?という感じでした。

まだ筥迫の何たるかもわからない頃だったにもかかわらず、この筥迫は「全く美しくない」と感じたんですね。

それ、悪い意味で取っておけばよかったと今更ながら悔やんでいるのですが、あまりにも陳腐でサンプルにならない筥迫だったのですぐに捨ててしまった(苦笑)。

実際にお嫁さんが使う筥迫セットだったんですけどね。

その後アンティークの刺繍筥迫を手に入れて、あまりの美意識の違いに愕然としました。

何より仕立てがうまい。素人が見てもうますぎる。

私が作りたい筥迫はこれ!と心に強く思ったのでした。

 

その他にも「紙入れ」パーツの中の懐紙が抜き取られているものもけっこう見かけます。

初めは興味本位で抜き取ったのかなと思ったのですが、中古の筥迫で懐紙が抜き取られたものがいくつも売られている事実に、これは意図して懐紙を抜き取っているのだということに気がつきました。

襟元を美しくスリムに整えるためには、筥迫がひしゃげてもお構いなしなんだと悲しい気持ちになりました。

人の美意識ってほんとわからないですね。

襟元が崩れるのが美しくないと感じるか、ひしゃげた筥迫を着装するのが美しくないと感じるか、、、さぁあなたはどちら?!

 

もちろん懐紙を外してしまえば簪挿しが不安定になるので、「邪魔な簪挿しは外そう!」と考えるのは自然の成り行きかもしれませんが、それは「びら簪」が外されることを意味します。

そんなことから、今は花嫁衣装にびら簪を見ることはほぼなくなりました(花嫁さんの華なのにねぇ)。

ここまできたら胴締めも外ずそうと思ったのかもしれませんが、普段使いの紙入れを使って花嫁としての格を下げるぐらいなら、もう懐中物自体いらなくね?と黒い心が湧いてきます。

 

でも時代は流れ、東小町が現れたように形を変えた筥迫が必要な時代になってきたということなので、紙入れが筥迫の仮面をかぶってその地位が入れ替わることを目論んでいることを見過ごすことはできないので、ならば私が薄型の筥迫を作ってしまえ!と思った次第です(苦笑)。

薄くてももちろん胴締めは付けますよ、だって筥迫だもの。

その上で美しい筥迫を作ればいい。

更なる薄さを求められるのであれば、被せや胴締めに綿を入れない「平仕立て」にすればより薄〜い筥迫になります。

 

金襴で作ってもかなり薄い!


 

これはいつかオンラインでやりたいと思っているのですが、相変わらず遅々として進まないので、とりあえず東京の教室に来ていただけるのであれば「体験講座」として一日(!)で作れるようにします。

全くの初心者であれば、布はこちらでおまかせのもの(別料金)で事前作業もこちらで行いますが、かつて講習会で筥迫を作ったことがある人であれば、事前作業ができるように材料一色を事前に送りますので、自分のお好きな布で事前作業してから参加すると、当日はさくっと作ることができると思います。

 

次回は「縢襠筥迫(基本型)古式」をご紹介いたします。

こちらもなかなかオススメです。

 

 

 

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「丸絎け」の沼にハマる

 

最近「丸絎け(まるぐけ)」の沼にどっぷりハマっています。

なぜにこのような事態になったのかと言えば、今年の秋は七五三や婚礼の材料を買い求めるお客様が多く、それに伴って、教本『婚礼用和装小物の作り方』の在庫が一気になくなってしまったことからでした。

 

再び印刷にかけるとなると何百冊という単位になるので、これが全てはけるには数年かかります。

そうなると、途中であれもこれも直したい!というところが山ほど出てきます。

つまり教本の在庫が切れたときが改訂時!ということで、その中に「丸絎け」の作り方が入っていたということです。

コロナの影響で教本も材料もほとんど出なくなってしまったので、「婚礼用和装小物の作り方」の改訂はまだ少し先の話と思っていたのに、こんな一気になくなるとは思いもよらず、今かなり焦っています。

 

もし、近々「婚礼用和装小物の作り方」を購入を考えていらっしゃる方がいましたら、できれば改訂版が出るのを少し待っていただけるとありがたいです。

 

 

丸絎けと筥迫は相性がいい!

 

刺繍の筥迫や帯地の筥迫を使う方には、私は「丸絎け」を組み合わせることをお勧めしています。

それらの筥迫は着物地を使ったものよりも存在感があるので、丸ぐけのボリューム感にとても良く合うからです。

相乗効果というやつですね。

もちろん花嫁衣装には丸絎けが一番です。

あのぷくぷくした見た目が何ともいえず可愛い♡

 

前版の「婚礼用和装小物の作り方」でも、この丸ぐけの作り方は解説されていますが、ここでは芯材に「持ち手芯」を使った作り方で説明しています。

持ち手芯を使った丸絎けは、ひたすら長い芯を「くける」(まつる)手間はありますが、失敗なく確実に作れる方法なので、教本に入れるなら実はこちらの方が安心ではあります。

私がこの教本を作った当初は巷で流行っていた作り方でもありましたし。

 

丸絎けの本来の作り方は芯に「真綿」を入れて作るようですが、現代では「毛糸」を使うことが多いと思います。

しかし、長い芯を布に通すのはそれなりにコツがいります。

そういう意味では、「持ち手芯」はガラと呼ばれる毛糸を網目状のネットでまとめたものなので、ここに布を巻き付けていけばいいだけということもあり、ある意味簡単です(ただし手縫いの面倒さはある)。

 

しかし「やはり毛糸を通したい!」という思いにかられたのは、教室の生徒さんがInstagramに普段着物に丸絎けを合わせていたのを見かけたことからでした。

許可をいただいたので、画像を掲載させていただきます。

 

この細い丸絎けが何とも可愛い♡

丸絎けなのに、結び部分がやたらと小さいのも萌ポイント♡♡♡

 

わざわざ「持ち手芯」を使わなくても、毛糸であれば本数を増減するだけで好きな太さで作ることができます。

そして毛糸をそのまま通した丸絎けは、何と言っても手触りがいいのです。

 

しかし、自分は作れたとしても、一般の人が教本だけを見て、細い布を表に返したり、毛糸をむりむり通していく説明で、果たして無事に作りきれるのかしら?

そんなことを考えるとつい気が遠くなって後回しにしてきたツケが、今一気に押し寄せているということですね(自業自得)。

とにかく今回の改訂版では、何としてでも丸絎けの作り方を載せるしかない(今やらないと、また数年悶々として過ごすことになる)。

そんなワケで、ここ最近は寝ても覚めても丸絎けのことばかり考えるという、丸絎けの沼にハマっていたのでした。

 

最近はYouTubeなどで参考にできるものが多々ありますが、そこに自分なりの工夫を加えた作り方を研究しなければならない。

そしてある程度やり方が決まると、次は太さを決めるためにサンプルを量産するのみ。

遠近感が着いてしまったので、この画像では太さの違いがちょっとわかりずらいですが、5mm単位で布の幅を変えています。

 

う〜ん、どれもこれも捨て難い。

一番細いものは、おしゃれ着にちょうどいいし、、、。

 

ということで、丸絎け対応表も載せることにしました。

婚礼用、振袖用、おしゃれ着用(太)、おしゃれ着用(細)、七歳用に対応していますので、毛糸が余ったら、是非普段用着物の丸絎けも作ってみてください。

毛糸は「並太」を使っていますが、並太といっても、メーカーや種類によってそれぞれ微妙に太さが違うので、この表もあくまで目安です。

(でも全国的に一番手に入りやすそうな、DAISOのアクリル毛糸(並太)を使っています)

 

画像提供をしていただいた#maycatmittanさんのInstagramには、丸ぐけを使ったおしゃれなコーディネートがたくさん紹介されています。(↓こちらはInstagramにリンクしています)

そういえばこんな漫画も紹介してくれていたので、ついでに紹介させていただきます。

 

丸絎けの他にも「懐剣袋」の内容も改訂します。

そこで、かつて教室に通われていたよしみで、実際に花嫁着付けのお仕事をされている #m_kimono_style さんにご意見をお聞きしたところ、実際にお仕事で使われている懐剣や丸絎けのサンプルも持って工房に駆けつけてくれました。(感謝!)

 

それを見ながらサイズ比較をしたのですが、私が作った一番太い丸絎けは「ちょっと太すぎるかな?」と思っていたにもかかわらず、#m_kimono_style さんが持ってこられたサンプルはそれよりも少し太い物でした。

恐るべし花嫁衣装のボリューム感!

我々が知っている着物のボリュームで考えてはいけませんね。

 

「持ち手芯」を使った丸絎けも「全然使えますよ!」ということだったので、教本には毛糸で作る丸絎けの解説を載せて、「持ち手芯」での作り方は、単品の持ち手芯に作り方を同梱することにしました。

 

久々にお会いした#m_kimono_style さんから、婚礼業界の裏事情や、婚礼あるあるなどの面白話が色々聞けて楽しいひと時でした。(今後少しずつ小ネタにさせていただきます)

見渡せば、周りには専門の方がたくさんいて、これを聞くにはこの人、あれを聞くにはあの人と、人材がたくさんいてありがたい環境です。

 

完全ではないにしても、やっと負い目なくお祝い事ができるような世の中が戻ってきて、待ちぼうけされていたお嫁さんたちにとっては本当に喜ばしいことです。

ちなみに、日本の結婚式はジューンブライドが多いと思いきや、結婚式が最も多く行われるのは11月なんだそうですよ。

日本の6月は梅雨だしねぇ。

 

 

 

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2022新作『角箱ひだ巾着』三歳持ち

前回の『角箱ひだ巾着』大人持ちに引き続き、縮小版の「三歳持ち」です。

(「角箱ひだ袋」から11/7に改称)

 

可愛えぇ、、、♡

 

(普段は筥迫の本仕立てでしかミシンを使わないので白糸しかなく、サンプルだしということでそのまま作ってしまいました。生徒さんが作られる場合は、糸の色は合わせていただきます)。

 

三歳持ちなので当たり前ですが、やたらと小さいです。

大きさ比較に手を入れてみましたが、私の手は小さいのでこのサイズ感を十分に表現できない、、、。

 

底の大きさは「7×10.5cm」なので、普通の女性の手の平にすっぽり収まってしまうサイズ感です。

絶対振り回すと思い紐は短めにしましたが、まるでショートケーキ(爆笑)。

 

「式部型小物入」も実際に見ると「こんなに小さかったんですか〜」と驚かれますが、この三歳持ちは式部型より小さいという(汗)。

大人持ちと比べると、このぐらい小さいです。

七歳持ちは、この中間ぐらいの大きさです。

十三歳なら、もう大人持ちで大丈夫です(最近の子は大きいからねぇ)。

 

基本的に帯を締めるのは帯解きの七歳の七五三からなので、三歳は「被布」を着るのが一般的で筥迫は用いません。

しかし、昔は三歳の子でも帯を締めることがありました。

小さい子が大人のような格好をすると、ミニチュアみたいに見えて可愛かったんでしょうね。

地方によって着せるというところもあったかと思います。

 

現代では三歳の筥迫なんてほぼ売っていないと思いますが、昔の筥迫ではよく出てきます。

お人形の筥迫か??と思ってしまうほど小さいです。

大人から見れば、七歳の筥迫を兼用してもいいんじゃないかと思うかもしれませんが、三歳の子に七歳用の筥迫を付けると、襟元が筥迫で占領されるような感じです。

 

やはりそれぞれのサイズに合ったものを付けてあげたいということで、巾着も三歳用サイズを作ったという次第です。

 

三歳持ちの小さな巾着に何が入るのかって、そりゃアメちゃんとかお菓子とかパンパンに入れてあげてください。

きっと喜んで持ってくれると思いますよ(笑)。

 

紐の飾りは「くくり玉」にしています。(円形の布を絞った玉に非ず)

以前からこの玉に憧れていたのですが、いつも上手く出来なくて、諦めてはまた挑戦するの繰り返しでした。

しかし今回はかなり練習したので、綺麗な玉に収まるようになりました。(太い紐に付けるからコツがいるだけなんだけどね)

そして三歳は巾着を振り回すことを想定して「鈴」ちゃん付けています(デレ)。

 

でもこの鈴はただの飾りじゃないんですよ。

鈴を引くと口が開き、くくり玉を引くと口が閉じるという至極単純な仕掛けになっています。

小さな子供には楽しいかなと思い、今回採用してみました。

 

子供用の筥迫びら簪にも、昔のものにはよく「鈴」が付いていました。

飛び跳ねて歩く子供に、鈴がよく似合うと考えたのでしょうか。

筥迫工房ではこの「鈴付き」のびら簪も扱っています。

 

七歳持ちで、鈴はちょっと子供すぎると思う方は「色違いのくくり玉」にしてもいいですね。

いや七五三なら、筥迫とこちらの巾着をお揃いにしたら恐ろしく可愛いだろうなぁ♡♡♡♡♡。

 

オンライン動画は相変わらずちんたらやっているので、これを上げるのは相当後になってしまうと思うので、作りたい方は是非教室へ。

 

 

 

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縢襠筥迫(H.Sさんの作品)と、最近の教室のこと

 

教室に通われている生徒さんが、今日完成させた筥迫です。
なんとも乙女チック♡

 

ただ見ただけではわかりませんが、かなり複雑な「切り付け」で柄を作っています。
金糸を使った装飾と房も染めて、美しい仕上がりになりました。

 

共布を使った玉縁は私のお勧め。

一般的な白や赤のようにアクセントにするための色と違い、共布の玉縁はとてもノーブルな印象を与えます。

 

飾り房のバージョン違いもあり、こちらは少し落ち着いた印象になっています。

 

 

「貼り込みで作る袋物」教室の目指すところ

 

筥迫工房を会場とした「貼り込みで作る袋物」教室も、早2年を迎えました。

 

お針子会(講習会)→つたえ(教室)→筥迫工房(教室)と場を変え、臨時の教室にするはずだった工房で、すでにどっぷりと腰を据えた教室活動が行われています。

 

教室で定期的に通われている生徒さんたちは2〜3年も経つとかなり腕もあげてきていて、それまでには上級の型をほとんど終わらせるのですが、そのままフェードアウトする人もいれば、さらに突っ込んだ学び方をする人もいます。

 

今は帯地などの「厚い布」を使う作り方を学ぶ上級者が多くなりました。

講習会などでは扱うことは考えられないような素材なので、ここまで来たかとちょっと感無量な思いがあります。

 

それにつれ、私も「抱えバッグ」ぐらいまでは網羅しようかなと考えるようになりました。

バッグも考え方は同じですが、扱う素材が違うと芯材も違えば、接着剤も異なります。

これはまた一からの出発になります。

 

たくさんの絵緯糸がある帯地や、かつての丸帯などを袋物に出来たら楽しいだろうなと思う気持ちと、これらを作ることができる職人さんがいなくなってきているので、それを引き継ぎたいという思いがあるからです。

 

現代で作る人がいる物や、誰でも作れる物なら筥迫工房が作る必要はないと思っていますが、かつて職人が作っていた「高度な袋物」の作り方は風前の灯で、これは何としてでも後世に残していきたい。

 

現代は職人が生き残れない世の中なので、一般の心ある人たちに職人技を教えていきたいという、なんとも時代を逆行するようなやり方ですが、そんな物作りが好きな人は潜在的に少なくはないはずです。(だって日本人だもの)

 

今はあまりにもニッチな世界なので、一人でも多くの方にこの素晴らしい世界を知ってほしい。

しかし、私一人がどんなに頑張っていても、それに続く人がいなければこれもまたいつかは淘汰されてしまいます。
 

そんなわけで、我こそは!と思う方がいらっしゃいましたら、是非筥迫工房の教室においでください。

(好きな人には夢のように楽しい世界よ♡)

 

 

講師育成

 

教室の中で、「職人」養成コースに進む人は何人かいますが、「講師」になりたいと言う人がなかなか出てこない。

 

筥迫工房の教室は、全ての型に詳細な「拵え方(マニュアル)」があるので、時間をかければほとんどの方が上級まで進むことはできますが、それはあくまでマニュアルあってのこと。

ですから、全てのカリキュラムをこなせば自動的に講師免許が取れるわけではありません。

 

貼り込みで作る袋物は、型ごとにさまざまな要素が詰まっているので、それを覚えるだけでかなり大変です。

相当作り込んでいないと、人に教えるのは難しい。

それには特別なトレーニングを経て、承認テスト(実技・提出)を経て、講師資格を得る必要があります。

 

世の中で「袋物」といえば、仕覆だったり、レザーだったりはあるにしても、「貼り込みで作る袋物」の教室はやっているところはないので、是非講師を目指す人が出てほしいと思っています。

 

今は東京の工房に通える人が対象ですが、現在、地方で外部講師をされている方もいらっしゃいますので、遠方の方でも講師資格が取れるようなシステムを考えていくことが今後の課題になると考えています。

(もちろん、ある程度は東京にきていただくことになりますが)

 

 

<お知らせ>

2022年7月20(木)より、クリックポストの送料が198円→185円に値下げされます!

このご時世に、値上げはあっても、値下げは珍しい!

 

 

 

今月末は「染めの里おちあい(二葉苑)」で体験講座が行われます!
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『日本文化と懐中袋物』 講演と体験講座
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<体験講座/貼り込みで作る袋物>
❷7月23日(土)『利休型紙入と名刺入』
❸7月30日(土)『懐紙挟みと楊枝入』
 時間: 13:00〜16:00
 参加費 :各5,000円
 定員:各10名
 

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お申し込みは「染の里おちあい(二葉苑)」の予約サイトからどうぞ。

一企画ごとの申し込みとなります。

https://reserva.be/futabayoyaku28

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『四君子』刺繍袋物一式 H.Sさんの作品

教室に通われているH.Sさんの刺繍袋物一揃いです。

 

かなり以前に見せていただいたのですが、今回ブログ&Instagramに掲載させていただきたくて、再度ご持参いただきました。

 

「四君子」とは、

東洋画の題材とされる竹、梅、菊、蘭(らん)の総称で、草木や花のなかでも気品があり高潔であるところがあたかも君子のようであるところから生まれた呼称。

中国で宋(そう)・元(げん)代の文人画家の間で流行し、日本でも盛んに描かれた。

「コトバンク」より

 

もう一つ、あるテーマが隠されているそうですが、見る人が見ればわかる色と形だそうです。

 

 

まずは以下三点のご紹介を。

(上)四ツ襠紙入(懐紙大)

(左下)携帯裁縫用具入

(右下)鏡付油取紙

 

「四ツ襠」はいつもの基本型(鼻紙大)と違い、懐紙が入る大きさなので、実はお札の入るサイズで、カード類も縦に差し込みできる「差し込み」というものが付いています。

 

「鏡付油取紙入」は、油取り紙を引き出しすることのできるものです。

これは筥迫工房のオリジナルの型ですが、段口に耳を差し込めるような作りになっていて、今から見るとけっこう面白い作りになっています。

 

「携帯裁縫用具入」は筥迫工房の人気の型ですが、教室に通う際の針たちを細々と収納できるようになっています。

こういうものは年配の女性に差しあげると喜ばれるのですが、反対に「鏡付油取紙入」は使わない人が多いらしい。

 

子育てが一段落したような女性は「油なんて出ないから使わないわ〜」とのこと(爆笑)。

 

そして以下2点は、

(左)スマホ入れ

(右)名刺入れ付覚書帖

 

 

「スマホ入れ」は、単純な二ツ折を作って透明なケースをつけたもので、こちらはH.Sさんのオリジナルです。

 

「筥迫工房ではなぜスマホ入れを作らないのですか?」とよく聞かれますが、袋物細工は基本的に古い裂を使うことが多いので、経年で弱った布で作ったものをバッグに入れて持ち歩けば、頻繁に出し入れする中でこすれあって角が簡単に擦れてしまいます(多分半年ももたないと思う)。

もうあまりにもかわいそう過ぎて、そんな使い方するものに使えないのよ。

 

スマホ入れなどという究極に実用的なものは、中のものを守る頑丈なプラスチックや合成皮革で守ってあげてくださいな。

(H.Sさんもお飾りとして作ったものとは思いますが、、、)

 

「名刺入付覚書帖」は、昨年にかなり改良した型が出ています。

名刺が入るサイズの小さなものですが、かなり色々な要素が詰まった手間のかかる細工物です。

 

 

このように、袋物細工はその名のごとく小さな型がほとんどです。

そして中に機能を持たせているので、表からはなかなかその良さはわからないものです。

 

ですから、一つではインパクトに欠けるこのような袋物細工をまとめて作ると、「型は違えど全てお揃い」という見応えのある一つの作品になります。

同じ裂地で作ったり、同じテーマの刺繍で作ると可愛さ倍増です。

 

とかく女性というものは、「小さい」「お揃い」で萌えやすい単純な生き物なんです(笑)

 

 

 

高肉刺繍講座

 

H.Sさんは刺繍の職人さんでもあります。

 

「縫い紋」を専門にされていますが、仏具などのこってり肉入れの刺繍もされます。

 

もちろん着物の「あしらい」などもされますが、趣味で刺繍をするような人が使う「刺繍しやすい布」の仕事が来ることはほとんどない!とのことで、そのため職人さんたちは色々な工夫をしなければならないんですね。

 

そんなことから、かつて講習会をしていた「お針子会」を会場にして、H.Sさんを講師に招いて「太鼓張りに高肉刺繍」という講座を開き、かなりマニアックな技法を教えていただきました(昨年2021年10月開催)。

 

コロナ禍で公に人を集めることができなかったので、今更ながらのご報告になりますが、H.Sさんの作品つながりで今回ご報告させていただきます。

 

 

私も袋物の仕事で、刺繍込みの仕立てというものが来ることがあるのですが、まぁ普通の刺繍ではありません(笑)。

昔の筥迫や袋物を復刻するので、今ではないような技法のものばかりです。

 

その中でも困ってしまうのが「高肉」(本来なんというか知らないのですが)の刺繍が入ったものです。

私がこんもり肉が入ったような刺繍して「肉飾女子」を名乗っているのも、このような高肉の刺繍ばかり見ている影響なんですね。

(ちなみに、私は刺繍の仕事をするほど上手くはないので、仕事のものはもっと慣れた人にお願いしています)

 

着物や帯などで「刺繍に肉を入れる」といえば、しつけ糸のような「肉糸」を縫い重ね、その上から刺繍をします。

しかし袋物などで使う肉は、もっとしっかりとした盛り上げ方をするので、刺繍教室などで教えてもらうようなものではないのですね。

 

私が肉盛りの動物や植物を刺繍する時は、柔らかい肉を入れるので、それに刺繍をすることはあまり難しくない。

しかし、エッジをきかせたような肉盛りをするときは、「張子紙」などの厚紙を使います(大きなものはもっと違うものを使ってかもしれません)。

これが難しい。

 

 

本来このような刺繍は専門の職人さんがいて、その技法を代々受け継いできているものかと思いますが、私が以前仕事で見様見真似でやった時はかなりきつい思いをしたので、以降はちょっとお断りしていました。

(出来ないことはないけれども、もっと違う本来のやり方があるはず)

 

今回教えていただいて、やはり使う道具や貼り方、切り方にコツがあるものだなと思いました。

 

これは刺繍に慣れている人だからできるというようなものではなく、H.Sさんが「貼り込みを習っていたのでホント役に立った!」というぐらい、カッターと糊を使う工作の要素が大きい。

 

 

それと以前から知りたかった「太鼓貼り」も習いました。

 

こんな布にどうやって刺繍をするんだ!というようなものがあるのですが、太鼓貼りができればそのような憂いもなくなります。

やり方はなんとなく知ってはいても、実際に自分一人で一から研究するのは難しい。

 

このように、かなりマニアックな講座となりました。

 

もし、こんな技法を教えてもらいたい!という希望者がいらっしゃいましたら、いつか改めて講習会を開いてみたいと思いますので、今のうちから是非ご連絡ください。(今回は1日のみでしたが、実際は2〜3回あった方がわかりやすい)

   ↑

ただし刺繍に慣れている人で、細かいカッター作業が好きな人でないと難しいです〜。

 

 

 

 

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併せ筥迫(あわせはこせこ)

皆様、新年明けましておめでとうございます!

本年もがんばってブログを書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

年明け始めのブログは絶対これを掲載したい!と思っていた、ちょっと毛色の変わった筥迫をご紹介いたします。

 

Instagramには動画をアップしているので、こちらもどうぞ。

 

 

そう、この筥迫は二つに分割できる筥迫なんですね。

その名も「併せ筥迫(あわせはこせこ)」。

 

以前ヤフオクで手に入れて、落札したときはただの筥迫だと思っていたのに、いざ実物を解体してみたところびっくり!

その後も時々見かけるので、ある時期出回った型なのかもしれません。

 

胴締めでまとめてしまえば、どう見ても通常の筥迫にしか見えませんが、胴締めを外すと前部分が「折り襠付の紙入れ」、後ろが「縢り襠の紙入れ」。

なんて面白いことを考える人がいたものだと感心してしまいました。

 

結婚式で使った後は胴締めから外して、それぞれを単体で使うことができるという、何とも実用的な型です。

 

 

実は当初、この筥迫の名称を「二部式筥迫」か「併せ筥迫」にするかで悩んでいたのですが、N.Nさんにご意見を聞いたところ

「二部式筥迫は雅じゃないです!」と言われ、確かに二部式は現代人にはわかりやすい名称かもしれませんが、筥迫工房的には何とも味気なく感じてしまいます。

ということで「併せ筥迫」に決まりました。

 

筥迫工房で提唱している「貼り込みで作る袋物細工」は、「細工系」と「紙入系」に分類しています。

細工系は筥迫類、紙入系は折り掛けのある襠物です。

 

筥迫のように細かく面倒な要素が多い細工系に対して、念珠入れや四ツ襠などの紙入系は理屈を理解しながら作る技術が必要です。

この筥迫はそのどちらもが含まれた型というわけです。

 

 

前部分の折り襠紙入れは念珠入れよりも簡易な型ですし、後ろの縢り襠も通常の筥迫を作っていればできる型です。

それならなぜもっと早く作らなかったのか?と言われれば、それはサンプルとした筥迫の仕立てがあまりにも美しく、ただ作っただけではそれと同じ形にならないと思ったからです。

 

昔の型を研究すればするほど、当時の職人さん達の美意識に感心せずにはいられません。

ただ型紙通り作っていればいいってものじゃないんだよ!

そんなことを言われているような気がします。

 

そんなことから、以前はまだ自分には作れないと思って放置していた型でしたが、ふと今の自分ならこれを作ることができるかもしれない、そんなことを思いながら作った型です。

かなり近い形にはなっていると思います。

現代人が失ってしまった貼り込みの本来の考え方を見つめ直すいい勉強になりました。

 

今回使った布は、教室のM.Hさんからいただいた帯地で作りました。

「先生がどういうものに使うか見てみたい」と言われましたが、こんなものになりましたよ。

この筥迫は玉縁にはできないので、織地には打って付けかもしれません。

 

 

 

今日は10日に成人式を迎える娘の振袖を、明日美容院に持っていかなければならないので急ぎ用意していました。

今まで撮影用の振袖は用意してきましたが、いざ正式に揃えてみると大事ですね。

 

昔のお母さんたちはこれを当たり前のように用意していたかもしれませんが、後始末のことまでを考えるとレンタルを使う人が多いのもうなずけますね。

 

成人式のための日本刺繍の筥迫は、結局母の思い入れが強すぎて、娘に「お友達と盛り上がりたい成人式当日には荷が重すぎる」と言われ(笑)、10日は筥迫を使わないつもりでいましたが、準備をしているとやはり何かないと気持ちが落ち着かない(私の)ということで、そこらへんに飾ってあった筥迫をとりあえず使うことにしました。

 

どこにでも筥迫がある環境でよかったわ〜(すごくレアな状況だけど、笑)。

 

 

 

 

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半襟刺繍の筥迫〜段染めの飾り房〜

久しぶりに刺繍半襟を使って、縢襠筥迫を作りました。

 

 

刺繍半襟のほとんどは左右対称柄ですが、たまに左右が同じ向きの半襟があると、ラッキー!とばかりに柄合わせをしてしまいます。

 

刺繍半襟は筥迫にぴったりのサイズなのですが、そういうことをブログで書くと、教本を見ればどんな刺繍半襟でも筥迫が作れるんだ!と思われてしまうのですが、それはちょっと無理かも、、、。

 

ド派手に刺繍が配置されているものは仕立ては困難です。

刺繍というのは裏にも表と同じ分量の刺繍が回っているわけで、更には紙や糊が入っていたりするので、ものすごく厚い帯地を扱うぐらいの難しさがあるからです。

 

このぐらいの柄行きでもかなりの厚みが出てしまうので、厚みを出さないような仕立て方の工夫というものがあります。

 

そこまでの内容はさすがに教本では説明できないので、このような筥迫を作りたい方は是非教室においでください。

 

 

刺繍半襟のサイズは筥迫にちょうどよいとは言っても、筥迫用に作られているわけではないので、そのまま使うとかなり隙間のある柄行きになってしまうので、刺繍半襟では「切り付け」が必須となります。

 

「切り付け」というのは要はアップリケですが、そこはわからないように付けるやり方というものがあります。

 

 

「房」も同色で段染めしています。

 

今回は「撚り房」を使っていますが、これは「切り房」でも同様に染められます。

 

染料は以前から揃えてあったのですが、なかなか思うようにいかず失敗を繰り返していましたが、最近やっと思うような段染めができるようになりました。

 

 

今回の「緒締め玉」はプラ玉ですが、それなりに格上の筥迫を作るようになると「天然石」を使い出します。

 

天然石は打ち紐が通るように自分で穴を拡張しなければならないので、「モース硬度表」を見ながら石を探すことになります。

緒締め玉は筥迫のアクセサリーのようなものなので、「どの石がいいかしら〜♡」と言いながら探すのがまた楽しい。

 

 

 

以前の「講習会」のように、袋物細工の型を一日で作るという楽しみ方もありますが、定期的に通う現在の「教室」のように、一つの型にじっくり時間をかけて向き合い、あらゆる材料を自分の思い通りに凝りまくるという楽しみ方もあります。

 

現在は講習会がなく教室一本になって、私のマニアック魂により拍車がかかっているため、教室の生徒さんたちもよりマニアックな人たちが集まるようになりました。

 

難しい課題を与えると「ゾクゾクする〜」と嬉しそうな声をあげる人は多い(笑)。

 

そんなマニアックな物作りがお好きな方には、貼り込みの袋物細工は夢のように楽しい世界ではないかと思っています。

 

 

でも物作りはこのぐらいにして、次はオンライン講座の動画取りに励むことにいたします!(間が空いてごめんなさい!)

 

 

 

 

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工芸への道

コロナ禍の中、少人数の教室運営に切り替えて色々なことを考えることが多くなりました。

 

この厳しい状況ながら、たまにでも新しい人たちが増えていることはありがたいことです。

小さい工房で入れる人数も限られているので、今はその程度で十分かなと思っています。

 

コロナ以降に中止になった講習会は、「一日で作り上げる」ことをテーマにしていたので遠方から来られる方にはいいシステムでしたが、型が増えレベル問題に苦慮していたので、このような形態で講習会を続けることは限界だったと思います。

 

奇しくもそれを補うような形で開設した「教室」でしたが、定期開催のため生徒さんたちも無理なく作り込みができることから自然にレベルアップでき、今後どんなに型が増えても問題になることはありません。

 

新しい流れの中で自然に教室を中心とした活動に移行できたことはありがたいことでした。

 

 

物を作ることへの取り組み方

 

新しく講習会や教室に来る方がよく気にされることがあります。

 

「あまり器用ではないのでちょっと心配です。」

 

正直なところ「器用か否か」よりも、「物を作ることへの真摯な取り組みに喜びを感じるか否か」で貼り込みで作る袋物細工に対する適正がわかるのではないかなと思っています。

 

入門講座の「金封袱紗」を受講した後に挫折する人が出てくるのは、以前金封袱紗を受講された方がふと口にされた

 

「これは手芸ではない、、、」

 

に集約されているのではないかと思っています。


 

これまで様々な人を教えてきて思うのは、「器用」な人は教えられなくても自分でピントを合わせられる人、「不器用」といわれる人は単に自分でピントを合わせられないというだけで、時間的な個人差はあるものの教えさえすればほとんどの人はピントを合わせることが出来ます。

 

実際はそのピントさえ合わない人もいるのですが、そのような人はピントが合わないというより、そもそも見ている方向が全く違う(苦笑)。

それも時間をかけて方向さえ変えてあげれば楽しそうにやっているのでそれもまた良し。

 

それでも初めに挫折してしまう人の差は、これが「手芸」ではなく「工芸」につながるものなのだということを入門講座で痛感するからなのではないかと思っています。

 

 

 

工芸への道

 

前回ふと思い立って「本仕立ての筥迫」を作ってから、これを教室の講座に組み込めば「江戸型筥迫」や「定家文庫」に続くと感じました。

 

講習会でも「江戸型筥迫」や「定家文庫」を希望される方は多かったのですが、一日で作るようなものではないと断ってきました。

 

いつも生徒さんたちには言っているのですが、上級までの型が作れたからといってこのようなものが出来るわけではない。

 

これまで私が「江戸型筥迫」や「定家文庫」を作ることで苦労したことは、これらの型を作るために誂えた材料や型紙の調整であって、全て出来上ったノウハウを使って型を作るのは、これまでの物と同じ難度でしかありません。

 

しかしこれらは単純な外見ながら「特別な潜在能力」を持っているような型で、その潜在能力は「特別な装飾」を施すことで何にも変え難い価値を引き出すことが出来るのです。

そしてこの特別な「素材(装飾裂)」を扱うことこそが最も難しいのです。

 

だからこそ出来上がったそれは確実に「工芸」の部類に属する物になるのです。

 

 

他の人が作れない型であればあるほど、それをレベルを下げさえすれば自分が作れると思えば、それを簡単に売ろうとする人が出るのはこの世の常です。

 

そんな適当な作品が世に出してしまえば、これまで美術館や博物館に展示されてきた工芸品(美術品)もが価値を下げてしまうのです。

 

誰もが憧れのため息をつくような物であったのに、誰もががっかりとため息をつくような作品を世に出してはならない。

 

 

すでに作れる人がいなくなった現代で、しっかりと貼り込みの技術に取り組み、真摯に物作りに励んできた人にこれらの作り方を教えることが出来れば、それは何より私の喜びでにもなります。

 

自分の技術に誇りを持って最後の最後に取り組むような型として「江戸型筥迫」や「定家文庫」があってほしいと願っています。

 

 

 

 

筥迫工房の画像をピンタレストにまとめました。

過去にブログに掲載された画像を一覧で見ることができます。

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