『筥迫工房』のブログ 筥迫の作り方と材料の販売 筥迫!箱迫!箱セコ!ハコセコ!はこせこ! 管理人:Rom筥
今回は今年の講習会の詳細などを出したかったのですが、このところ超多忙で考える暇なし。
すっかり遅くなってごめんなさい、、、
ということで詳細は来週以降になります。
今回は前回のmidoriさんの祝い道具一式に関連づけた内容を書こうと思います。
前回、定家文庫は他の懐中物と揃いの刺繍で作られることが多いと書きましたが、かつてはこせこ掲示板にnoelさんによってアップされていたお道具のことを思い出し、転載させていただくことにいたしました。
とても素敵な揃い道具一式なので、是非多くの方に見ていただきたい。
(前略)〜筥迫は相変わらず好きな小物なので、時々掲示板や筥迫は続くよ...を覗きに行きます。
今回は久しぶりなのですが、物凄く進化していてびっくりしました。
そして、筥迫を作っている方がこんなに沢山いらっしゃるのですね。
私もまた作りたくなりました。
ところで、定家文庫というのですね。
私もひとつ持っているのですが、何と言うのか名称がわからず、花嫁道具みたいだなぁ〜、とお雛様に飾ったりしていました。
可愛いらしい鳳凰の刺繍で、残念ながら鏡はありませんが、紙入れ等、色々と同じ意匠の小物が入っていました。
使途や名称がわかって嬉しいです。〜(後略)
noel [210] 06/25/(木)
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以前、どこぞのアンティークショップにこのような揃い道具があったので繁々と眺めていたのですが、
「買い値に近いぐらい値を下げたのにそれでも買い手がつかない。バラにしてもいいから買わない?」と店主さんに言われました。
このような揃い物がバラになってしまうことほど悲しいことはない。
話は違いますが、以前ヤフオクでお雛様とお内裏様を別々に出品している人がいて、なんとも言えない怒りを覚えたことを思い出しましたよ。
揃ってこそ価値があるものをバラしてしまうなんて(泣)。
まとめて買ってさしあげたいのは山々でしたが、その時の値段でも私には手が出ませんでした。
これが一体どういう目的であるのかわからない人が多いので致し方ないとは思います。
粧具を納めた箱を錦の嚢(ふくろ)に入れて組緒で結び、晴れの時は小婢、長婢が携えて従うことは、京坂で古風を残すひとつである。江戸では従来からこれは用いていない。(日本の美術5「守貞漫稿」定家文庫解説より)
京阪の文化とはいえ、現代の関西地方にお住いの方でもほとんどの方が知らないというのも残念。
私がSAKURAのyayaさんから聞いて初めて定家文庫を知り、私も定家文庫のことをブログによく書くようになったので少しは周知されたと思いますので、せっかくの揃いがバラバラになってしまわないように早く入手してくれる人が現れないかなと願っています。
房を外したところでしょうか。
(本来房は留め付けられているので外れません)
そしてこれが定家文庫とお揃いの一式。
筥迫はないですが、これだけ同じものが揃えられていると圧巻ですね。
テーマを揃えるか、図案で揃えるか
この作品が作られた時代を考えると縮小コピーなんてものはなかったでしょうし、図案をそれぞれの大きさに書き直しているようで、それぞれに少しずつ違うのがまた人間の手を感じて愛おしい。
趣味で日本刺繍をしている私レベルの人間からすると、このように同じ図案を延々と他の型に繰り返して刺繍するというのはかなり辛い。
先日、繍い紋職人のH.Sさんが揃いの道具を作られたということで見せていただきましたが、テーマを揃えた図案だったので、「同じ図案で作るという発想がなかった」とおっしゃっていました。
midoriさんにも始めに揃いの道具をお見せしましたが、刺繍ではない金襴の生地で作った定家文庫だったで「こんな風に揃いにして」とは言いましたが、図案を同じにしてとは言いませんでしたので、ご自分でテーマを揃えて図案を作られたようです。
つまり趣味で作っている人たちには、同じ図案で延々と作るという発想はしにくいのかもしれません。
どちらがいいということではありませんが、たぶんテーマを揃えたものはより作品的になるので「豪華!」という印象を受けるかもしれません。
他方、図案を揃えたものは、全部同じだからこその「かわいい♡」という萌えポイントをくすぐられるかもしれません。
是非、我こそは!と思う方がいらっしゃいましたら、この一揃いにチャレンジしていただき、現代にもこんなすばらしい作品が作れるのだということを実証していただきたいものです。
作品の主導権を握るのはどちらか
このような作品を鑑賞したときに、皆さんは何を思うでしょうか。
「うわ〜すてき〜」というのは共通しているかもしれませんが、その次に思うことは人それぞれだと思います。
「刺繍きれい〜」
「当時いくらぐらいで買ったのか、、、」
「重そうな房!」
「どうやって使うの?」
でしょうか。
私は作る側の人間なので、「職人に発注をした先はどこか?」を考えてしまいます。
定家文庫は房がゴージャスなので、私はつい「定家文庫のメインは房!」と考えてしまうのですが、それはたぶん今回の作品のように大きな撚り房が二つ付いたものをよく見てきたからなのだと思います。
しかし、実際刺繍の図案を当ててみると、撚り房の邪魔なこと、、(苦)。
房のせいで刺繍が見えない。
ということで、私が定家文庫を仕立てる際は一本使いにしています。
つまり定家文庫の刺繍に目がいくような人はこんな房のつけ方はしないので、これを作らせた人はこの房がドーンと目立った「ザ・定家文庫」的なスタイルを売ろうというのが第一にある。
つまり袋物商か有名百貨店かが企画製作したもので、たぶん同じ図案のものがいくつか販売されていたはずです。
かたやKUIPOの定家文庫は房が一つで刺繍や仕立てに目がいくような作り方なので、いかにも趣味人が特注で作らせた袋物という感じです。
図案もこのためだけに描かれたオリジナルでしょう。
企画製作したものであれば、ある程度は数を売ることを目的としているはずですが、完全な既製品というよりは別注品、つまりイージーオーダーのようなもので、例えばこの年の図案はこの桐に鳳凰にして、中に組み合わせるものは好きに選べるぐらいのものだったのではないでしょうか。
古い筥迫などは桐箱の内側に百貨店シールが貼ってあるものを多く見かけます。
しかし定家文庫では百貨店シールが貼ってあるものを見かけたことがないので(それほど数は出てこないこともある)、もしかしたら定家文庫などは嚢物商しか扱わなかったかもしれません。
この定家文庫ぐらいであれば、たぶん大正か昭和初期ぐらいに作られたものではないかと思いますし、実際に関西地方ならお祖母様から引き継がれたなんて方もいらっしゃるのではないかと思います。
そんな方がいらっしゃいましたら、是非エピソードなどお聞かせいただければと思います。
しかしながらすばらしいコレクションで目の保養です。
noelさん掲示板へのアップありがとうございました
筥迫工房の掲示板は、ご自分でおつくりになった作品以外にも、noelさんのようにご自慢の一品などを自由に掲載していただけますので、すてきなアンティークの袋物をお持ちの方は是非お披露目してください。
いいものがありましたら、今回のようにこちらからスカウトにも参ります。
SAKURAのyayaさんからコメントをいただきましたので追記いたします。
yayaさんは日本の古くからの細工物に大変お詳しい方です。
定家文庫は八代の美術館には有りますのに徳川美術館にはないのですよね。
以前問い合わせて不思議に思いました。
定家文庫は江戸の武士文化ではなく京の公家文化なのでしょう。時代祭りには和宮様の侍女が捧げていますよね。
結は公家の中で生まれましたからあの結びや房がよくそれを物語っているのでしょう。(yaya)
何だかわからないものを入手した時は「yayaさんに聞け!」が私のお決まりです(笑)。
yayaさん、ありがとうございました!(Rom筥)
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新年明けましておめでとうございます。
2017年も筥迫工房をよろしくお願い申し上げます。
さて、新年のブログは何にしよう、、、と迷っていたところ思い出しました、ちょうどよい作品を!
それがこれ
midoriさんの「新春祝い道具一式」です。 まぁすごい
本来は同じ図案でお揃いにするものなのですが、midoriさんの性格上それは無理(笑)。
それでも同じ生地、おめでたい図案で揃えているので、ちゃんとした揃いには見える。
ということで、婚礼道具一式ではなく新春祝い道具一式としてみました。
前回のお針子会の作品展に出品する作品を皆が必死に作っていた頃、お嬢さんの成人式の振袖が終わって一時抜け殻になってはいたmidoriさんが回復し、エネルギーを持て余しているという情報を得たRom筥は、時は来た!とばかりに骨董の婚礼道具一式をmidoriさんの目の前に置き「midoriちゃん、こういうの好きじゃない?」と悪魔のささやきをしたのでありました(笑)。
みごとに釣り針にひっかかってくれたmidoriさんは、私の予想を遥かに超えたペースであっという間にこれらの作品を刺繍してしまったのでした。
恐るべしマグロ人間!
私レベルでは一つの作品ができるかどうかぐらいの期間で「鯉と紅葉」の定家文庫も同時進行してしまうのですから、このエネルギーを有効に使わない手はない。
本来、定家文庫、筥迫、紙挟み、小物入れ、櫛入れなどを、お揃いの図案で一揃いにするものなのですが、この数だけお揃いで作るのは相当の労力がいります。
(定家文庫でも無理と思ってしまう私には気の遠くなる作業)
本当はここに筥迫を入れられればよかったのですが、柄合わせのあるものは打ち合わせが必須で、走り出したら止まらないmidoriさんに途中でその手を止めて打ち合わせのやり取りをするなんて芸当はできるはずもなく、結局、放置しても問題のない柄合わせなしの型で組み合わせることにしました。
本来、1点ずつご紹介すべきものなのですが、これはやはり一揃いが萌えポイントなので、年明けの出血大サービスで一気にご紹介してしまいます。
(画像の色かぶりを補正する技術がなく残念な画像となってしまいました。本物はもっときれいな色です。あしからず。)
定家文庫
問い:この定家文庫、最も残念なところは何でしょう?
答え:房がない!
いえ、忘れたわけじゃないのですよ、房が入ったらとにかく刺繍が見えない!
この図案で中心が隠れてしまったら絵にならない!ということで、泣く泣く房を付けなかったのです。
私からすれば、定家文庫は房がメイン。
この形を考慮した上で刺繍の図案を考えるものなのですが、そこはエネルギーが有り余っているmidoriさんのこと。
下図の打ち合わせを待っている私の元に、ある日突然出来上がった刺繍裂が届いたのでした、、、(涙)。
図案が入りきらなくて側面にはみ出しちゃった!と言わんばかりの迫力の柄合わせ(爆笑)。
そして角にもばっちり刺繍、、、(職人泣かせ)。
それでも溢れんばかりのめでたさを表現できていることは否めない。
定家文庫は三面柄合わせ(前と側面)が基本なのですが、midoriさんには一面だけ空けておくなんて許されないことなのでしょう。
背面にも獅子舞がどーんといましたよ。
折り部分に獅子の顔がかかっているので、意外な表情になって面白い効果を出しています。
実はこの獅子、アタリの印つけからすると背面の中心にいたのですが、これじゃ完全に獅子舞の顔の中心に金具がつく羽目に、、、。
しかたないので横にずらしました(なのでちょっと中途半端な配置です)。
ちょうどこの画像を広げてブログを書いていた時、横から家人が「うわぁ、綺麗だねぇ」と一言。
常に既存の嚢物に囲まれている環境のせいで、つい定家文庫はこういう物!という概念から抜け出せなくなっているのは私だけであって、房がなくたって一つの作品として見ればエネルギー溢れる素晴らしい飾り箱なのです。
膨大なエネルギーに満ち溢れ、それを何の縛りもなく刺繍という表現にぶつけてくるmidoriさんの作品を見ていると、もっと素直に作品を見なければという気持ちに気づかされます。
紙挟み
お次は紙挟みです。
懐紙を挟むだけの単純な型です。
こういうものはあっさりとした刺繍がよく似合います。
こちらは「留め具」の位置に苦労した作品です。
(一応、下図用の雛形には留め具の位置は書いてあるんですけどねぇ)
現代では、側面を千鳥掛けにしている紙入れが一般的ですが、私はあの千鳥掛けの紙入れは懐紙を出し入れするときに縢りにひっかかりそうで使いにくそうな気がしてイマイチ作る気になれないのです。
こちらはただ挟むだけなので使いやすいこと、また留め具を使っているのもデザイン的にもそそられてしまいます。
留め具は「両笹」を使っています。
現代でも笹爪の「片笹」タイプは安価なプラスチックのものが製造されていますが、この両笹を使いたいとなると象牙屋さんに行くしかありません。
象牙は小さな爪一個でさえ2,000円程度しますが、これとは別にボン(牛骨)もあります(多少お安いぐらい)。
だから現代ではこの型があまり作られないのかもしれません。
象牙というと初めはお高くて手が出ないと思われるかもしれませんが、それは適当な生地に合わせようとするから高いと感じてしまうのです。
それなりに手をかけて刺繍したものや貴重な裂を使うと、そのぐらいの値段はかけても高いと思えないもの。
昔の人はこういうものを大事に使いました。
簡単に捨てられるようなものは作りませんでしたし、だからこそ簡単には捨てられない。
消費時代に生きる我々は何でも安価に安易にモノが手に入ります。
安く適当なモノが氾濫しているので、簡単に捨てることができる。
このような小さな部品一つに、モノ作りの価値を見直してみるのもいい機会になるのではないでしょうか。
雅型小物入れ(楕円型)
「雅型小物入」という名称は、本来もう一つ違う型につけたいのですが、その型が出るのはまだ先のことなので、とりあえず「楕円型」として区別しておきます。
これはどちらかというと仕覆の世界で作られるものなのかもしれません。
私が入手した婚礼道具一式の中にこの型があったので、ちょっと興味本位で作ってみました。
私が作る小物入れには、もう一つ「式部型」というのもあります。
この式部型は定家文庫をそのまま小さくしたものです。
もう一つの雅型(箱型)はKUIPOの資料館にある定家文庫の小型版です。
定家文庫の雅型は一回作ったことはあるのですが、その小物入れもまたいつか作ってみたい型です。
雅型は見た目にかわいいのですが、完全に開かないので(上に長く開く程度)入れるモノが限られます。
その点、式部型は上下左右に開くので、最近は小物入れを作るとなるとほぼ式部型しか作らなくなりました。
その式部型小物入れは、今年の講習会で企画されています。
式部型の画像もそのうち公開したいと思います。
携帯裁縫用具入れ
揃い物で数があったため、中を開いて撮影したものがこれぐらいしかなく残念。
こちらのかわいい生地は、小物入れと一緒に使われています。
なぜ梅の背面に亀なのか謎が深まる図案ですが、この亀さん実は定家文庫にもいます。
ここでなぜ亀?と思ってしまいますが、そこはmidoriクオリティーでめでたいモノを入れまくりたかったのでしょう(笑)。
お針子会刺繍教室作品展
さて、今年は11月にお針子会刺繍教室の作品展が行われます。
筥迫工房の11月の講習会が終わった後ぐらいになるのではないかと思われますが、日程が確定したらブログでお知らせいたします。
最近は私も仕立てに忙しくて自分の作品をなかなか作れない。
月2だったお教室も今は月1でしか行けていないので、去年はなんと小さな「櫛入れ」に1年かけてしまった、、、(苦)。
細かい細かい刺繍です。
できればあと3点ぐらいは作って出品したいと思っています。
一応考えているのは、あしらい刺繍の式部型小物入れと、江戸型2点。
あるところから江戸時代の古い筥迫をお借りしているのですが、これがまたかなりのジャンク品なのですが、もし完品なら美術館ものというすばらしい高肉の刺繍がされています。
これをどうにか現代に復元したいというのが私の夢。
できるかどうかはわかりませんが、作品展に向けて着手したいと思っています。
ちなみに、まぐろなmidoriさんが現在何に刺繍しているかと言いますと、なんと「風呂敷」(爆笑)。
それもワンポイント刺繍とかではなく、かなりこってりと若冲の虎を図案にしているとかで、「これど〜やって展示するのよ、、、」と先生が頭を抱えています。
風呂敷なんて額にもできないし、普通に結んで展示したらせっかくの虎が見えないですからねぇ(私はまだ見ていない)。
「Rom筥さん、何かいい案はない?」(矢部先生)
風呂敷を嚢物に変える一ついい案があるのですが、それをmidoriさんが受け入れるかどうかが問題(一応風呂敷には見える)。
日本刺繍をしているにも関わらず、着物文化にほとんど興味を示さないのがmidoriさんの面白いところですが、だからこそのその飛び抜けた発想があるのだと思います。
刺繍教室一同、2017年もmidoriさんの動向から目を離せそうもありません(笑)。
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筥迫工房の教本や自慢の細工物を、皆さん自身で披露できる掲示板です。写真のアップロードが簡単になりました(一回の投稿で6枚掲載可)。丹誠込めて作った筥迫を大勢の人に見てもらいしましょう!
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定家袋は、武家女性や富裕な女性が化粧道具その他の小物を入れて、お供の女性に持たせた手提げ袋。
厚紙で作った箱型の芯をこの作品のようにビロードその他の生地で包み、室内では専用の台にのせるが、この台も本体の共裂で仕立てることが多い。(「日本の美術5」P.7引用)
定家袋は「定家筥」「定家文庫」ともいい、武家女性や富裕な女性が化粧道具その他の小物を入れて、お供の女性に持たせた手提げ袋で、直接身に付けるものではないが、筥迫とやや類似した性格をもつものとして紹介しておく。
厚紙で作った箱型の芯を織物の生地や刺繍を施した生地などで包み、房付きの紐飾りを付けたものが一般的である。
室内に置いておく場合には専用の台にのせるが、この台も定家袋の本体同様、刺繍などで美しく飾られることが多く、しかも本体の共裂を用いることが少なくない。(「日本の美術5」P.36引用)
桐製の箱物仕立てで、『類聚名物考』にも起源はあまりはっきりしないが名称は掲載されている。
『守貞漫稿』に類似した箱を持つ図があり、そうふくろ(粧袋、総嚢か)とある。
主人の妻娘の粧具を納めた箱を錦の嚢に入れて組緒で結び、晴れの時は、小婢、長婢が携えて従うことは、京坂で古風を残すひとつである。
江戸では従来これは用いていないと記される。
手元に残っているものから判断すると、携帯用の化粧道具一式を納めたものといえる。内容品は、蓋の部分に金属製鏡が入り、立てかけて使用できるようになった もの、共布製の楊子入れ、針山つき針入れ、紅板と金属鏡が納められた紙入れ、そのほか、紅、紅筆、白粉、刷毛入れ、紅入れ、金属製紅板、薬入れ、歯ブラ シ、白粉刷毛、櫛類そのほか化粧容器を納めたものなどがある。実際の使い方ははっきりしない。
大正期に、婚礼用の袋物として用いたという話しもあるが、実用としてどこでも使用可能な状態である。(「日本の美術5」P.96引用)
寄せひだの美、組紐の美に見とれながらひもをとけば、口の部分が朝顔の花のように開く。
箱物仕立ては難しいとされ、熟練した袋物師の手にかかった。(中略)婚礼用で、嫁入りのときに、女の道具、十三そろいを入れたという。この種の形と作りのものは、“定家文庫”といわれて、後世に伝わる。(季刊「銀花」第21号引用)
高貴な女性が化粧用具や鏡、身の回り細かな品々を収めて携帯した筥である。
お付きの伽(とぎ)の少女が両手で支え上げて持って運ぶが、道中落さないように筥の裏に手を差し込む帯が付けてある。
天鵞絨や羅紗の貴重な裂に刺繍で飾る。(田村コレクション「女の装い三百年」P.146より引用)