今回は緒締のお話です。
緒を締めると書いて「おじめ」と読みます。緒締とは、、、
印籠の蓋が開かないようにするためと、二本の紐を1本に纏める役目を持っています。 (蒔絵博物館より)
紐が離れたり、よじれたりと見苦しくならないようまとめておく小さな玉の事で、大きさは大体1〜1.5センチくらいの物です。(根付生活より)
筥迫では、胴締めと落し巾着の紐を締めている小さなビーズのことです。
当初、私はこれが緒締という意識がなく、単に「ビーズ」と呼んでいました。
それが2年ほど前のある日ふと、「これってもしかして緒締?」と気がついたのです。
それまでなぜ気がつかなかったのか自分でも不思議なのですが、印籠や煙草入れに使われる緒締が10mm〜15mmそれ以上のものさえあるのに対し、女持(めもち)である筥迫の緒締は3mm〜8mm、、、そのぐらい小さく目立たないものだったからかもしれません。
これは私が持っているアンティークの筥迫の中で最も古いものと思われますが(古過ぎて紐が切れた、、、)17cm×8cmと大きいので、たぶん江戸時代の筥迫に近い大きさだと思います。
これでさえ、緒締は「8mm(木製)」です。
※この筥迫は、実際には厚みが全くない単純な紙挟みの形態に、胴締めと落し巾着がついています。
この三つの筥迫は昭和頃のものだと思いますが、右の緒締から「6mm」中央が「4mm」左に至ってはなんと「3mm」です
ここまでくると、よくこんな小さなビーズに二本の紐を通したものだと感心してしまいますが、そんな小さなビーズを無理して使う何の意味があるの?とも思ってしまいます。
ちなみに昭和のものとなると、どんなにすばらしい日本刺繍が施されていようと、緒締のほとんどがプラスチック製です。
緒締の多くが球体であるため『緒締玉』と呼ばれることが多いのですが、必ずしも玉でなければいけないというワケではありません。
アンティークの印籠や煙草入れには、根付けに負けず劣らずの精密な細工がされた緒締が付いていたり、色々な形をした緒締もあります。
また珍しい材質を使った物もあり、これだけで立派にコレクターズアイテムなのです。
蒔絵博物館「緒締」「緒締玉図鑑」根付生活「Ojime MAGICAL JEWELS OF JAPAN」-----
265年もの長きに渡り太平の世が続いた江戸時代、上位階級である武士よりも、遥かに裕福な生活をする町人が現れるようになりました。
しかし厳格な身分制度により、徹底的に身につけるものが制限されていた時代です。
また幾度も繰り返された奢侈禁止令により、どんなにお金があっても、町人が贅沢な物を身につけることは許されませんでした。
そのうっぷんをはらすかのように、目立たない所に、できるかぎり小さく、しかし目を凝らせば精密な細工であることがわかるように、おしゃれを競い合いました。
また、「贅沢」の定義に当てはまらなければ良かったので、人が見たこともないような外国からの輸入品は大変人気があり(鎖国とはいえ中国やオランダとは通商がありましたし)、この頃の緒締玉には珍しい材質の物がたくさんあります。
隠れた場所、小さく精密な技術、価値さえも及ばない珍しいものを、贅沢という価値観に置き換える工夫で昇華していたのです。
江戸の人々のおしゃれに対する情熱は、現代とは比べ物にならないものがありました。
この頃の人々のたくましさは、資源の少ない日本が高度成長をとげるエネルギーの源となったかのようです。
小さく精密な物に価値を見いだし、何もないところから情緒を感じるのは、日本人特有の誇るべき感性ですね。
印籠や煙草入れに比べ筥迫の緒締が目立たないのは、筥迫自体が奢侈禁止令も及ばない上流階級の装身具であり、贅の限りを尽くした装飾が施されていたからこそ、緒締などという小さなものに凝らなくてもよかったのかもしれません。
そういう意味では、筥迫の緒締はエネルギーが低い、と言わざるを得ません。
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今回の休業を機に、筥迫工房の材料セットのビーズを、マクラメビーズから丸玉ビーズに切り替えました。
次回の『緒締』(2)では、この丸玉ビーズについて書きたいと思いますが、現在のところ、ショップの方の対応がまだできていません。
次回までには画像を揃えたいと思いますので少々お待ちください。
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