『筥迫工房』のブログ 筥迫の作り方と材料の販売 筥迫!箱迫!箱セコ!ハコセコ!はこせこ! 管理人:Rom筥
守り巾着第二弾をアップしようと思っていたところ、あまりにも綺麗な画像が届いたので、今回はこちらを優先してご紹介したいと思います。
こちらはご存知の方も多いかと思いますが『秋乃ろーざ』さんです。
ろーざさんが懐中されている筥迫は正真正銘、江戸時代の筥迫なんですよ、すごくない?
それも同じ時代のびら簪付き!
当時のびら簪はこんなに大きく、下りもやたらと長かったんです。
江戸時代の筥迫は美術館などで見る機会はありますが、びら簪はあまり出てきません。
美術館が江戸時代の筥迫に近代サイズのびら簪を合わせているのを見ると、それ違うからやめて!と言いたくなります。
近代のものとは間違えようもないほど、時代の物とはあまりにも大きさが違うからです。
そもそも筥迫がこんなに大きいのですから、びら簪だってそれに比例して大きくなければバランスが取れません。
画像だと筥迫もびら簪もそこまで大きく見えないですけどね。
こちらの画像の方が筥迫の大きさがわかりやすいかな?
写真も美しいですが、ろーざさんのような方が着物を着て、見たこともないような奇妙な装身具を懐中した姿は、ちょっと現実離れした雰囲気があります。(森の中に閉ざされたお姫様みたい!)
当時の筥迫は正装をする際に付ける物だったので、実際はこれにボリュームのある「打掛」を着用していましたが、それがどれだけ威厳に満ちた姿だったか、この画像から想像してみてくださいね。
大奥ではこのような筥迫を身につけることができたのは「お目見得以上」ですが、詳しくはその中の「中臈(ちゅうろう)以上」といわれています。
つまり極限られた上位の人々であって、一目でその位がわかるという出立ちです。
テレビドラマで使われている筥迫なんて、将軍の正室であろうとも薄っぺらな(胴締めさえ付いていない)ただの紙入れを懐中しています。
お目見得以上でそんな紙入れを懐中していたら、一目で「格下」ということがわかります。
私はね、江戸時代の筥迫は相手を威嚇するための道具だと思っているんですよ。
風俗博物館の「箱迫」の解説にも「一種の威儀具のような贅沢品へと紙入を脱皮させた」とあります。
威儀具というのは権力を誇示するために使う道具のことなので、今時の婚礼サイトで説明されているような化粧ポーチなんて生優しいものなんかじゃないってことです。
こんな筥迫を付けて怖い顔をした人が目の前から歩いて来たら、反射的に平伏してしまいそうだと思いませんか?
しかしこのように派手派手しいびら簪は、大奥では「軽薄」といって用いられませんでした。
つまりこのびら簪の出所は、江戸城下の武家屋敷に住んでいた各藩大名家の姫君たちの持ち物ということになります。
大名家とは私ら格が違うの!と示したいがために、篤姫の筥迫は懐中できないほどの大きさにして差別化を図ったようです。
でも実際は羨ましかったんじゃないでしょうかね、だってびら簪がついている筥迫の方がずっと素敵だと思いますもの。
私がこの画像を見て何よりびっくりしたのは、江戸時代に作られたこの大きな筥迫を、現代で実際に懐中しようなどと試みる人がいたということです。
現代で着物好きな人たちは襟元を絶対に崩したくない!という人がほとんどなので、近代の筥迫の厚みでさえ許容されずに筥迫は薄く小さくなるばかりです。
最近はこれが極まり、花嫁さんの筥迫からその象徴ともいうべき胴締め(+巾着)が取り払われ、小さな紙入れが花嫁の胸元に鎮座しているのが現実です。
しかしそんな私でさえ、この4〜5cmもの厚みがある筥迫を現代の着物に懐中しよう(させてみよう)なんて発想すらなかったです。
日本という国で子供の頃から自然に植え付けられた、着物とはこうあるべきという認知バイアスから免れることはできなかったようです(汗)。
多分、母国の違うろーざさんだからこそ、そんなバイアスにとらわれない発想ができたのだなとしみじみ思いました。
もちろん現代の花嫁さんがこんな大きな筥迫を懐中したら、花婿さんは上下(かみしも)ぐらいのスタイルにしないとバランスが取れそうもないので(笑)、せめて近代の本式筥迫を身につけて、胸元を立派に飾ることが美しいという価値観に立ち戻って欲しいです。
それにしても、ろーざさんあっぱれです。
今後も懐中物を身につけた美しい画像をInstagramで拡散していただけると嬉しいです。
秋乃ろーざさんのInstagramはこちら→ @akinoroza
ブログはこちら→ 秋乃ろーざofficial blog
アメリカのマニアックな人たち
ろーざさんとは、数年前に「携帯化粧道具入れ」についてお問い合わせをいただいたことで知り合いになり、このブログでもご紹介させていただきました。
その後もメールで何度かやり取りがあり、いつか直接お会いしてお話ししたいと言われていたまま実現することなく現在に至っていました。
しかし今回ろーざさんがInstagramにこの画像をポストされていたのをきっかけに、急遽工房でお会いする運びとなりました。
そして、Instagramに一緒に写っているアメリカのお友達が来日しているので、「筥迫好き」だから是非連れて行きたいということでご紹介いただいたのがこちらのベッキーさんです。(アメリカ人の筥迫好きってどーゆうこと??)
お二人はアメリカの、日本の着物文化好きな人が集まるSNSのグループで知り合ったそうで、着物の「胴抜き」について議論しあうような、なんでアメリカ人がそんな言葉知っているの?というようなやたらマニアック人々の集まりに属しているようです。
そして、今回の筥迫に付けられた「びら簪」こそベッキーさんのコレクションだったということで、このびら簪を工房にも持ってきてくださいました。(筥迫はろーざさん所有のもの)
私自身、この時代の筥迫びら簪を触ったのは初めてだったのでとても嬉しかったです。
現代のびら簪が下にちょっと映り込んでいいるので何となく対比がおわかりになるかと思いますが、こちらは平打ち部分が約4x5cm、足の部分が約12cm、下りの鎖部分が金具を含めて16cmという大きさです。
対して現代のびら簪は、平打ち部分が直径約3cm、足の部分だけで約7.5cm、下りの鎖部分がびらびら金具を含めて9cmです。
日本人でさえ見る機会のない江戸時代の筥迫びら簪を、なぜにアメリカの方が持っているのか謎すぎますが、これはベッキーさんのご主人からお誕生日にプレゼントされたものなのだそうです。(そんなダンナ様羨ましすぎる)
下りの金具も色が違ったり、形が違ったりが可愛い♡
ベッキーさんと蘇った花嫁衣装のこと
ベッキーさんは、アメリカで入手した日本の古い着物の復元をされている方なのだそうです。
彼女のブログには着物のクリーニングや汚れの除去、金彩と顔料の交換、縫製と修理、という内容が書かれていました。
ろーざさんの通訳を介してだったので間違って理解している部分があるかもしれませんが、彼女が修復したという赤い婚礼衣装のお話を書きたいと思います。
ベッキーさんのご主人は日系3世で、この着物はご主人のお祖母様が日本から持ち込んだ花嫁衣装なのだそうです。
こんなに立派な花嫁衣装を用意されたお祖母様のご両親は、どんな思いで娘をアメリカに送り出したのでしょうね。
時は第二次世界大戦、日系人や日本人移民は強制収容所へ収監されることになり、お祖母様はこの花嫁衣装を手放さざるを得なかったそうです。
ベッキーさんはそのお話を聞いて、何とかその着物を取り戻したいと、年月をかけてご主人の家の「家紋」と「白い鳥」を頼りにこの花嫁衣装を見つけ出しました。
広大なアメリカの中から一枚の婚礼衣装を探し出すとは、気の遠くなるようなお話ですね。(あれ?ebay入手と言っていたかな?)
やっと出会えたお祖母様の花嫁衣装でしたが、年代物なりのダメージがあり、これを一年以上かけて修復されたそうです。
こちらは鳩のシミ取り。
こちらは金彩(銀)の修復のようです。
薄くなった鳩のお目目も書き足したり刺繍を施したりしたそうです。
すでにお祖母様は亡くなられているそうですが、大事な花嫁衣装が無事取り戻され、更には孫嫁によって美しく見事に蘇ったその姿に、天国からどんなに喜んで見ていることでしょうね。
最後はこちらのベッキーさんの着物姿。
刺繍の筥迫に江戸時代の筥迫びら簪を合わせた写真が面白かったので、こちらの画像もお願いしていただきました。
このびら簪の大きさがよくわかるというものです。
さすがに前面部は邪魔だったのか背面部に差し込んでいるようですが、ここには入らないはずなので少し剥がしたのかな?
筥迫を入れた姿を見てアメリカの人には何と言われたのかお聞きしたところ、「そのお財布なに?」だったそうです(笑)。
ベッキーさんのInstagramはこちら→ @soulsatzer0
ブログはこちら→ Silk & Bones
ろーざさん、ベッキーさん、画像を快く使わせていただき、本当にありがとうございました。
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いよいよ、今週5月13日(金)〜15日(日)に、お針子会刺繍教室作品展が行われます。
残念ながらお天気は悪いようですが、実物の江戸型筥迫、定家文庫をまとめて見ることができる貴重な機会です。
こんなコロナ禍ですが、延期延期でやっと開催される作品展なので、是非足をお運びいただければ幸いです。
こちらは、作品展に来られた方にお配りしたいと思います。(二種類2枚ずつ)
もう一枚はこちらです。(懐かしの定家文庫!)
遠方の方は、筥迫工房のネットショップで注文される際に同梱したいと思います。
ショップ注文の場合は1枚ずつですが、「孔雀の定家文庫」か「白梅江戸型筥迫」のどちらが希望かを備考に書いていただければ同梱させていただきます。
私も久々の自作筥迫を作りました。
「肉飾女子」の面目躍如、我が娘の成人式のために作った筥迫なのに、当の本人にはプレッシャーがかかりすぎて敬遠されるという曰く付きの筥迫です(苦笑)。
もうね、筥迫に肉入れ刺繍したらホント最強なんですよ。
もう隅々まで、刺繍も仕立ても凝りまくった一品を見ていただきたいです。
「これぞ定家文庫!」も出ます。
ポストカードにした江戸型筥迫は「白梅」ですが、実はN.Nさんが「紅梅」で江戸型筥迫を作っています。
ちなみに、意図したわけではありません。
KUIPOコレクションの筥迫の写しで刺繍をしていますが、仕立てをよく知っている人だからこその図案の選び方です。
こちらは、ここ毎週行われていた「筥迫研究会」。
定家文庫もN.Nさんの江戸型筥迫もここで作られました。
(中央は本物の江戸時代の筥迫です。これをいつか復元したい)
江戸型筥迫の最難関は、実は仕立てよりも、この「段ぼかし染め」です。
十年来の悩まされ続けてきた(最近の私はこの染めばかりをやっていた)、江戸型の玉縁まで自作できて、完全に現代に蘇った江戸型筥迫です。
教室の人たちも、この筥迫が作りたくて日々精進しています。
どんなに苦労しても作る甲斐がある、素晴らしい日本文化だと思います。
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現在、受付中の講座
定員になり次第、受付終了いたしますので、ご希望の方はお早めにお申し込みください。
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皆様、新年明けましておめでとうございます。
本年も筥迫工房をどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、2021年初めのブログに何かめでたそうな画像はないものかと探したところ、いつもお世話になっているM.Wさんの『江戸型筥迫』を見つけました。
こちらは去年ご依頼をいただいて作ったもので、許可をいただいたのでありがたく掲載させていただきます。
もうなんて可愛い梅柄の江戸型筥迫!めでたさ全開!
『江戸型筥迫』と言っているのは、江戸時代に実際に使われていた筥迫と現代の筥迫では大きさが異なるため、これらを区別するために筥迫工房で便宜的に付けた名称です。
どのぐらい大きさが違うかは下図をご参照ください。
正面からはあまり差がないと思うかもしれませんが、その厚みの違いを知るとびっくりです。
実際は紙挟み部分はもっとたくさんの懐紙を入れていました(あまりにも分厚くなるので筥迫工房版は狭くしている)。
装飾も高肉のこってりした刺繍をしているので、実際に江戸時代に使われていた筥迫に比べればこれでもかなり薄い方と思います。
でも想像してみてください、豪華な打ち掛けにこんなボリュームのある筥迫を懐中していたんですよ。
どんなに立派だったことか!
気位の高い大奥の人たちの自尊心を十分に満たしたことでしょう。
現代の着付師さんにこんな物を渡したら卒倒しちゃうでしょうけどねぇ(笑)。
とにかくその特徴は「全面刺繍」です。
底以外は全て刺繍で埋め尽くしてあります。
江戸時代の筥迫などは、布の地色がわからないぐらい刺繍で埋め尽くされたものが多くあります。
表3面(被せ、胴締め、被せ下)、裏2面(背、胴締め)の合計5面の柄合わせ(なんてマゾ的!)
柄合わせだけでも大変なのに、刺繍をされる方がどんな厚みの布を使うか、どんな厚みの刺繍をされるかわからないので、その厚みだけで簡単に柄はズレてしまいます。
この5面の柄合わせをばっちり揃えるためには、図案の段階で相当のやり取りをする必要があります。
どんなにベテランの刺繍師さんであっても、柄合わせに難が出るような図案にされたり、刺繍の止め位置を正確に守っていただかないと綺麗に仕立てることができません。
そんなことから、現在では初めてのお客様から江戸型筥迫や定家文庫のお仕立てを依頼をいただいた場合は、申し訳ありませんがお断りすることにしています。
初めはもう少し簡単な仕立てをいくつか発注していただき、お互い気心が知れてから難しいお仕立てを請けることにしているので、最近よく登場するM.Wさんともやっと江戸型筥迫のお仕事が請けられるところまでお互い慣れてきたということになります。(実はこれは二個目)
筥迫のお供「簪差し」
こちらは最近江戸型の「お供」として、ご依頼があればお仕立てしているものです。
徳川美術館の図録には「懐中物入れ・簪差し」とあります。
本来は二個で一揃いのもので、こちらは簪差しで、お対の物入れ(どこが「物入れ」かわからないような小さな絵本のような紙挟み様のもの)が付きます。
これらは基本的に、切嵌(きりばめ)、切り付け、などの厚みのない装飾が施されたものなので、これを刺繍で作ろうとすると厚みが出てしまうので、とりあえず単体でお作りすることにしています。
多分このように挟んだと思われます。
筥迫を装着する際は簪は筥迫の天面に差し込むので、この簪差しに簪を収める時は、筥迫から外したときの保管用なのかもしれません。
江戸時代の飾り房はもっと凝った結びをしていますが、今回は現代版と同じものでどうかご容赦を(いつか挑戦します)。
現代版筥迫を展示目的で使うとわかっているときは、筥迫と揃いの「懐剣」を作ることをお勧めしています。
小さい筥迫単体で展示するよりも、揃いの懐剣があるとないとでは作品としてのインパクトはまるで違うからです。
懐剣にボリュームがあるのは房のみで、筥迫の刺繍に比べて刺繍範囲はほんのワンポイントしかありません。
作業的には少しの手間で効果絶大というものです。
それと同じことで、江戸型筥迫にもこんな小道具を付けると展示に絶大な効果があるのではないかと考えています。
まぁ江戸時代の人は展示するなんて考えもしていなかったこととは思いますが、そこは現代人的な見せたい文化ということで(苦笑)。
江戸型筥迫(開き扉)
今回は久々の「開き扉型」をご依頼いただきました。
開き扉の中作りはかなり凝っているため、正直仕立てのお値段は一ツ口よりもかなりお高めです。
刺繍メインのお仕立てで中作りまでお金をかける方は少ないので、久々に開き扉型のお仕立てをすることができました。
基本的に江戸型筥迫の中作りは単純な「一ツ口」です。
しかし高位の女性たちは、思い思いに凝った内容で職人に仕立てさせたと言います。
(奥女中の中にはものすごい仕掛けを自分で作ってしまう人もいたようで、いつの時代もそんな人はいるものですね)
ほとんどは道具を差し込むような作りだったようですが、私ならこんなデザインにしたい!と思って作ったオリジナルの意匠物です。
それでは中を開けていきましょう。
まずは「胴締め」を外します。(あ、向きが逆だ、、、汗)
次に「被せ」を開きます。
被せと被せ下は柄合わせされています。
更に「被せ下」を開いたところで、ここに鏡を付けてみました。
江戸型筥迫の時代は鏡は埋め込みにしませんでした。
なぜなら江戸時代はまだガラス鏡はなく「銅鏡」だったため、鏡は単体で差し込んで使いました。
しかし現代の人は筥迫といえば埋め込み式の鏡を見慣れているため、鏡がないと必ず「鏡を付けて」と言われるます。
現代人の需要に合った江戸型筥迫ということで、このデザインには鏡を付けています。
本来の筥迫は内布に柄物を使いませんが、私は思いっきり柄物を使うことにしています。
それには刺繍の雰囲気を壊さない布選びが大事なので、コレクションしている大量の古裂から刺繍のイメージに合ったものを選び出します。
これは古い錦紗の布を使ったので傷や汚れが多く、それらを除きつつギリギリで使い切ることが出来ました。
ご依頼いただいた方が出来上がった筥迫を初めて開いたときに「うわ〜っ♡」と喜びを感じてもらえるよう、絵本的展開を考えながら作るようにしています。
これは中蓋を両サイドに開くような作りになっています。
今回は次々とお花が開いていくような、そんなイメージにしてみました。
右上のぷっくりした楕円は「針刺し」です。
何で「鏡」と「針刺し」と思うかもしれませんが、女持ちの懐中物はよく針刺しが付いていて、化粧道具も裁縫道具も何でも必要なものを入れたので、そんなイメージで作った型です。
この針刺しの付いた部分もまた蓋になっています。
ここに「糸切りハサミ」や指貫なんぞも揃いで入れると超可愛いです。
江戸型は厚みもありますし、現代では実用にすることはないので、それならば中は好きなだけ凝った作りにして楽しんでみるのもまた良いかなと思います。
私はいつかこの型で「引き出し型」なんかも作ってみたい。
中にはミニチュアのおままごとセットなんか入れてみたいの。
こんな筥迫におままごとセットなんて入っていたら、おばさんだって絶対遊んじゃう!(笑)。
江戸時代に実用として使われていた筥迫ですが、現代の筥迫は完全に形骸化したものとなってしまいました。
それでも懐中できるようには作られていますし、特定の儀式になくてはならない特別なアイコンです。
しかし江戸型筥迫はさすがにこの大きさでは懐中はできません。
これだけ全面的に刺繍が施されていたら、他に代用して使うこともできないでしょう。
それならば「飾り物」と割り切り、表は凝りに凝った装飾、中作りは思いっきり遊んだ作りにして楽しんでみる。
工芸的な遊び道具というのが私が考えるところの現代版江戸型筥迫なのです。
実は昨年秋にお針子会の刺繍教室が行われるはずでした。
それがコロナのため延期となってしまいました。
全国でそのような事態に陥った刺繍教室は多いかと思います。
この筥迫はその作品展に展示するはずだったようです。
今後、これまでのように作品展が行えるのはいつになることでしょうね。
残念なことですが、せっかくの力作筥迫なのでブログで多くの方にこの作品を見ていただくことはM.Wさんの喜びにもなると思います。
M.Wさん、ありがとうございました。
筥迫工房の画像をピンタレストにまとめました。
過去にブログに掲載された画像を一覧で見ることができます。
画像をクリックすると当時の記事にリンクします。
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とあるように、けっこう色々な物を内蔵できる仕組みになっているんですね。(前略)之れを被くに矢張紙入と同じく一半は形箱(箱の口は内方に向ふ)の如く作り(中略)一半は縮緬物等にて花形杯の挿込みを数處に縫ひ付け之れに七つ道具といふを挿す
七つ道具は錐、簪、挟、小刀、楊子、尺、型付なり
又た箱の中には紅、紅筆、懐中鏡、薬入れなどを蔵す
引用:『千代田城大奥』(永島今四郎/太田贇雄 編)明治25年発行