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和婚の花嫁 お引きずり!褄取り!おからげ!

 

今回はとてもレアな白無垢のお引きずり姿をトップ画像に使わせていただきます。

教室に通われているEITOMANさんから、お嬢さまの結婚披露宴の際の画像をご提供いただきました(感謝)。

 

昨年末、改訂版の「婚礼用和装小物の作り方」を発売いたしましたが、表紙解説では近代の婚礼で筥迫が使われ始めたきっかけについて書いています。

筥迫を作り始めた頃から筥迫作りと並行して、なぜ筥迫が婚礼衣装に使われるようになったのかをずっと調べ続けていました。

その間『日本文化と懐中袋物』という講演を2度行い、近代における筥迫と婚礼衣装の関係を、時代背景を含めより深く考察した内容でお話させていただきました。

 

その3回目として、今月末に(2023.1.28)板橋区の東板橋図書館(最寄駅:板橋区役所前駅)で同じ内容の講演会があります。

こちらは図書館開催なので無料です。

申込開始は1/13からなので、ご興味のある方は直接東板橋図書館にお申し込みください。

 

 

和婚の花嫁衣装

 

最近、婚礼の花嫁衣装について書くことが多くなりました。

実際の結婚式では、身近な知り合いがお姫様に大変身するという夢のような世界感に浸ってしまうので、衣装の細かいところまでは目が行かないものです。

しかし最近はSNSに見知らぬ花嫁の写真が大量に流れてくるおかげで、冷静な目で見ていると、びっくりするような姿が度々目に止まります。

私にとってそのきっかけとなったのは、ある白無垢の花嫁の衝撃の「おからげ姿」でした。

今まで花嫁姿は山ほど見てきたつもりですが、そのほとんどは本に掲載されているような美しいポーズをとった型物写真(いわゆるスタジオで撮るような写真)ばかりだったので、リアルな花嫁姿をまじまじと見ていたわけではなかったように思います。

 

私自身着物の世界は好きですが、どちらかと言えば「古い日本文化」が好きなのであって、自分自身が着物で着飾ることにはとんと執着がありません。

そんな私が花嫁の着付けにダメ出しをするなんて大変おこがましいこととは思うのですが、どっぷりその世界に浸かっていないからこそ見えることもあると思うので、今回は率直に感じたことを書いてみたいと思います。(ちなみに遥か昔の私の結婚式はウェディングドレス一着のみだったので、お引きずり体験をしたことは一度もありません)

 

 

「お引きずり」「褄取り」「おからげ」

 

和装の花嫁が着用する、白無垢、打ち掛け、引き振袖は、いずれも裾を引きずる独特のスタイルです。

ウェディングドレスでもびっくりするぐらい長いトレーンを引いたものがありますし、古今東西、人生最大の通過儀礼には実用から思いっきりかけ離れた衣装を着てこそハレの日が実感できるのですね。

 

白無垢も打ち掛けも「お引きずり」が本来のスタイルですが、例えレンタル衣装であっても、土足で歩く人と同じフロアで高価な衣装を引きずるなんてことは考えられないので、ポーズを取ることが決められた場所以外、裾は常にたくしあげた状態でいなければなりません。

そのためのスタイルが、いわゆる「褄取り(つまどり)」や「おからげ(または掻取)」といったものなのですが、打ち掛けを着たのに出来合った写真を見たらお引きずりの写真が一枚もなかった!なんて話がネットにありましたっけ。

もし披露宴会場で裾の処理をしてくれる人(介添人、アテンド、着付師)がいないとすれば、せっかくの打ち掛けであってもからげたままにするしかないのでしょうね。

 

「褄取り」や「おからげ」姿の別は、こちらのAiderさんのサイトで詳しく解説されているので以下ご参照ください。

花嫁衣装の着用スタイル(着付け方)をまとめました

 

ということで、今回の画像のように披露宴会場にお引きずり姿で入場することがどんなに珍しいことかがわかっていただけたかと思いますが、これはEITOMANさんがお嬢さんために仕立てた白無垢だからなのです。

和裁をされている方でもなかなか白無垢まで仕立てられるチャンスはないと思いますが、そこに白無垢の余り裂で筥迫と懐剣まで作ってしまうのですから、お見事としか言いようがありません。

EITOMANさんの当時のブログ内容はこちらからどうぞ。

婚礼という名の作品展 〜EITOMANさんの作品〜

 

上記ブログを書いた約3年前はこの画像に目が行かなかったのですが、最近教室で「褄取り」や「おからげ」の話題を頻繁に出すようになったところ、EITOMANさんから「うちの娘は白無垢をお引きずりしたから〜」という話になり、改めて写真を見せていただいたところ、本当に会場でお引きずりで歩いていてびっくりしたという次第です。

どうやら和裁の先生に、自分で仕立てた白無垢なんだからお引きにしてみては?と言われたとか。

それにしてもフキのボリュームの立派なこと!

 

東京の某有名式場で行われたそうですが、白無垢のお引きずり姿に式場中の介添人が見に来ていたとおっしゃっていました(笑)。

 

 

「打ち掛け」と「掻取(かいどり)」は同義で、武家では「打ち掛け」、公家では「掻取」と呼んでいました。

打ち掛けはかなりの重さがあるため、前を合わせて右側で専用のコーリンベルトで止め付けています。

重さがあるのでそうしないと脱げやすいようで。

以前ブログで「大奥のドラマでは打ち掛けを前でちょこんと持って引きずって歩いているのに、なんでこんな巻きつけるような着せ方をするのか」などと書いたような記憶がありますが、よっぽど打ち掛けを着慣れていない限り、そんな持ち方はできないようで、これは私が無知でした。ごめんなさい(汗)。

 

こちらの綿帽子はEITOMANさんのオリジナルだそうです。

 

 

和装の婚礼衣装は重い!

 

ウェディングドレスの重量が3〜4kgとすると、打ち掛けは5〜10kgだそうで、そこにカツラなんぞが加わると+1kgが頭に乗るそうです。

故エリザベス女王が通常付けられていた「大英帝国王冠」が約1kgらしいので、文金高島田のカツラをつける方はどうぞ女王の気分を味わってください(ちなみに戴冠式に使われる「聖エドワード王冠」は2.23kg!)。

ウェディングドレスはトレーンを腕に掛けてしまえばダンスだって踊れますが、和装の花嫁衣装はそんなに軽やかに動けるものではありません。

 

昔ながらの「褄取り(つまどり)」スタイルは、いかにもザ・花嫁!という感じでとても美しいと思うのですが、実際には打ち掛けと掛下を片手だけで持ち続けるので、花嫁はこの重量を耐え忍ばなければなりません。

教室のE・Sさんは当時を思い出して「打ち掛けが重かった思い出しかない」そうです(苦笑)。

 

そんなこともあり、専用の「おからげ紐」というものを使って裾をたくしあげる「おからげ(掻取)」スタイルが最近は主流のようです。

おからげしてしまえば花嫁の手はあの裾の重みから解き放たれ、両手はフリーになります。

しかしそれにより私が目にしてしまったのが衝撃のおからげ姿でした。

 

コーリンベルトを奥まで見えるほど大きく手を広げ、それによりおはしょりをしているのに帯がないという姿に見えてしまうんですが(着付けの途中?)、更に裾をやたらと短くからげた白無垢ということもあり、私にはそれが花嫁衣装というよりは割烹着にしか見えなかったんですね。

せめて手を前にしてくれていれば、それほど違和感は感じなかったとは思うのですが、、、。

 

 

コロナで花嫁は自由になった?

 

花嫁の頭から重いカツラが取り外され、おからげによって褄取りから解き放たれた花嫁たちが、あらゆるポーズでSNS上を賑わせています。

自由に手を広げ、時にジャンプするわ足はあげるわ。

それによって丸見えになったコーリンベルトが、私にはブラの紐が見えているような気持ちになってしまうのです。

それでも少し前まではちらっと見えてしまうぐらいだったのに、今ではコーリンベルトが見えるのは何も恥ずかしいことではないかのように動きのある美しいポーズを取っている。

 

相変わらずコロナは続いているものの、最近はやっと結婚式を挙げるカップルが増えてきました。

しかしこのコロナ禍で大規模な結婚式が避けられるようになった反面、スタジオ写真館やフリーのカメラマンたちは大忙しだったようです。

多くの写真館がレンタル衣装をするようになったとも聞きました。

和装の花嫁を撮ることに関してはプロだった式場のカメラマンに変わり、一般人を対象にしていたカメラマンが花嫁写真に移行したことにより、和装の花嫁は洋装のポーズをするようになったのかもしれません。

花嫁たちの楽しそうな様子を見ると、コーリンベルトが見えてしまうのも、中途半端な割烹着姿に見えてしまうのも、あれはボロが見えているというよりは、コロナを打ち破るような自由というエネルギーが見えていると見なすべきなのか。

 

ジャラジャラとびら簪や飾り房がついた筥迫は大人しくしてこそ胸元に落ち着いていますが、花嫁が動き回っていたら簡単に落っこちゃいますから、筥迫から本来の小物たちが取り外されてしまったのも時代の流れなんでしょう。

筥迫の「巾着」は本来筥迫が落ちないように襟の中深く落とし込むストッパーの役割がありますが、これまで花嫁は七五三のように動き回らないから、巾着は出したければ出していいんじゃないですか?と言っていました。

でも今後は七五三と同じく花嫁にも「絶対巾着は中に入れましょう!」と言わねばならないのかもしれません(愚)。

TikTokでも、すでに打ち掛け姿の花嫁ダンスなどが出ていたりするんでしょうか(見たことないけど)。

 

 

成人式

 

そういえば昨日は成人式でした。

池袋あたりまで出れば、たくさんの振袖姿のお嬢さんたちを見ることはできたかと思いますが、私は地元にしかいなかったので一人の振袖さんに出会っただけでした。

ほぼ金髪の髪を結い上げて、お着物はかなりの古典柄。

きっとママ振りなんだろうなと微笑ましく見ていましたが、一緒に歩いていた彼氏がジーパンにパーカーのラフなジャケットだったので、「正装の彼女をエスコートするならスーツぐらい着てあげなさいよ」とおばさんは思ってしまうのですが、これこそが20歳をやっと過ぎた初々しさなのかと萌えさえ感じてしまうのでした。

 

そして今成人式が終わったばかりだというのに、成人式のために作ります!という方からの筥迫材料の注文が何人か続きました。

どうやら来年の成人式に向けて、お母様方が今から筥迫作りに奮闘されるようです。

いいねぇ。

是非がんばっていただきたいです。

 

 

 

 

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新入荷『婚礼用和装小物の作り方(改訂3版)

『婚礼用和装小物の作り方(改訂3版)』発売いたしました!

今回は「子供用の懐剣」にも対応しております。

前版から2ページ増えて「14ページ(内型紙3枚)」という内容です。

けっこう頑張った内容にしています(笑)。

 

一応2023年版にしているので、先行販売ということで、新規購入の方は割引価格(10%OFF)です。

以前、こちらの教本を購入履歴のある方は、更にお得な30%OFFです。

どちらも2023年3月以降は定価になりますので、この機会にご購入いただければ幸いです。

 

ご注文はこちらからどうぞ! ▶︎婚礼用和装小物の作り方(第3版)

 

PDFデータの販売


実はこの婚礼用和装小物は、以前より部分的に「この内容だけほしい」という方がいらっしゃいました。

確かに筥迫は一冊丸ごと購入しないと作れませんが、婚礼用小物は丸絎けだけほしい、抱え帯だけ作りたい、筥迫に末広房だけ作りたいという場合があります。

そのようなことから、こちらは前版を購入された方で部分的に改訂版欲しいという方のために、PDFデータにて販売させていただきます。

 

改訂内容は以下の通りです。

そして、この項目毎にデータで購入できます。

 

懐剣袋の作り方
前版の「縫い」の作り方から、「貼り込み(糊で貼る)の作り方に変更になっています。
筥迫を作った後なら容易に作ることができ、失敗がありません。
「型芯」(中に入れる厚紙)も新しい形になっています。
型紙3枚付き(貼り合わせて、大人用、子供用1枚ずつ)


丸絎けの作り方
これまでの「持ち手芯」を縢る作り方とは違い、ミシンで縫った後に「毛糸」を通す作り方に変更になりました。
毛糸の方が柔らかく結びやすいと思います。
礼装着物以外でも作れるように、太さの対応表もあります。

 

房紐の取り付け方
撚り房の取り付け方から結びまでを解説しています。

「菊結び(楔形)」は今まで通りですが、取り付け方の最後の紐の始末を少し変更しています。
「鱗結び」は結びをして長さを測ってから、房を取り付けるやり方に変更しているので、確実に長さ調整ができます。

懐剣用「切り房」の作り方のPDFデータはありません。教本をご購入ください。

 

末広房の結び方
これまでは入っていなかった末広の飾り結びの作り方を追加しました。
撚り房、切り房に対応しています。
基本的には筥迫の飾り結びを長くしたものですが、正確なサイズ指定をしています。
中央の菊結びを「蝶々結び」にしたものも多いので、この結びも入れています。
蝶々結びは子供の筥迫にも多く使われます。

 

 

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幸田文『きもの』〜婚礼衣装〜

 

最近入手した写真です。

カードとして撮影されたものなので、実際の結婚式というわけではないと思いますが、衣装としては華族とか豊商レベルのものではないかと思います。

 

初めは「三襲」か?との意見もありましたが、襟の下がり具合からこれは「掻取」ではないかという話になりました。

 

※三襲(みつがさね):白・赤・黒の三枚を重ねて着る花嫁衣装。

※掻取(かいどり):武家で言うところの打掛けは公家では掻取という。

 

そして何より筥迫が江戸型!

びら簪の下り金具も小さく、私が唯一持っている江戸型を1/3ぐらいに縮小した「箱襠型」に組み合わされたびら簪以外で見たことがないので、その希少性から明治期あたりと考えます。

 

 

 

掻取(打掛け)

 

明治維新以降は、上記のような極一部の階級に残るだけで筥迫も掻取も一時姿を消しますが、筥迫は明治後期に復活し、瞬く間に花嫁衣装のアイコンとなっていきます。

しかしこの掻取が筥迫ほどの支持を持って花嫁衣装に復活するのは、筥迫からずっと遅れて戦後の貸衣装が主流となってからです。

 

もちろんその掻取も突然現れたわけではなく、徐々に婚礼衣装に取り入れられるようになったのですが、それがいつ頃からなのか、また何がきっかけなのかずっと疑問に思っていました。

 

その答えとなる背景が幸田文の「きもの」にありました。

和物好きであれば読んでいる人も多いのではないでしょうか。

 

そして私が「細雪」に出てくるとばかり思っていたくだりが、実はこの「きもの」にあることをその時知りました(苦)。

 

それは主人公「るつ子」の姉の婚礼衣装を決めるときの様子です。

 

式にはおかいどりが着たい、というのが姉の希望だった。

そんなものは普通のうちでは着ない。

身分のいい人とか、よほどお金持ちとかは着るが、なみの家では着ようという気さえおきない、特別かけはなれた衣装である。

もし姉がそれを着たとすれば、親類はじめ誰もがびっくりするだろうし、驚いたあとは悪口をいわれるに決まっている。

身のほど知らずの跳ね上がりもの、と。

るつ子も中の姉も、最初にそう聞いた時には、びっくりした。

中の姉などはひええと目をみはって、あとはげらげら笑いだした。

 

その後、姉は父に話を切り出します。

 

「なぜかいどりなんぞ着たいんだね?」

「なぜだなんてー誰だって着たいわ。」

「誰だってというのは誰のことだ?」

「みんなよ。どこの女の子も、おかいどりは着たいのよ。」

 

物語はこの数年後に関東大震災(大正12年)を迎えるという時代です。(ところで「ひええ」ってこの時代も普通に使われていたのね)

 

特別掛け離れた衣装であっても、この時代の女子が掻取(打ち掛け)に憧れていたということは、彼女らの思いが戦後の打ち掛けや懐剣(貸衣装)登場につながったのだということですね。

 

この「特別掛け離れた」というのは、花嫁衣装の歴史を語る上でのキーワードでもあります。

つまりそれこそが「ハレの日(非日常)」にふさわしいということで婚礼衣装に取り入れられるようになったのです。

(比較的新しい伝統です)

 

その掻取、懐剣、筥迫の中で、筥迫がいち早く受け入れられたのは、小さい割に目につきやすく、他の物に比べ価格的にも即取り入れやすかったことは想像に難くないでしょう。

 

 

結局父に反対されて、姉の婚礼衣装は「黒い振袖」と「藤色の色直し」に決まりました。

筥迫場面はほんのちょこっとだけ。

いつの間にか助手が、着るばかりに振袖の用意をしたという。

おばあさんが、その用意があまり手順よくみごとだから、ちょっと見ておいたらどうか、といいに来た。

行ってみた。足袋からはこせこまで、ものがみな縦長にきちんと整理されていた。

 

掻取を親に買わせるため、妹たちも巻き込もうとする姉に反発していたるつ子ですが、最終的に父が選んだ胸に散らした千羽鶴と裾に青々と老松をあしらったその振袖は、自分の時はこのお下がりでいいと思えるほどのものでした。

 

震災で全ての財産を失った後、るつ子の結婚が決まります。

しかし震災直後の姉との諍いから、この振袖は貸さないと言われてしまいます。

 

そのような状況で父は必死にるつ子の婚礼費用をかき集めるのですが、るつ子は父の愛人である「その」に婚礼衣装の相談をします。

限られた費用で誂えたその婚礼衣装がまた見事でした。

 

白一色に装ったるつ子は、雪のようにふんわりと花嫁の座にいた。

かつて上の姉の結婚のとき、姉の頬に紅を刷いて、花嫁に際立った生彩を添えたるつ子は、自分の神前の式の間じゅうは紅をよせつけない白い顔でいた。

きものの白羽二重に勝つ白さだった。

それは母親譲りの雪国の肌理が、おしろいの下で微妙な光沢を放つもののようだった。

こればかりは容色自慢の上の姉といえども、うらやましがる皮膚だった。

 

今時の白無垢なんて、掛下に色柄物を使うなんて当たり前になってきましたけどねぇ(遠い目)。

 

然し、披露になるとるつ子は自分から、紅刷毛をとって頬にもこめかみにも、色を加えた。

角隠しを取り去って、紅い疋田(ひった)の色直しに着換えたるつ子は、引立ってみえた。

疋田を選んだのは、そのの意見である。

疋田は絞りではなく、染めなのだった。

染めはずっと安い。

絞りに及ばないことは遠いが、会場ばえもするし、かわいい。

それにるつ子は父の負担を気にして安価にという注文をつけたからである。

手絞りに摺り箔を置き刺繍を入れたのも疋田、ただの染めへ、裾に青竹の切り嵌めを貼ったのも疋田。

上京してきた新郎側の親戚たちは、雪から金魚かほおずきのように変わった、華やかな花嫁におどろきの声をあげていた。

そこまで凝るんだったら筥迫描写ぐらい入れておくれよと思いましたが、予算ないし筥迫なんて入れなかったんでしょうね。仕方ないか、、、。

 

 

この物語は着物をからめてるつ子の人生が展開していくのですが、震災後に着るものにも事欠いたときにおばあさんが放った言葉が何とも印象的です。

 

一生のうちにはね、覚悟して着る着物というのがある。

たとえば婚礼の着物がそうだ、まともな女なら心にけじめをつけて着る。

 

カッコいい。

 

 

毎日、新型コロナウィルスの話題ばかりで心がめげる毎日です。

人が集まる楽しみもお預けになったこんな時だからこそ、家で心を落ち着けてこんな本を読んでみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

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筥迫工房の教本や自慢の細工物を、皆さん自身で披露できる掲示板です。写真のアップロードが簡単になりました(一回の投稿で6枚掲載可)。丹誠込めて作った筥迫を大勢の人に見てもらいしましょう!

 

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マッサン 〜優子の婚礼〜

現在、父の介護のため、週2回のペースで実家に泊まるという生活をしています。
私はテレビドラマはほとんど見ないのですが、父は朝NHKをつけているので、その流れで朝の連続テレビ小説を見るようになりました。
ちょうど「あまちゃん」の終わり頃から見出したので、「ごちそうさん」「花子とアン」と面白いドラマが続いたせいか、けっこう楽しみにしています。

「ごちそうさん」「花子とアン」は、主人公の子どもの頃からの成長を描いているので、昔ながらの婚礼シーンが出て来ます。
そうなるとやはり気になるのは筥迫の存在。
「ごちそうさん」のめ以子は、サプライズで花嫁チェンジとなったので、どんな筥迫を使っていたかあまり覚えていないのですが、「花子とアン」では赤い金襴の筥迫がきれいだったので、ブログに載せようとテレビ画像を撮影したのですが、その画像がどこかに行ってしまった、、、。
そういえば、蓮子さんの花嫁衣装では筥迫あったかなぁと探していたところ、画像は見つかりませんでしたが、こんなの見つけました。
『葉山蓮子 着物コレクション』
(私はごちそうさんの和枝さんの着物が好きでしたが)

そこで今回の「マッサン」となるのですが、いいシーンがありましたね。
筥迫に興味のある方なら、きっと私と同じ感想をお持ちになったのではないでしょうか。

今回はしっかりと撮影したので(テレビを)、画像を見ながらおさらいしましょう。


小間物屋:こちらです。

赤の筥迫は現代物ですね。
左手前、画像が切れている筥迫は日本刺繍のアンティーク。
何気に置かれている「びら簪」はアンティークを使ったようですが、完品でないにしても、それでも金具が4つ?
もうちょっとマシなものなかったのかな〜。


佳代(母):あ〜これ、いいやないの〜。

小間物屋さんは筥迫を4点持ってきたようですが、お母さん、その赤より隣の刺繍の方がずっと価値がありますって。
↑と、マジでつっこむRom筥。


佳代(母):これもええな〜。ほら!
小間物屋:・・・・(汗)。←Rom筥的解釈

お母さん、それ筥迫用の簪で頭につけるもんじゃないんですよ。
でもさすがに金具が取れている方は選ばなかったようで、お目が高い(笑)。

祖父:ほらほら、佳代じゃない、今日は優子のためじゃ。

しかしお母さん役の夏樹陽子さん、キラッキラキラキラしてますな〜。
脇役なのに誰よりも美しい。
Rom筥的には、お母さん>優子さん>エリーちゃん、の順で目が行ってしまう(笑)。


父 :しかしお義父さん、こないな贅沢を。
祖父:かめへん、かめへん、わしのぎょうじや。


「ぎょうじ」って「行事」?
どういう意味?気になる、、、。


そして婚礼当日。優子さんの晴れ姿。

相武紗季さんもホントきれいな方ですね〜。
この方は、現代服よりも着物姿の方がずっときれいな気がします。


私がイメージする和装の花嫁さんは、びしっとした引き振袖の「黒」、清楚な筥迫の「白」、鮮やかな志古貴の「赤」の三点セット。
これだけでもうすごい特別感があるというか、誰でも美人に見えるというか。

今回は筥迫は赤が使われていますが、スタイリストさん的には、刺繍の筥迫には懐剣がセットでなかったから、赤の筥迫を選ばざるをえなかったのではないかとお察し致します。


日本刺繍のアンティーク筥迫はたくさん出回っているのに、それとお揃いの懐剣入れが出回っていないのはなぜか?
単純なことですが、この時代は懐剣は付けていなかったからだと思います。

和装の花嫁=筥迫というスタイルができたのは明治後期で、その頃に懐剣も復活したと記述にはあるのですが、筥迫に対して懐剣はあまり受け入れられなかったようです。
明治、大正、昭和初期頃の婚礼写真を見ても、一般的には筥迫と末広のみがほとんどです。

たぶん、花嫁衣装で黒振袖&筥迫スタイルが多かったのは東京オリンピック頃までで、それ以降、結婚式場での「打ち掛け」レンタルが始まった頃から懐剣がまたぞろ復活したのではないかと思われます。
「和装の婚礼衣装」の説明には筥迫と懐剣が昔からの風習のように書かれていたりしますが、実際には婚礼で筥迫が一般的になったのは明治時代後期、懐剣は昭和中期頃からと、けっこう最近のことのようです。

時は高度成長期。貸衣装なら「庶民でも打ち掛けが着られる!」という感じで打ち掛けが一気に広まったのかもしれません。
しかし現代の小型版筥迫では打ち掛けの襟がかかるので見えにくい。
それなら昔付けていた懐剣の房を派手にすれば打ち掛けが一層派手になるんじゃない?という感じだったかもしれませんね。

ちなみに、筥迫と懐剣は絶対にお対で着けなければいけないというワケではありません。
筥迫だけで着けてもいいのですが、懐剣だけはありえない。
でも打ち掛けには懐剣があった方が断然見栄えがしますね。

そういう意味においては、筥迫が目立つのは何といっても「振袖」です。
振袖ぐらいのボリューム感なら「筥迫&末広」ぐらいでも充分(末広は刀の代用でもある)。
懐剣入れたら筥迫が目立たん! ←筥迫至上主義のRom筥。
筥迫は立派な装飾物をどーんと、びら簪は長〜い下がりをじゃら〜んと、思う存分主張させてください。
筥迫は「挿し色」じゃない!筥迫が「主役」!←また出た筥迫至上主義(笑)。

それと、後ろ姿でちんまりとまとまった「抱え帯」ではなく、あのまばゆい真紅の「志古貴(しごき)」は是非とも再流行してほしい。
志古貴をつけた後ろ姿は何ともいえない色気がある。

優子さんはどうだったかというと、後ろ姿が見えなかったので確信はありませんが、スタイリストさんが「花嫁衣装=筥迫&懐剣」が当然と思っている人なら、たぶん抱え帯を使っていたのではないかと。
なぜなら、抱え帯は「筥迫セット」にもれなく付いてくる物だから〜(笑)。


そして、優子さんの筥迫に「びら簪」がない〜〜(これは許せん!)

この時代、筥迫のびら簪は銀製だったので、筥迫と同じぐらいの価値がありました。
別売されていた時代もあったようです。

それを考えると、もしかしたら筥迫にびら簪を付けないという選択肢もあったかもしれませんが、「しかしお義父さん、こないな贅沢を」っていうぐらいなんですから、ここはド派手なびら簪をつけて「金かけたで〜」とわかるぐらい、ばっちり見栄を張っていただきたいところです。
もちろんこれはドラマなので、「下がり取れたのばかりでまともなびら簪がないし、見ている人もわからないだろうから外していいか〜」程度のものだったとは思います。

着物や半襟は立派なものを使うくせに、筥迫は適当に着けておけばいいというあいかわらずの扱いで悔しいな〜も〜。
最近の婚礼の小物の説明には、完全に「挿し色として」と説明されるものもあったし(怒)。
いつかスタイリストさんや着付師さんたちが筥迫に一目おくようになるぐらい、一大筥迫文化を築き上げたいものですね!皆さん!


というように、朝ドラを見ながら年老いた父相手に講釈たれていたRom筥でした(笑)。


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『びら簪付筥迫の作り方』改訂版の発行について
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以前よりお知らせしております『びら簪付筥迫の作り方』の改訂版ですが、今年度中発行予定としたため、今買うかそれまで待つかお迷いの方が多いようです。
たぶん出ても12月末ぎりぎりになるか、来年に持ち越すかぐらいの進行状況です。
「成人式」用に筥迫を作りたい方は、現在発行の教本をご購入いただければと思います。


▼筥迫工房のお店

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婚礼用和装小物の作り方 発売開始!

皆さま、お待たせいたしました!
婚礼用和装小物の作り方』の発売を開始いたしました



A4フルカラー/10ページ/型紙1枚/ファイル付
定価:1,200円



【内 容】
●「筥迫」及び「婚礼用和装小物」表布の必要サイズの目安
●懐剣入れ
 1)型芯の作り方
 2)袋の作り方
 3)房紐の作り方
 4)菊結び(楔形)の結び方
 5)房紐の結び方
●抱え帯の作り方
 (表布のはぎ合わせ方付)
●丸ぐけの作り方
●懐剣型紙

こちらの教本は、以下の材料を使うことを前提として解説されています。

【懐剣入れ】
懐剣材料セット<赤><白> 各880円
懐剣材料セット<色材料なし> 各400円

懐剣材料セット<赤>、<白>は、教本に作り方が解説されている「切り房」を作るための材料がセットされています。
<赤>、<白>は、房の色です。
紅白の房を作りたい方は、追加で単品の「懐剣用房糸」(250円)をご注文ください。
紅白金の房を作りたい方は、追加で単品の「懐剣用房糸」(250円)と「アクセント用金糸・銀糸」(140円)をご注文ください。

懐剣材料セット<色材料なし>は、赤、白以外の色材料で切り房を作りたい方、または出来合いの「撚り房」を使いたい方のためのセットです。

・別の色で作る
赤、白以外の懐剣用色材料で現在揃っている色は「ピンク」「菫(すみれ)」「若草」の三色です。
これらの色を選択される場合は、追加で単品の「懐剣用房糸」(250円)、「懐剣用打ち紐」(230円)をご注文ください。
※筥迫用房糸と懐剣用房糸は同じ房糸を使っていますが、
 筥迫房は一袋で4つ分、懐剣房は一袋で2つ分がちょうどできる
 分量になっています。
 必ずそれぞれの房糸を選択してください。

・撚り房を使う
切り房を作る自信がない、、または切り房を作る時間がない、、といった方には、出来合いの「撚り房」をご用意しております。
※こちらはまだ準備中です。

【丸ぐけ】
丸ぐけを作られる方には、ソフトタイプの「丸ぐけ用 持ち手芯」(230円)をご注文ください。

【抱え帯】
抱え帯を作られる方には、「抱え帯用厚手接着芯」(350円)をご注文ください。


以上です。

ショップの方はまだまだ中途半端ですが、色なども現在数を増やしているところです。
筥迫用打ち紐などは、かなり色数を仕入れているのですが(2ページ目もあります)、まだショップに掲載するための写真を撮っていないなどのために「近日発売中」となっています。
房糸もそれぞれの打ち紐に合わせた色を仕入れています。
(撮影とか説明書きにけっこう時間がかかるので、おっくうでなかなか進まないのだ←ショップをしている者がこんなことでいいのか、、、)
まぁいつものことですが、何かショップにないものでも欲しいものがありましたら、とりあえずお問い合わせしてみてください。
もしかしたら、何かあるかもしれません(笑)。

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婚礼用和装小物の作り方 モニター1号さんレポート

 『婚礼用和装小物の作り方』の発売を前に、お二人のモニターさんにレポートをお願いしました。
実際に教本を見て作っていただき、わからないところ、おかしなところなどを指摘していただいたものが教本に反映され、やっと販売になります。

そして先日、その第1号モニターのsonoさんから「できあがりました!」のうれしいご報告と、丁寧なレポートをいただきました。
sonoさんは以前、筥迫を作られて画像を送っていただいた方です。
婚礼用筥迫 〜SONOさんの作品〜
来月10月にお嬢さんの挙式にギリギリ間に合ったようで、私もほっとしました。
もう少し早く教本を仕上げていれば、、、とも思いますが、婚礼用に筥迫を作る方は、けっこう直前に作られる方も多いので、挙式一ヶ月前に作れるものなのか、、ということも気になっていたので、そのへんも一緒にレポートしていただきました。

それでは『婚礼用和装小物の作り方』の販売に先駆け、SONOさんのレポートをご紹介させていただきます。
※教本内容に対するコメントもいただきましたが、直接教本の方に反映いたしましたので、ここでは割愛させていただきます。


今回作成しましたものは、懐剣袋・筥迫房・末広房・丸ぐけ・抱え帯です。
お陰様で婚礼用小物がすべて完成いたしました。
これで、式場で借りるものはカツラと草履だけになりました(笑)



型芯(懐剣入れに入れる厚紙で作る型)
テキストの通りに作っていけば、何の問題もなく作れました。

◆懐剣袋
一番時間がかかったのが裁ち方です。
私は筥迫を作った片割れの刺繍半襟で作りましたので、一枚しかない布ですから失敗できないのでめちゃくちゃ緊張しました。
裏地は抱え帯・丸ぐけと同じ布を使いました。
若干しっかりめの布なので、表地のところから裏地がちらっとのぞく感じになりました。
パイピングしたわけではないのですが、ちょっとそんな感じになり、それはそれで気に入っています。

◆房紐
相当にハードル高いぞと、覚悟を決めて取り掛かりましたが、懇切丁寧に説明が書かれていたので、戸惑うことはなかったです。
一番苦労したのはとじ糸で、房を絞める時にしっかり絞めたつもりでも、最後に結び目を作るとどうしても緩んでしまうことでした。
お相撲さんのまわしを霧を吹きながら締めるとよく締まるという話を思い出し、最初ひと結びしたときに楊枝の先でほんの少し結び目を水で湿らせるようにしたら、緩まずに結べるようになりました。
でも、この手は金糸には効果なかったです。



懐剣袋の房に湯気を当てながら櫛でとかしていたら、本当に小さい女の子の髪の毛をくしけずっているような気分になってきました。
以前Rom筥さんが、房のことで頭がいっぱいで娘さんの顔さえ房に見えてきますと書いておられたのを思い出しました。
さらさらと揺れるようすが本当に愛しい。

◆抱え帯
市販の接着芯には不織布のものと、布のものがあるので、どっちを買うべきか、非常に悩んだあげく、家にあった古い帯芯を使うつもりでおりました。
幸い、接着芯も同梱していただき、それを使わせていただきましたが、もし布の接着芯をつかっていたら、厚手のものでも、もっとふにゃっとした出来上がりになっていたと思います。それから、もし接着芯を接ぐとしたら、布の接ぎ方と同じでいいのかな?と疑問に思いました。
というのは、接着芯はたいていカットされて売られていますので。
縫い方については迷うことはなかったです。
この方式で作れば、もしかしたら半幅帯なんかも自分で作れちゃいますね。

◆丸ぐけ
持ち手芯、ありがとうございました。
ハードタイプであのまま作っていたら大変な事になっていました(汗)。
作り方は特に迷うところはありませんでしたが、端の始末に手こずりました。

◆筥迫房・末広房
三色房に挑戦しましたが、やはりきれいに作るのは難しかったです。
最初に打ち紐を房紐ではさむ時の位置が、ひっくり返した時の出来不出来に響いてくるのを痛感しました。
中心がしっかり合っていないと、二色、三色にするとさらに目立ってしまうのですね。
でも、やっぱり三色房に挑戦してよかったです。
筥迫房についても同様なのですが、ティッシュって二枚重ねになっているので、芯に巻きつけるときは一枚にするのか、二枚重ねのままなのか、ちょっと迷いました。
飾り結び自体はそれほど戸惑わずに作れました。
多少ずれたりしても、後から微調節できるということがわかりました。
完成した時は、末広房、懐剣袋房、筥迫房と全部三色のお揃いの房が、花嫁の胸元でさらさらと揺れる様子を想像してうっとりとしてしまいました。

☆かかった時間  
抱え帯に一日、丸ぐけに一日、懐剣袋に一日、懐剣房・筥迫房・末広房三つで一日でできました。
やればできる!というのが作り終えた感想です。
筥迫を自分で作ろう、と思いつくような人なら、大丈夫だと思います。
多少ハードルが高い方が闘志が湧きます(笑)

☆最後に  
夢中で作ったので、一針一針娘の幸せを祈りながら・・というわけにはいきませんでしたけれど、出来あがった小物たちを並べてみて、感無量です。
母の結婚式に使われた半襟を何とか生かしてみたいと思った事がきっかけで、こちらのブログに辿り着き、こんなものまで自分で作れるんだ!と驚きの連続でした。
婚礼用小物に限らず、大抵のものはお店に売っていますけれど、考えてみたら、市販品もどこかで誰かの手によって作られているのですものね。
自分でやろうとすれば、出来ることは結構あるんじゃないかなと思いました。
金額とか手間に換えられない、ものを大切にする気持ちや、ものに込められた思い出を慈しむ気持ちを改めて思い出させていただきました。
本当に素敵な体験をさせていただきました。
心から御礼を申し上げたいと思います。有難うございました。

sonoさん、写真で見る限りでは、房作りはばっちりです。
こんなにキチンとできるものなんだと、自分で教本を作っておきながら感動しております。

ミシンが使える人であれば『懐剣入れ』は問題なくできることと思います。
必要なのは「厚紙」「接着芯」です。

『房作り』は教本を作る上では一番の難関でしたが、意外とあっさりとクリアしてくださったので、何よりほっとしました。
懐剣用の房糸は筥迫房の糸と同じ物を使っておりますが、分量の指示が難しいので、懐剣房が二つ作れる分量で、ちょうどよい長さにカットされたものを販売しております。
「懐剣房」(250円)
「打ち紐」(230円)も懐剣用の太い打ち紐をご用意しています。

ここでのポイントは「とにかく力一杯締める!」これに尽きます。
そのために必要なのが「丈夫な糸」です。
そこでsonoさんにもオススメしたのが、筥迫の千鳥掛けに使う
「かがり糸」(250円)です。
ここで紙芯を強く締めた後の結び目でゆるんでしまう、、とsonoさんは書かれています。
実は私も糸を強く締める時には、糸を湿らせてから使います。
やはり締まりやすい、ゆるみにくい、ということからです。
書くほどのことではないかと思っていたのですが、早速テキストに付け足しました。
しかし「締めやすい」と言えば絹糸ですね。
手縫い糸ではすぐ切れてしまいます。専用房糸は問題外の弱さです。
化繊の糸は、すべって締めにくい、結びにくいので、ここでは強く締めやすい糸を使うことがストレスを半減させてくれるポイントです。
とじ糸用の「飾り金糸」には湿らせても効果がないとありますが、結び目は爪の先で押さえれば、それほどゆるまずに結ぶことができます。

『抱え帯』で芯をはぎ合わせる、、ということについて。
できれば抱え帯に使う生地も一枚布で作ってほしいところですが、約3mもの長さの物を一枚布で作るのは、生地に無駄が出すぎます。
高価な生地を使う方にとってはかなり痛い出費になるので、とりあえず布のはぎ合わせの方法は解説しておりますが、芯に至っては力のかかるものなので、できればここははぎ合わせなしでお願いしたいところです。
ということで、カットするだけでそのまま使える
『抱え帯用厚手接着芯』(350円)をご用意いたしました。

『丸ぐけ』は、「持ち手芯を買ったけれど堅すぎる!」とsonoさんからSOSを受け、『丸ぐけ用 持ち手芯(ソフトタイプ)』(230円)を送りました。
持ち手芯というのは本来バックの持ち手に使う芯なので、とても堅いハードタイプのものもあるんですね。
丸ぐけを作る時は、必ずソフトタイプをお選びください。

『筥迫房・末広房』では三色房にチャレンジなさいました。
金糸の出方は、何度か作ってみれば理解できると思います。
ぱっきり、きっちり色が分かれている方が確かに仕上りはきれいですが、こんな小さいものですから、誰か気がついてくれるだけでラッキーというようなものです。
それから、筥迫房の中に入れるティッシュは、二枚合わせで一枚とお考えください。

しかし、懐剣房、筥迫房、末広房をまとめて一日で作ってしまうとは、、。
sonoさんは前回の筥迫のときも一日で仕上げてしまったそうです。

筥迫の構造などを理解するのに教本を何回も読んだりしましたが、それでも一日でできました
筥迫や房などは丸ぐけ・抱え帯と違って縫う場所などほとんど無いし、手順さえ理解してしまえばそれほど時間のかかるものではないですね。
むしろ、取り掛かる前の心の準備というか、緊張感というか、そういうことにエネルギーを使いました(笑)。

案ずるより産むが易し、、。
sonoさんはこのような細工物やお裁縫に慣れている方なのかもしれませんが(そういう人が筥迫を作ろうと思うのでしょうが)、道具等の準備を整えて、筥迫の構造を理解して臨めば、けっこうあっさりとできてしまうものなのかもしれません。

これで何とかイメージをしていただいて、もしかしたら自分でも作れるのかもしれない、、と思われる方がいらっしゃいましたら、近日発売予定の教本を買われてチャレンジしていただければ幸いです。
材料も揃っていますが、ショップに完全に反映しきれていないので、9月後半を目指して販売できるように準備を整えております。

また後日、実際の婚礼のお写真も送ってくださると思いますので、楽しみにしていましょう。

祝儀扇 花嫁用 末広(すえひろ)について

末広とは祝儀に用いる扇子のことで、花嫁の衣装や留袖の帯に挿して携帯します。
『婚礼用和装小物の作り方』の発売に伴い、筥迫工房のショップでも販売を始めました。

婚礼用 花嫁 末広(飾房なし)




七五三用 女児 末広(飾房付)



筥迫の作り方を販売した当初は筥迫のことで頭が一杯で、末広は忘れたられた存在でした。
しかし、大人用の型紙を付けた筥迫の作り方を販売したときに、大半の方が婚礼に使う筥迫を作られることを知り、改めて筥迫とセットで使う「懐剣」や「末広」の存在を考えるようになりました。

扇子には大きく分けて、「実用(凉を取る)」「儀式用」「芸能用」の使い方があると思います。
末広は「儀式用」にあたりますが、帯に差すのは「刀の代用」としての役割があるとされています。
武士が帯刀が許されていない場所で刀の代用とした、、、明治の廃刀令で刀を差せなくなった士族達が刀の代用にした、、、などの話を聞いたことがありますが、真偽のほどはわかりません。
Wikipedia「切腹」では、
江戸時代中期には、切腹自体も形式的なものとなり、四方に短刀でなく扇子を置き、その扇子に手をかけようとした瞬間に介錯人が首を落とすという方法が一般的になる(扇腹、扇子腹)。
ということがあったので、時代が経つにつれ、扇子=刀といったイメージに代わっていったのかもしれません。

ちなみに、扇子の骨が鉄でできた「鉄扇」というものがあります。
これは、帯刀が許されていない場所で、実際に武器(もしくは鍛錬用)として用いられたそうです。
常に武器を携帯することに気をつかう時代に生まれなくて本当によかったですね。

ということで、扇子=懐剣とも考えられています。
筥迫作りだけで疲れちゃったわ…という方は、懐剣の代わりに末広を帯に差すシンプルスタイルを目指してください。
とは言いましても、打ち掛けには懐剣が映えますし、やはり華やかですので、余力のある方は是非懐剣入れも作っていただきたいと思います。

私が和装の花嫁衣装を見て、いつも不自然に感じていたことがあります。
それが「房の多さ」です。
襟元に筥迫房(小1個)、その反対側に懐剣房(大2個)と末広房(小2個)、合計5個もの房をワンサカ帯に垂らすのは、見た目にうるさいような、ちょっと不自然な姿に思っていました。
そのように思われる方は、末広は無理に帯に付けなくてもいいのではないでしょうか。
ただ、式の入場の際や撮影のときは、花嫁さんが何も持たないのは格好がつきませんし、やはり手に持つだけでも末広、もしくは最近流行のブーケは必要かもしれません。

帯に末広を差す際は、扇面を表(金側)に向け、若干斜めに差し込みます(懐剣を差すイメージで)。
このとき末広の先が2〜3cmほど見えるぐらいのところまで深く差し込むようにします(刀は一柄分帯から出すように差します)。
これじゃ目立たない!と思われるかもしれませんが、目立つほど末広が出ているのは格好がよくないことなのです。
とにかくこれは「刀なんだ!」と自分に言い聞かせましょう(笑)。
そして末広を使う上で一番注意しなければならないのが、どんなに暑くてもあおいではいけない!ということです。
花嫁が末広であおぐ=花嫁が刀を振り回す、、ぐらいに思っておきましょう(笑)。

また、扇子を自らの前に置き挨拶をするのは、相手との間に境を作って礼を行なう(敬意を示す)ことで、結界を作るという意味でもあるそうです。
そう考えると、晴れの日のご両親への挨拶は、この末広がとても重要に思えますね。(私自身は両親への挨拶を忘れたくちですが、、汗)

花嫁スタイルで懐剣が定番になったのはそれほど昔の話ではなく、武家の花嫁のイメージをあいまいに取り入れている部分も多いのですが、祝儀扇は用途によって格式が細かく定められています。
花嫁が使う末広は決まったものがあります。
婚礼用と書いてあってもほとんどが留袖用ですし、房がついていても白黒以外の色物は成人式用なので、間違ったものを購入しないように気をつけてくださいね。

花嫁さんが用いる末広は、表が金色、裏が銀色で、白無垢の場合は白骨を使いますが、振袖や引き振袖など色の付いた着物には、留袖で使うような黒骨のものも使えます。
留袖用の末広も、扇面は金銀、親骨には黒や白(黒留袖不可)を使い、見た目は花嫁さんの末広と同じようです。
唯一の違いは、花嫁さんの末広には長〜い「飾り房」を付けるのが特徴で、表(金面側)の要に、飾り房を取り付けるための丸カンが付いていることです。



この飾り房は「未婚女性」だけが付けることができます。
この形に飾り房が付いていれば花嫁用ですが、末広を単品で購入する場合は、飾り房がついていない場合が多く(別売り)、こんな小さなカンでしか違いがわかりません。

この飾り房はだら〜んと長いまま下げて使わないでくださいね。
飾り結び(三段)のだいたい二段目ぐらいまでを末広にくるくると巻き上げて持ってください。

筥迫工房のショップで、末広は初めて販売するものなので、とりあえず購入しやすい中国製のものにしました。
日本製と比較していないので、実際どう違うかはわかりませんが、とりあえず閉じて使うものですし、これはこれでよいのではないかと思います(安価な筥迫セットの末広はもっと安っぽい感じ)。
もし末広を購入される方が増えるようであれば、多少高くはなりますが、国産の物や黒色も順次入荷して行こうと思います。

大人用は飾り房がついていませんが、この末広用の飾り房の作り方は、近日発売の『びら簪付筥迫の作り方(改訂3版)』に解説しています。
この改訂のお知らせは、この次にいたしますが、以前、教本をお買い上げいただいた方の中で、この改訂部分がほしいという方にはPDFを用意する予定ですので少々お待ちください。

婚礼用和装小物の作り方 〜懐剣・抱え帯・丸ぐけの作り方〜

あともう少しで『婚礼用和装小物の作り方』ができます。
いや、できる予定です、、、にしておきましょうか。
詳しい内容はまた後日いたしますが、こんなのができます。



『びら簪付き筥迫の作り方』と『婚礼用和装小物の作り方』があれば、な〜んと花嫁さんの5点セットが自分で作れてしまうのです!
懐剣入れの作り方では、この大きな房も自分で作ってしまいますよ〜。
(だからこのところ房の話題が多かった)
なんといっても、この教本の目玉はこの懐剣房なので、はっきり言って筥迫房のようにカンタンじゃありませんよ〜(笑)。
面倒な作業が嫌いな方には向いていません。
でも筥迫を作りたい!と思える人なら大丈夫。
筥迫ほど面倒ではないのでご安心を。

ピンクの懐剣の房は市販の撚り房です。
この教本では、赤い懐剣の切り房の作り方を解説しています。
撚り房は、赤、白、紅白を販売予定なので、房を作るのは自信ないな〜という方は、この市販の撚り房をご購入ください。
ミシン掛けは嫌じゃない(懐剣入れ)、手縫いも嫌じゃない(丸ぐけ、抱え帯)という方であれば、けっこうラクに作れると思います。

この教本作成と共に、和装小物に使う材料も同時に仕入れなければならず、更にはどうしても筥迫の作り方も改訂せざるを得なくなり、二重三重の手間がかかっています。
もう毎日、毎日イスに座って動かない生活なので(手だけ忙しい)、またしても腰が悲鳴をあげております。
でも、なんとか8月末〜9月上旬の発売を目指してがんばっています。

しかし今週は年に一度の家族旅行がやってきます。
8月18日(木)〜20日(土)までは、ショップの方の対応ができませんので、あしからずご了承ください。
少し運動してリフレッシュしてきます(ストレスになったりして、、、)。
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