『筥迫工房』のブログ 筥迫の作り方と材料の販売 筥迫!箱迫!箱セコ!ハコセコ!はこせこ! 管理人:Rom筥
 
江戸型筥迫 『開き蓋針山付筥迫』 2013.12
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    仕立て:江戸型筥迫(開き蓋、針山付)、挟み玉縁、平面仕立(製作:Rom筥)
    装 飾:切り付け、金糸貼付け
    表 布:留袖端切れ
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    前回のKUIPO資料館の見学会が終わった後にオフ会を行いました。
    その時に、軽い気持ちで「自分の作品等(筥迫以外でも)を持ち寄りましょう!」とお声を掛けたのですが、さて自分は何を持って行けばいいかと考えたとき、かなり悩んでしまいました。

    筥迫だけは山ほどありますが、いざ人様にお見せできるものはというと数は限られます。
    ワークショップ参加者も多く、その際にも参考用の筥迫をかなり持って行ったのでネタはすでに尽きている、、、。
    そうだ、今回見に行くのは江戸時代に使われていた大型の筥迫で、このタイプは以前、刺繍作家の武部由紀子さんに依頼されて作ったことがあります。
    あの時はかなり試作を繰り返したし、手順書も詳しく残っています。
    よし!久々にこの江戸型筥迫を作ろう、と思い立ちました。

    しかし時はすでに見学会3日前。
    あのとき作った筥迫を思い出しつつ大急ぎで作りました。
    焦って作ったのであまりいい出来とは言えないのですが、今年は色々なことがあって新作筥迫はあまり作れなかったし、今年最後のおなぐさみということで、これをアップさせていただくことにしました。


    素材は留袖です。
    駒取り刺繍が随所にされている留袖でしたが、かなり派手にダメージを受けていたため、タダのような価格で仕入れた材料でした。
    留袖の場合、メイン部分の柄を通常サイズの筥迫(約120×70cm)に使うには大きすぎる場合が多いので、実は柄出しが難しい。
    そんなワケで今まで使えずに眠っていた材料でした。

    武部さんからご依頼を受けた際も、通常の筥迫では「作品」にしづらいので、昔のあの大きいサイズの筥迫(約170×80mm)を作ってほしいと言われました。
    たしかにこのぐらいの大きさがあると表現がしやすいし、何より装飾のし甲斐があります。


    正面の三つ折り部分を開いたところです。
    赤なので、かなりハレーション起こしていて見づらいですが 。


    鏡を立てて見るためには、クルリと180度返して使います。
    内蓋に鏡、被せに段口、そして中央には観音開きの蓋が付きます。


    蓋を開くと、4つの仕切りに左下には更に片開き蓋を付け、その蓋部分は針山になっています。
    そう、この筥迫は裁縫道具を入れるための仕様になっているのです(今考えれば、裁縫道具入れになぜ鏡が必要?)。



    江戸時代の筥迫の内部というのは、美術館などではなかなかお目にかかれません。
    しかし昔の文献によると、

    (前略)之れを被くに矢張紙入と同じく一半は形箱(箱の口は内方に向ふ)の如く作り(中略)一半は縮緬物等にて花形杯の挿込みを数處に縫ひ付け之れに七つ道具といふを挿す
    七つ道具は錐、簪、挟、小刀、楊子、尺、型付なり
    又た箱の中には紅、紅筆、懐中鏡、薬入れなどを蔵す
       引用:『千代田城大奥』(永島今四郎/太田贇雄 編)明治25年発行

    とあるように、けっこう色々な物を内蔵できる仕組みになっているんですね。
    これを直に確認したくて、こっそり見せていただいたことがあります。
    しかし実際には差し込みなどのようなものはなく、上部に口がある箱に、そのまま被せがかかるという単純な構造でした。
    今回の筥迫のように、筥迫自体に鏡がつくというのは、この時代は外出用とされていたとの記述があります。
    実際に大奥で使われた筥迫には、鏡は単体で箱の部分に入れるものでしたので、この単純な形が本来の筥迫なのかもしれません。


    しかしある方から、どこかの美術館でこのように蓋が付いたものを見たことがあると聞いたことがあります。
    私のコレクションにも筥迫型の小さな薬入れ(琴爪入れ?)があり、同じように三つ折れ観音開きになっているものがあります。
    筥迫は特注で作らせたものですし、たぶん中にはこんな複雑な仕様のものもあったのではないかと思い、今回創作してみた次第です。
    後ろには紙挟みが付きます。
    この頃はこのように単純に懐紙を挟んでいました(千鳥掛けよりずっと実用的)。


    背側も切り付けで柄出ししています。
    最近切り付けを多用するようになったので、段々と装飾の幅が広がってきました。

    この大きさになると、打ち紐は八印以上を使います。
    緒締は珊瑚の8mm玉。
    巾着もかなり大きいです。
    結びは通常の二重叶結びにしましたが、昔は一重の大きめの叶結びが使われることが多かったようです。

    ちなみに、びら簪を挿すとこんな感じになります。

    おお〜、びら簪を挿すだけで筥迫がワンランクアップします。
    このびら簪は銀製のアンティークでずっしりとした重さのあるものです。
    今時の軽いびら簪ではこの重厚感は出ません。



    こんな大型の筥迫なんて使い道がないし、作っても飾っておくだけ、、、と思われるかもしれませんが、山部分に紐を通せばこんなクラッチバッグとして使うことができそうです。
    この場合、巾着の紐は胴締めにくっつくぐらいに短くした方がバランス良し。
    それこそ匂い袋として使うといいかもしれませんね。


    今回の筥迫は、当初、中の仕様を化粧道具入れにしようと思っていたのですが、蓋の中にまた蓋があり、、、という秘密めいた構造に負けて裁縫道具入れになってしまいました。
    でもバッグとして使うなら、やはり中は化粧道具入れにした方が実用的ですね。
    紙挟み部分を扇襠にすれば、ハンカチや小さなお財布ぐらいは入りそうです。

    この江戸型は中の仕様に色々と工夫ができるので、小さな引き出しを作りたいだとか、ミニチュアのおままごとセットを入れてみたいだとか、際限なく妄想をかき立てられます。
    来年は、また別の形を作ってみたいと思います。



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    【2013.12.19 Thursday 16:48】 author : Rom筥
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    江戸型筥迫 武部さんの作品 その後
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       先日のブログで「第47回 日本伝統工芸染織展」のご案内をさせていただきましたが、そこで展示されていた刺繍作家 武部由紀子さんの江戸型筥迫が、東京:日本橋三越本店の展示会でめでたくお買い上げいただいたそうです。

      ということで、これから京都、岡山、福岡、の展示会で回る予定でしたが、残念ながらそちらの会場では見ることができません。
      こちらのブログで宣伝した手前、見に行く予定を立てていた方には大変申し訳ありません。
      ただ、けっこうなお値段で出されていたので、それだけの価値を認めてくださる方がいらっしゃったということに、私としてはとてもうれしく思いました(刺繍の価値が大半だとは思いますが)。

      展示会が終わった後に武部さんのブログで江戸型筥迫を公開していただく予定でしたが、それもできないことになり残念です。
      代わりといっては何ですが、近いうちに同じ形の物を作ってこちらにアップしますね。
      私も江戸型筥迫用の刺繍をしていますので、そちらもいつかアップします(つたない刺繍ですが)。
      【2013.05.17 Friday 22:03】 author : Rom筥
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      江戸型筥迫 展示会情報
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        日本刺繍「工房オム」の武部由紀子さんから、筥迫工房でお仕立てをした筥迫の展示のご案内をいただきましたので、ご紹介させていただきます。



        「第47回 日本伝統工芸染織展」に武部さんの作品が展示されるそうです(筥迫は併設の「小品展」にて展示)。

        武部さんは大阪在住の刺繍作家さんで、ご自身でも筥迫を作られてきましたが、今回の展示品には筥迫工房にお仕立ての依頼をいただきました。
        しかし依頼されたのは「江戸型筥迫」でした。
        今まで通常サイズの筥迫のお仕立てはいただいても、まさか江戸型のお仕立てをいただくとは、、、(汗)。


        今回の筥迫は、江戸型筥迫『開き蓋針山付筥迫』です。
        筥迫は立体表現なので、三つ折りの蓋を開けるごとに顔があり、表の「装飾」に対して、中の「仕様」に凝れるのもまた筥迫の楽しみです。
        展示会では装飾メインの展示になるので、筥迫を開いたところをお見せできないのが残念です。
        現代に出回る一般的な筥迫(筥迫工房で装飾筥迫と称しているもの)は「簡易筥迫」と呼ばれる物で、表の装飾に重点が置かれているので、中は実用を排した簡略形です。
        反対に、実用筥迫は中に重点が置かれているので、様々な仕様があり面白いです(胴締めがないものは、同じ形でも紙入れとされる)。
        そしてこの江戸型筥迫は、装飾、仕様とも工夫ができるので、最も作りがいがあります(ただし現代の着物に装着することは不可能)。


        日本刺繍をされている方は、お着物や帯、バッグに刺繍をする事がほとんどなので、小さな筥迫はかなり窮屈なキャンバスに感じられるかもしれません。
        しかし今回の筥迫は江戸型でかなり大きく、装飾のしがいがあります。
        そして、武部さんからいただいた刺繍がすばらしかったので、感化された私は今やたらと刺繍にのめり込んでいます。
        こういう情熱は伝染しますね(笑)。

        「第47回 日本伝統工芸染織展」での筥迫展示は一点だけだと思いますが(たぶん)、お近くにお住まいの方は足を運ばれてはいかがでしょうか。

        5月8日(水)〜5月13日(月) 東京:日本橋三越本店
        5月15日(水)〜5月20日(月) 京都:大丸京都店
        6月5日(水)〜6月10日(月) 岡山:岡山天満屋
        6月19日(水)〜6月24日(月) 福岡:岩田屋本店

        展示会後に武部さんのブログ『ぬう 日本刺繍』で作品を紹介してくださるそうなので、そのときはリンクを貼らせていただきますね。
        これまで武部さんが制作された日本刺繍の筥迫も何点か掲載されています。


        日本中に美しい筥迫をあふれさせたい!という野心を持つ私にとって、このような装飾筥迫を作られる方が増えていくことは本当にうれしいです。
        いつか筥迫愛好者総出で筥迫展をしたい!というのが、私の今の一番の夢です。



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        【2013.05.01 Wednesday 19:16】 author : Rom筥
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        江戸時代の筥迫 その2
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          この箱の中がどのような形状になっているのか、この頃の筥迫を開いた資料がないのでよくわからないのですが、とりあえず、私が集めたアンティーク筥迫の中から、中箱が箱になったものを探し、これを模して作ってみました。
          こんな形だったのでしょうかねぇ。



          こんなものを胸元に入れて生活する人たちって…と思ってしまいますが、江戸時代の女性を描いた絵を見みますと、どれもこれも襟元はかなりゆるゆるズルズルです。
          こんな着こなしなら大きな筥迫を入れることに抵抗がなかったのかもしれませんが、それにしても、この大きさに豪華な装飾を施した筥迫が胸に入っていたら、嫌でも目がいくでしょうねぇ。
          もしかしたら、筥迫が歩いているぐらいの存在感だったかもしれません。
          所有者の財力、権力をアピールするためには、これ以上はないというぐらいの道具だったと想像できます。
          この時代の筥迫を知っていると、時代劇などのピシッとした着付けを、また違った目で見ることができるようになります。

          ちなみに、篤姫(13代将軍徳川家定の正室)の筥迫は、初めから置いて使うものとして作られたそうです。
          大きさで他の大名家の姫君と格の違いを見せつけたんですね(しかし胸に入れられないほどの厚みのものを筥迫って言うんでしょうかねぇ?)。

          では、この厚みの筥迫を現代の人が胸に入れるとどうなるのか?
          いい画像があります。
          中村福助オフィシャルブログ
          どうしたって襟元崩れてしまいます。
          これでも紙入れの部分は薄いし、江戸時代のものより全体的に小ぶりの気がしますが、まぁ本物のあの厚みと大きさじゃ、お芝居に集中できないというものです。

          「江戸の手わざ ーちゃんとした人、ちゃんとした物ー(文化出版局)」という本で、江戸袋物職人の幸岩久男さんが(この方は袋物全般のスペシャリストです)、
          「女形の筥迫も胸がない分、厚みをつけるの。舞台では目立たないとね」とおっしゃっていたのを思い出しました。



          なるほど、それで歌舞伎の筥迫は、江戸時代のものに近い箱形なんですね。
          しかしこれだけ面積があると、装飾のしがいがありますねぇ。
          いつか本格的に装飾を施したものを作ってみたいです。

          世の中が沈みがちながらも、少しずつ平常の生活を取り戻したこの頃ですが、気分的にはなかなか元の精神状態には戻れません。
          作りかけの婚礼用和装小物の作り方(教本)と、十三参り用の筥迫刺繍をやらなければと思いつつ、ため息ばかりでどうしても手が進みませんでした。
          何か気分を変えるきっかけを作らなければ、、、というときに、この中村福助さんのブログを見つけました。
          そして、今まで全く手をつけていなかった、新しい筥迫(元は古いですが)を作りたくなりました。
          あくまで試作ですが、おかげでなんだかちょっと抜けたような気がします。
          【2011.04.15 Friday 11:52】 author : Rom筥
          | 江戸型筥迫 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
          江戸時代の筥迫 その1 〜Rom筥作品11-3〜
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            こんな筥迫を作ってみました。
            いつもと形が違うような、でもなんとなく見たことがあるような…と思われる方も多いかと思いますが、これは江戸時代の筥迫を再現したものです。



            横:約17cm、縦:約8cm、幅:3.5cm。
            これまでの筥迫を見慣れた目には、なんとも存在感ありすぎの大きさです。
            緒締め(ビーズ)がなければ、自立してなお安定感のある厚みです。
            アンティークの大きめのびら簪を挿してみましたが、簪挿しがなくたってそのまま本体に挿し込めちゃいます。

            これが現代の手持ちで使う和装バッグの原型になったわけですが、ちょっと手を添えてみましょう。
            自分で撮影しているのでちょっと変なアングルですが、もう少し大きければ、そのままバッグと言ってもおかしくないような雰囲気です(ちなみに私の手は小さめです)。



            バックの襠の蛇腹にあたるところが完全に箱の形をしているので、これが筥迫が「箱」たる所以でしょうか。



            筥迫は江戸中期から後期頃にかけて最も隆盛を極めました。
            特に江戸での流行は、御殿女中でもお目見え以上、上級の武家女性、庶民であれば豪商などの極限られた婦人しか持てない特上級の装身具として発展しました。
            しかし、江戸城明け渡しと共に大奥が終焉を迎え、同時に江戸勤番の大名や武士たちも国元へ引き揚げてしまったことから、上得意客を失った筥迫は、維新後、急速に姿を消していったものと思われます。
            しかし明治も30年代になると、欧米化を押し進めた社会の反動として元禄文化などにみる復古調ブームが起こり、それまで消え去っていた筥迫が再び大流行をしました。

            筥迫が大きいということは、内箱にも必要なものがしっかり入りますし、充分な紙が収納できるので、かなり実用的だったでしょう。
            その筥迫を小さくするということは、筥迫が少しずつ実用を離れていったことに他なりません。
            今日では、その1cm強ほどの厚みでさえ余分なものとして、花嫁用の筥迫ではびっくりするほど薄いものを見ることがあります。

            その頃の筥迫に関する記述によりますと「維新前のものに比し、五分の一ほどにちぢめた」ものだったそうです。
            こうして現代のものと比べてみると、五分の一は大げさすぎる気がしますが、江戸のものがあまりにも大きかったので、あまりにも小さく見えたのかもしれませんね(それとも、もっと小さかったのだろうか…)。



            長くなりそうなので、続きはまた次回に、、。
            【2011.04.14 Thursday 14:33】 author : Rom筥
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