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揃い道具一式 〜noelさん所蔵品〜

今回は今年の講習会の詳細などを出したかったのですが、このところ超多忙で考える暇なし。

すっかり遅くなってごめんなさい、、、沈

ということで詳細は来週以降になります。

 

今回は前回のmidoriさんの祝い道具一式に関連づけた内容を書こうと思います。

 

前回、定家文庫は他の懐中物と揃いの刺繍で作られることが多いと書きましたが、かつてはこせこ掲示板noelさんによってアップされていたお道具のことを思い出し、転載させていただくことにいたしました。

 

とても素敵な揃い道具一式なので、是非多くの方に見ていただきたい。

 

(前略)〜筥迫は相変わらず好きな小物なので、時々掲示板や筥迫は続くよ...を覗きに行きます。

今回は久しぶりなのですが、物凄く進化していてびっくりしました。

そして、筥迫を作っている方がこんなに沢山いらっしゃるのですね。

私もまた作りたくなりました。

ところで、定家文庫というのですね。

私もひとつ持っているのですが、何と言うのか名称がわからず、花嫁道具みたいだなぁ〜、とお雛様に飾ったりしていました。

可愛いらしい鳳凰の刺繍で、残念ながら鏡はありませんが、紙入れ等、色々と同じ意匠の小物が入っていました。

使途や名称がわかって嬉しいです。〜(後略)

noel [210] 06/25/(木)

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以前、どこぞのアンティークショップにこのような揃い道具があったので繁々と眺めていたのですが、

「買い値に近いぐらい値を下げたのにそれでも買い手がつかない。バラにしてもいいから買わない?」と店主さんに言われました。

 

このような揃い物がバラになってしまうことほど悲しいことはない。

話は違いますが、以前ヤフオクでお雛様とお内裏様を別々に出品している人がいて、なんとも言えない怒りを覚えたことを思い出しましたよ。

 

揃ってこそ価値があるものをバラしてしまうなんて(泣)。

まとめて買ってさしあげたいのは山々でしたが、その時の値段でも私には手が出ませんでした。

 

これが一体どういう目的であるのかわからない人が多いので致し方ないとは思います。

粧具を納めた箱を錦の嚢(ふくろ)に入れて組緒で結び、晴れの時は小婢、長婢が携えて従うことは、京坂で古風を残すひとつである。江戸では従来からこれは用いていない。(日本の美術5「守貞漫稿」定家文庫解説より)

京阪の文化とはいえ、現代の関西地方にお住いの方でもほとんどの方が知らないというのも残念。

 

私がSAKURAのyayaさんから聞いて初めて定家文庫を知り、私も定家文庫のことをブログによく書くようになったので少しは周知されたと思いますので、せっかくの揃いがバラバラになってしまわないように早く入手してくれる人が現れないかなと願っています。

 

房を外したところでしょうか。

(本来房は留め付けられているので外れません)

 

そしてこれが定家文庫とお揃いの一式。

筥迫はないですが、これだけ同じものが揃えられていると圧巻ですね。

 

 

テーマを揃えるか、図案で揃えるか

 

この作品が作られた時代を考えると縮小コピーなんてものはなかったでしょうし、図案をそれぞれの大きさに書き直しているようで、それぞれに少しずつ違うのがまた人間の手を感じて愛おしい。

 

趣味で日本刺繍をしている私レベルの人間からすると、このように同じ図案を延々と他の型に繰り返して刺繍するというのはかなり辛い。

 

先日、繍い紋職人のH.Sさんが揃いの道具を作られたということで見せていただきましたが、テーマを揃えた図案だったので、「同じ図案で作るという発想がなかった」とおっしゃっていました。

 

midoriさんにも始めに揃いの道具をお見せしましたが、刺繍ではない金襴の生地で作った定家文庫だったで「こんな風に揃いにして」とは言いましたが、図案を同じにしてとは言いませんでしたので、ご自分でテーマを揃えて図案を作られたようです。

 

つまり趣味で作っている人たちには、同じ図案で延々と作るという発想はしにくいのかもしれません。

 

どちらがいいということではありませんが、たぶんテーマを揃えたものはより作品的になるので「豪華!」という印象を受けるかもしれません。

他方、図案を揃えたものは、全部同じだからこその「かわいい♡」という萌えポイントをくすぐられるかもしれません。

 

 

是非、我こそは!と思う方がいらっしゃいましたら、この一揃いにチャレンジしていただき、現代にもこんなすばらしい作品が作れるのだということを実証していただきたいものです。

 

 

作品の主導権を握るのはどちらか

 

このような作品を鑑賞したときに、皆さんは何を思うでしょうか。

 

「うわ〜すてき〜moe」というのは共通しているかもしれませんが、その次に思うことは人それぞれだと思います。

 

「刺繍きれい〜」

「当時いくらぐらいで買ったのか、、、」

「重そうな房!」

「どうやって使うの?」

 

でしょうか。

 

私は作る側の人間なので、「職人に発注をした先はどこか?」を考えてしまいます。

 

定家文庫は房がゴージャスなので、私はつい「定家文庫のメインは房!」と考えてしまうのですが、それはたぶん今回の作品のように大きな撚り房が二つ付いたものをよく見てきたからなのだと思います。

 

しかし、実際刺繍の図案を当ててみると、撚り房の邪魔なこと、、(苦)。

房のせいで刺繍が見えない。

 

ということで、私が定家文庫を仕立てる際は一本使いにしています。

 

つまり定家文庫の刺繍に目がいくような人はこんな房のつけ方はしないので、これを作らせた人はこの房がドーンと目立った「ザ・定家文庫」的なスタイルを売ろうというのが第一にある。

つまり袋物商か有名百貨店かが企画製作したもので、たぶん同じ図案のものがいくつか販売されていたはずです。

 

かたやKUIPOの定家文庫は房が一つで刺繍や仕立てに目がいくような作り方なので、いかにも趣味人が特注で作らせた袋物という感じです。

図案もこのためだけに描かれたオリジナルでしょう。

 

企画製作したものであれば、ある程度は数を売ることを目的としているはずですが、完全な既製品というよりは別注品、つまりイージーオーダーのようなもので、例えばこの年の図案はこの桐に鳳凰にして、中に組み合わせるものは好きに選べるぐらいのものだったのではないでしょうか。

 

古い筥迫などは桐箱の内側に百貨店シールが貼ってあるものを多く見かけます。

しかし定家文庫では百貨店シールが貼ってあるものを見かけたことがないので(それほど数は出てこないこともある)、もしかしたら定家文庫などは嚢物商しか扱わなかったかもしれません。

 

この定家文庫ぐらいであれば、たぶん大正か昭和初期ぐらいに作られたものではないかと思いますし、実際に関西地方ならお祖母様から引き継がれたなんて方もいらっしゃるのではないかと思います。

そんな方がいらっしゃいましたら、是非エピソードなどお聞かせいただければと思います。

 

 

 

しかしながらすばらしいコレクションで目の保養です。

noelさん掲示板へのアップありがとうございました

 

筥迫工房の掲示板は、ご自分でおつくりになった作品以外にも、noelさんのようにご自慢の一品などを自由に掲載していただけますので、すてきなアンティークの袋物をお持ちの方は是非お披露目してください。

いいものがありましたら、今回のようにこちらからスカウトにも参ります。

 


 

SAKURAのyayaさんからコメントをいただきましたので追記いたします。

yayaさんは日本の古くからの細工物に大変お詳しい方です。

 

定家文庫は八代の美術館には有りますのに徳川美術館にはないのですよね。
以前問い合わせて不思議に思いました。
定家文庫は江戸の武士文化ではなく京の公家文化なのでしょう。

時代祭りには和宮様の侍女が捧げていますよね。

結は公家の中で生まれましたからあの結びや房がよくそれを物語っているのでしょう。(yaya)

 

何だかわからないものを入手した時は「yayaさんに聞け!」が私のお決まりです(笑)。

yayaさん、ありがとうございました!(Rom筥)

 




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謹賀新年 midoriさんの作品 〜新春祝い道具一式〜 

新年明けましておめでとうございます。

2017年も筥迫工房をよろしくお願い申し上げます。

 

さて、新年のブログは何にしよう、、、と迷っていたところ思い出しました、ちょうどよい作品を!

 

それがこれ↓

 

midoriさんの「新春祝い道具一式」です。 まぁすごいmoe

 

本来は同じ図案でお揃いにするものなのですが、midoriさんの性格上それは無理(笑)。

それでも同じ生地、おめでたい図案で揃えているので、ちゃんとした揃いには見える。

ということで、婚礼道具一式ではなく新春祝い道具一式としてみました。


前回のお針子会の作品展に出品する作品を皆が必死に作っていた頃、お嬢さんの成人式の振袖が終わって一時抜け殻になってはいたmidoriさんが回復し、エネルギーを持て余しているという情報を得たRom筥は、時は来た!とばかりに骨董の婚礼道具一式をmidoriさんの目の前に置き「midoriちゃん、こういうの好きじゃない?」と悪魔のささやきをしたのでありました(笑)。

 

みごとに釣り針にひっかかってくれたmidoriさんは、私の予想を遥かに超えたペースであっという間にこれらの作品を刺繍してしまったのでした。

 

恐るべしマグロ人間!

相変わらずのマグロっぷり

 

私レベルでは一つの作品ができるかどうかぐらいの期間で「鯉と紅葉」の定家文庫も同時進行してしまうのですから、このエネルギーを有効に使わない手はない。

 

本来、定家文庫、筥迫、紙挟み、小物入れ、櫛入れなどを、お揃いの図案で一揃いにするものなのですが、この数だけお揃いで作るのは相当の労力がいります。

(定家文庫でも無理と思ってしまう私には気の遠くなる作業)

 

本当はここに筥迫を入れられればよかったのですが、柄合わせのあるものは打ち合わせが必須で、走り出したら止まらないmidoriさんに途中でその手を止めて打ち合わせのやり取りをするなんて芸当はできるはずもなく、結局、放置しても問題のない柄合わせなしの型で組み合わせることにしました。

 

 

本来、1点ずつご紹介すべきものなのですが、これはやはり一揃いが萌えポイントなので、年明けの出血大サービスで一気にご紹介してしまいます。

 

(画像の色かぶりを補正する技術がなく残念な画像となってしまいました。本物はもっときれいな色です。あしからず。)

 

 

定家文庫

 

 

問い:この定家文庫、最も残念なところは何でしょう?

答え:房がない!

 

いえ、忘れたわけじゃないのですよ、房が入ったらとにかく刺繍が見えない!

この図案で中心が隠れてしまったら絵にならない!ということで、泣く泣く房を付けなかったのです。

 

私からすれば、定家文庫は房がメイン。

 

この形を考慮した上で刺繍の図案を考えるものなのですが、そこはエネルギーが有り余っているmidoriさんのこと。

下図の打ち合わせを待っている私の元に、ある日突然出来上がった刺繍裂が届いたのでした、、、(涙)。

 

図案が入りきらなくて側面にはみ出しちゃった!と言わんばかりの迫力の柄合わせ(爆笑)。

そして角にもばっちり刺繍、、、(職人泣かせ)。

それでも溢れんばかりのめでたさを表現できていることは否めない。

 

 

定家文庫は三面柄合わせ(前と側面)が基本なのですが、midoriさんには一面だけ空けておくなんて許されないことなのでしょう。

背面にも獅子舞がどーんといましたよ。

 

折り部分に獅子の顔がかかっているので、意外な表情になって面白い効果を出しています。

 

実はこの獅子、アタリの印つけからすると背面の中心にいたのですが、これじゃ完全に獅子舞の顔の中心に金具がつく羽目に、、、。

しかたないので横にずらしました(なのでちょっと中途半端な配置です)。

 

ちょうどこの画像を広げてブログを書いていた時、横から家人が「うわぁ、綺麗だねぇ」と一言。

 

常に既存の嚢物に囲まれている環境のせいで、つい定家文庫はこういう物!という概念から抜け出せなくなっているのは私だけであって、房がなくたって一つの作品として見ればエネルギー溢れる素晴らしい飾り箱なのです。

 

膨大なエネルギーに満ち溢れ、それを何の縛りもなく刺繍という表現にぶつけてくるmidoriさんの作品を見ていると、もっと素直に作品を見なければという気持ちに気づかされます。

 

 

紙挟み

 

お次は紙挟みです。

懐紙を挟むだけの単純な型です。

こういうものはあっさりとした刺繍がよく似合います。

 

こちらは「留め具」の位置に苦労した作品です。

(一応、下図用の雛形には留め具の位置は書いてあるんですけどねぇ)

 

現代では、側面を千鳥掛けにしている紙入れが一般的ですが、私はあの千鳥掛けの紙入れは懐紙を出し入れするときに縢りにひっかかりそうで使いにくそうな気がしてイマイチ作る気になれないのです。

 

こちらはただ挟むだけなので使いやすいこと、また留め具を使っているのもデザイン的にもそそられてしまいます。

 

留め具は「両笹」を使っています。

現代でも笹爪の「片笹」タイプは安価なプラスチックのものが製造されていますが、この両笹を使いたいとなると象牙屋さんに行くしかありません。

 

象牙は小さな爪一個でさえ2,000円程度しますが、これとは別にボン(牛骨)もあります(多少お安いぐらい)。

だから現代ではこの型があまり作られないのかもしれません。

 

象牙というと初めはお高くて手が出ないと思われるかもしれませんが、それは適当な生地に合わせようとするから高いと感じてしまうのです。

それなりに手をかけて刺繍したものや貴重な裂を使うと、そのぐらいの値段はかけても高いと思えないもの。

 

昔の人はこういうものを大事に使いました。

簡単に捨てられるようなものは作りませんでしたし、だからこそ簡単には捨てられない。

 

消費時代に生きる我々は何でも安価に安易にモノが手に入ります。

安く適当なモノが氾濫しているので、簡単に捨てることができる。

 

このような小さな部品一つに、モノ作りの価値を見直してみるのもいい機会になるのではないでしょうか。

 

 

 

雅型小物入れ(楕円型)

 

「雅型小物入」という名称は、本来もう一つ違う型につけたいのですが、その型が出るのはまだ先のことなので、とりあえず「楕円型」として区別しておきます。

 

これはどちらかというと仕覆の世界で作られるものなのかもしれません。

私が入手した婚礼道具一式の中にこの型があったので、ちょっと興味本位で作ってみました。

 

私が作る小物入れには、もう一つ「式部型」というのもあります。

この式部型は定家文庫をそのまま小さくしたものです。

 

もう一つの雅型(箱型)はKUIPOの資料館にある定家文庫の小型版です。

定家文庫の雅型は一回作ったことはあるのですが、その小物入れもまたいつか作ってみたい型です。

 

雅型は見た目にかわいいのですが、完全に開かないので(上に長く開く程度)入れるモノが限られます。

その点、式部型は上下左右に開くので、最近は小物入れを作るとなるとほぼ式部型しか作らなくなりました。

 

その式部型小物入れは、今年の講習会で企画されています。

式部型の画像もそのうち公開したいと思います。

 

 

携帯裁縫用具入れ

 

揃い物で数があったため、中を開いて撮影したものがこれぐらいしかなく残念。

こちらのかわいい生地は、小物入れと一緒に使われています。


なぜ梅の背面に亀なのか謎が深まる図案ですが、この亀さん実は定家文庫にもいます。

ここでなぜ亀?と思ってしまいますが、そこはmidoriクオリティーでめでたいモノを入れまくりたかったのでしょう(笑)。

 

 

 

お針子会刺繍教室作品展

 

さて、今年は11月にお針子会刺繍教室の作品展が行われます。

筥迫工房の11月の講習会が終わった後ぐらいになるのではないかと思われますが、日程が確定したらブログでお知らせいたします。

 

最近は私も仕立てに忙しくて自分の作品をなかなか作れない。

月2だったお教室も今は月1でしか行けていないので、去年はなんと小さな「櫛入れ」に1年かけてしまった、、、(苦)。

細かい細かい刺繍です。

 

できればあと3点ぐらいは作って出品したいと思っています。

一応考えているのは、あしらい刺繍の式部型小物入れと、江戸型2点。

 

あるところから江戸時代の古い筥迫をお借りしているのですが、これがまたかなりのジャンク品なのですが、もし完品なら美術館ものというすばらしい高肉の刺繍がされています。

 

これをどうにか現代に復元したいというのが私の夢。

できるかどうかはわかりませんが、作品展に向けて着手したいと思っています。

 

ちなみに、まぐろなmidoriさんが現在何に刺繍しているかと言いますと、なんと「風呂敷」(爆笑)。

 

それもワンポイント刺繍とかではなく、かなりこってりと若冲の虎を図案にしているとかで、「これど〜やって展示するのよ、、、」と先生が頭を抱えています。

 

風呂敷なんて額にもできないし、普通に結んで展示したらせっかくの虎が見えないですからねぇ(私はまだ見ていない)。

 

「Rom筥さん、何かいい案はない?」(矢部先生)

風呂敷を嚢物に変える一ついい案があるのですが、それをmidoriさんが受け入れるかどうかが問題(一応風呂敷には見える)。

 

日本刺繍をしているにも関わらず、着物文化にほとんど興味を示さないのがmidoriさんの面白いところですが、だからこそのその飛び抜けた発想があるのだと思います。

 

刺繍教室一同、2017年もmidoriさんの動向から目を離せそうもありません(笑)。

 

 

 


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定家文庫『鯉と紅葉』〜midoriさんの作品

作品展に「定家文庫を作ろう!」と思い立ったのは昨年秋のこと。

まず矢部先生が作品展の目玉として定家文庫を作ってくださることになり、一つじゃ寂しいなぁと思えども、作品展まで半年もないという状況で誘える人なんてまず「あの人」ぐらいだろう、、、。(自分がやろうという気は全くなし)

ということで声を掛けたのは、お馴染み「midoriさん」。
しかし、暇にまかせてやったとしか思えない「ミッフィー」の刺繍裂を手に、ちょうどいいからこれを定家文庫にして!と無茶ぶり(あのブルーナのミッフィーですよ?)。

先生の刺繍は作品展ぎりぎりになるらしいし、初めての定家文庫の仕立てがミッフィーとは(トホホ)と肩を落としていた私に、ある日届いたのは、、、こんな素敵な『鯉と紅葉』の刺繍裂でした。

「うまい!」とつい手を打ってしまいたくなるような図案です。

矢部先生とは図案の段階で何度も何度も打ち合わせをしましたが、midoriさんは刺繍用の雛形を渡しただけで、下図を見る間もなくあっという間に刺繍になって送られてきました(汗)。
定家文庫の説明をせずとも、こんなにぴったりの図案で作ってくるあたり、ホントただ者じゃない。

まぁ、どこからか図案を持ってきたのだとしても、「構図」「配色」「布選び」全てにおいて文句なし!
と言いたいところですが、惜しむらくは「鯉の配置」のみ。
だって、これじゃ定家文庫の華「房」が付けられないのよ、、、。

「房をぺろっとめくって鯉の頭が見えるのが粋ってことで〜(・∀・)○」(midori)

いや、そういうのは粋とは言わず、何て言うか、その〜〜、、、

間抜け?


百歩譲っても房を付けることは出来なかったので、手元にあったアンティークの真鍮の鈴を付けることにしました。(これは以前、後藤勝子さんにいただいたもの)
これで中心がはっきりしました。

それにしても、裏がまたいいんですよ。

表を邪魔しない刺繍のバランス。
箱の天面を水面に見立てる絶妙の図案。
まるで定家文庫大の水槽に、ホントの鯉を飼っているかのようです。
いや〜midoriさん、あなたうますぎる!

箱物は立体でデザインを考える必要があり、こういうことを説明しなくてもひょいと作り上げてくるmidoriさんのセンスはホント素晴らしいです。
ちなみに、この緑色の生地は、韓国で買ったそうです。
チマチョゴリで使う生地なのでしょうか、けっこう薄めでした。
こういう生地のチョイスもまたいい。

そして、被せ下にもしっかりと刺繍するあたりがいかにもマグロ人間。
私なんぞ、柄合わせでもないかぎり被せ下に刺繍するなんて気力は毛頭ない。

返す返すも、これで房が付いたらホント完璧!言うことないのに、、、沈


それでは、中を開いて定家文庫の構造をお見せしましょう。

まずは前面から被せを開きます。

定家文庫の留め具は、菊結びの一番上の輪が雌になっていて、被せ下の雄の金具に引っ掛けて留めます。
この定家文庫を作るにあたり、専用の金具を使うことは私の最大のこだわりでした。
そんなに目立たないと思うかもしれませんが、金具であるかないかで全体的な完成度はかなりの違いがあります。
これを実現してくださった飾り職人のT氏には、心から感謝申し上げたいと思います。


四辺に表蓋を開くと、一番上の桐箱の蓋が見えます。
中央の穴は、ここに指を入れて蓋を取り外すためのものです。

しかし何というか「赤」が映えるデザインですな〜。


上蓋を外すと、中に鏡が入っています。

袋に仕立てる余裕がなかったので、私はこんなデザインで鏡を使ってみましたが、このままでは取出しにくいので「飾り房」をつけてみました。
鏡入れのデザインを色々と考えてみるのも楽しいですね。

何で鏡が入っているのかと言いますと、こんな具合に鏡を立てかけて使えるような構造になっているからなんですね。

鏡を立て掛けているのは一番上の「蓋」で、裏に鏡を立てるための受けが付いているのです。
これを箱のサイドに切ってある溝に差込んで使います。
これが定家文庫の第一の特徴です。


そしてもう一つの特徴は、この下に二番目の蓋があって「二段構造」になっているということですね。


底はこんな感じになっています。

中心に仕切りを付けてしまったので、下蓋の穴に当たってしまい取出しにくい、、、。
これは一番始めの試作品で、単なる私の設計ミスです。
仕切りがあると入れる物が限られることから、次からは仕切りは入れないで作っています。



定家文庫は「定家袋」「定家筥」とも呼ばれています。
こうした『筥』というのは、どこか謎めいている感じがします。
特に定家文庫はこれでもかと蓋を開けていくところがまた怪しい。

「東の筥迫、西の定家文庫」たる所以は(←Rom筥が言っているだけですが)、これもまた中を覗いてみたくなるワクワクする要素を持った『筥』だってことでしょうか。

中身を保護する目的の「箱」ではなく、箱自体に価値のある「筥」。
そんな筥の中に入れるものは、高価な物というよりも、その人自身にだけ価値のあるような物なのだと想像できます。
例えば、幼い頃に死に別れた母にもらった「どんぐり」でもいいわけで(絶賛妄想中)。

定家文庫は筥迫よりもずっと収納力はありますから、外国の映画などで年老いた女性が思い出の写真を入れているような、いわゆる「メモリアルボックス」的な使い方がいいとは、以前柾女さんが言っておられました。

家人曰く「通帳」こそジャストサイズ!とのことですが、通帳こそ目立たない「箱」の方がいいと思いますけどね、私は(笑)。




▼筥迫工房のお店


▼筥迫掲示板
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定家文庫『孔雀』〜矢部博子先生の作品

お針子会刺繍教室作品展のお知らせ(ポスター&はがき)をこのブログでご紹介したのが4月初めで、もうすぐ6月という今になってやっとこの定家文庫の解説をすることになりました。

このすばらしい刺繍はお針子会刺繍教室の矢部博子先生の作品です。仕立てはもちろん筥迫工房。


さて、まずは『定家文庫(ていかぶんこ)』とは何ぞや?からですね。

「定家文庫」「定家袋」「定家筥」とも呼ばれているようですが、この「定家」が何を意味しているのか書かれた物がないので今イチ不明。
私は一言で説明するときは「化粧道具入れ」と言っていますが、実際には化粧道具を含む小さな身の回りの物を入れていたようです。

実はこの定家文庫については、残されている文献が少ないようです。
私の手元にもそれほど資料はないのですが、とりあえず今あるものの中から引用してみます。

まずは『日本の美術5 女の装身具』(1999年5月発行)から。
カラー頁に東京国立博物館所蔵の定家袋が紹介されていますが、びっしりと刺繍で埋め尽くされた定家文庫と、それを乗せる専用の台も定家文庫とお揃いの装飾で仕立てられています。
 

定家袋は、武家女性や富裕な女性が化粧道具その他の小物を入れて、お供の女性に持たせた手提げ袋。
厚紙で作った箱型の芯をこの作品のようにビロードその他の生地で包み、室内では専用の台にのせるが、この台も本体の共裂で仕立てることが多い。(「日本の美術5」P.7引用)

 

定家袋は「定家筥」「定家文庫」ともいい、武家女性や富裕な女性が化粧道具その他の小物を入れて、お供の女性に持たせた手提げ袋で、直接身に付けるものではないが、筥迫とやや類似した性格をもつものとして紹介しておく。
 厚紙で作った箱型の芯を織物の生地や刺繍を施した生地などで包み、房付きの紐飾りを付けたものが一般的である。
室内に置いておく場合には専用の台にのせるが、この台も定家袋の本体同様、刺繍などで美しく飾られることが多く、しかも本体の共裂を用いることが少なくない。(「日本の美術5」P.36引用)

 

桐製の箱物仕立てで、『類聚名物考』にも起源はあまりはっきりしないが名称は掲載されている。
『守貞漫稿』に類似した箱を持つ図があり、そうふくろ(粧袋、総嚢か)とある。
主人の妻娘の粧具を納めた箱を錦の嚢に入れて組緒で結び、晴れの時は、小婢、長婢が携えて従うことは、京坂で古風を残すひとつである。
江戸では従来これは用いていないと記される。
手元に残っているものから判断すると、携帯用の化粧道具一式を納めたものといえる。内容品は、蓋の部分に金属製鏡が入り、立てかけて使用できるようになった もの、共布製の楊子入れ、針山つき針入れ、紅板と金属鏡が納められた紙入れ、そのほか、紅、紅筆、白粉、刷毛入れ、紅入れ、金属製紅板、薬入れ、歯ブラ シ、白粉刷毛、櫛類そのほか化粧容器を納めたものなどがある。実際の使い方ははっきりしない。
大正期に、婚礼用の袋物として用いたという話しもあるが、実用としてどこでも使用可能な状態である。(「日本の美術5」P.96引用)




約20cm×10cm×10cmぐらいの箱に装飾裂を被せ、上に房付き紐があって上開きという形状をしたものを定家文庫と呼んでいるのだと思いますが、実際にはいくつかのタイプがあります。

まず「専用の台にのせる」タイプは江戸期の物に多く、京坂の文化であったことから、お揃いの台を作るぐらい豪華な物なら、公家の姫君あたりが使われていたのではないでしょうかねぇ。

この台置きタイプに多い形状は、四隅に三角状のヒダを付けた独特な畳み方で、上のリボン結びを解いて開きます(KUIPO資料館定家文庫参照)。
KUIPO所蔵のものは大正時代の物で、すでに専用台はないですが、江戸時代のものよりもかなり洗練された形になっています。
今回の物よりずっと複雑な形です。

寄せひだの美、組紐の美に見とれながらひもをとけば、口の部分が朝顔の花のように開く。
箱物仕立ては難しいとされ、熟練した袋物師の手にかかった。(中略)婚礼用で、嫁入りのときに、女の道具、十三そろいを入れたという。この種の形と作りのものは、“定家文庫”といわれて、後世に伝わる。(季刊「銀花」第21号引用)


これが江戸期の同じ形状になりますと、紐はもっと細く長い物が使われていたようです。
↓こちらの方のブログに東京国立博物館の定家文庫の画像がありますのでご参照ください(スクロールしたず〜っと一番最後の画像です)。
東京国立博物館 Part 1

先の解説にある「お供の女性に持たせた手提げ袋」というのは、この長い紐を見て、明治以降に使われるようになった信玄袋に連想して「手下げ袋」と思ったのではないんでしょうかねぇ。
だって手提げ文化のない時代に、わざわざお供の者がこんな豪奢な箱をぶらぶらと下げているなんてありえない(笑)。

更に上のブログでは「化粧道具やさまざまな小物を入れて持ち歩いた箱型の巾着袋」とありますが、巾着といえば確かにそのような形なのですが、巾着=下げるというイメージが強いので、こちらもなんだかう〜んという感じ。

ということで、こちらの解説が正確なところではないかと。

高貴な女性が化粧用具や鏡、身の回り細かな品々を収めて携帯した筥である。
お付きの伽(とぎ)の少女が両手で支え上げて持って運ぶが、道中落さないように筥の裏に手を差し込む帯が付けてある。
天鵞絨や羅紗の貴重な裂に刺繍で飾る。(田村コレクション「女の装い三百年」P.146より引用)


私の持っている定家文庫は二つあって、現にその一つにはこの「差し込み帯」が付いています。

かなりシンプルな定家文庫。


これが底面の「差し込み帯」。

もう一つの定家文庫には付いていないし、これも申し訳程度の差し込み帯です。
これでどうやって「両手で支え持つ」の?と思ってしまいます。
もしかして、持ち運ぶのを見せるという行動はすたれて、時代とともにただの飾り物になったのでしょうか。

専用台に乗せるような豪華な定家文庫は落したらただ事ではすまないので、もっとしっかりした差し込み帯が付いていたでしょうし。
でもこれがあると置いたときにガタガタしてしまうので、専用台の底は穴が開いているかもしれませんね。

とにかく、定家文庫は「手提げ袋」ではなく「支え上げて持った袋」だということです。

筥迫と定家文庫は「懐中」できる大きさにしたか「支え持ち」する大きさにしたかの違いだけで、豪華な装飾を施したところは同じですし、この二つは類似した袋物であることは確かです。

定家文庫は京坂で古風を残すひとつであり、江戸では従来これは用いていないこと、紙入の装飾が女官の趣味程度に扱われていた御所周辺とは違い、江戸では贅沢な筥迫を作る専門職があったことなどから、「京坂の定家文庫、江戸の筥迫」と分けられるのかもしれませんね。


そしてもう一つのタイプが今回のこの形(単純な折り畳み方)です。
一般的にアンティークとして出回っているものはこの型で、たぶん大正時代に婚礼道具として上流社会に使われた頃のものだと思われます。
これは前後左右と四面を開いて使います。
この型の詳細と中の構造は、この後のmodoriさんの定家文庫のときに解説したいと思います。



定家文庫の刺繍

以前から刺繍をする人たちに「定家文庫の刺繍やりませんか〜」と声をかけまくっていましたが、一般の人が定家文庫を知っているはずもなく、笑顔でスルーされ続けてきましたが、今回はなんと言っても作品展。
作品展の目玉が定家文庫というのはかなりイケる。
ということで矢部先生とmidoriさんが協力してくださいました(感謝)。

とにかく私が先生にお願いしたのは、「凝った繍い方をしなくていいので、とにかく画面を埋めてください!」でした。
そして出来上がったのがこの作品。

こんな角度で撮っているのは、ポスター用に金糸の煌めき感を出すためです。

先生には下図の段階で何度も何度も描き直しをしてもらい、定家文庫にふさわしい図案を二人で練り込みました。
(生徒が先生に何度もダメ出しするとは、、、アセアセ

しかしベテランの先生といえど、普段は着物や帯等の平物ばかりなので筥用に図案を描くのは正直わからないところです。

そこで、下図が届く度それを定家文庫の基礎となる桐箱に貼り付け、その上から房をかけて撮影したものを先生に送る、ということを繰り返しました。
ここはもっと図案を詰めてくださいとか、ここは角まで伸ばしてこの角度で等のアドバイスをさせていただき、ようやくできたのがこの作品。

お〜完璧!!
もちろん図案は矢部先生がご自分で描かれたものです。
うちの先生はホント絵がお上手なのです。(エッヘン!)


定家文庫の醍醐味は、この前面から側面にかかる柄合わせ。
いかにも「柄が合っている!」と思わせる図案が効果的。


天面部分にも房をよけて、図案がびっちり詰まっていてすごくゴージャス。

飾り房の一部を後ろについた金具に引っ掛けて留めます。
この金具は銀細工職人のT氏に依頼して作っていただきました。

定家文庫の材料は全て特注なので、一つ一つに苦労があります。
現代でこういうものを作ると、仕立てる技術よりも、このような材料を調達することの方が遥かに困難。
今回の定家文庫では、私にとってこの目立たない金具が一番のこだわりどころでした。



定家文庫に命を吹き込むかのような「飾り房」の存在はとても重要です。
しかしギリギリで仕上がった刺繍に合わせて紐の発注をかけていると時間がかかり過ぎるので、ポスター撮影に間に合わせるために私の手持ちの定家文庫(アンティーク)の房を取り外して仮使用しました。

その後、懐剣房と同じ「切り房」で私が作ることになっていたのですが、どう見てもこの豪華な刺繍にこの撚り房はぴったり。
そしてこの微妙なアイボリーの色合いもばっちりということで、結局この房をそのまま使うことになりました。

元の錦裂の定家文庫に付いていたときは撚り房が二つだったのですが、刺繍物を使うときはボリュームがありすぎて邪魔。
ということで一本は取って使うことに。これで完璧。

実はこの定家文庫の材料の中で、(刺繍は別として)最も高価なのがこの飾り房(撚り房付組紐)なのです。
レーヨンの既製品だったらいくらでも安い物はあります。
でも「正絹」で、この微妙な「色」で、この特徴的な「房頭」で、同じ撚り房を作ろうとすると驚くほどの値段になります。
ですから、もしこの定家文庫が売れる時があったら、そのときに新しい撚り房を新調しようと思っています。


今回この定家文庫を作るために、材料を全て最低ロットで特注しなければならなかったので、覚悟していたとはいえ大きな段ボールが届いた時はびびりました〜。
ということで、刺繍の定家文庫を作りたいと考えている方がいらっしゃいましたら、是非筥迫工房にお仕立てご用命ください(笑)。

材料のみの販売もいたしますが、作り方を教えて欲しい〜という方は研究会上級以外でないとちょっと考えられない。
というのも、一万円以上かかる材料で練習なんてできないため。

となると、始めから豪華な裂を使って作ることになるのですが、貼り込みに相当なれていないと大事な刺繍裂を汚しまくることになるので、講習会などで教えるのは怖すぎてとても責任が負えない、、、。
筥迫などで貼り込みに慣れている人なら簡単かも、ということで研究会上級以上としました。
研究会に来てまで労力かけたくない人は、材料買ってご自分で何とか工夫して作ってみてください。

刺繍裂でなくても、思い出のある留袖なんかを定家文庫に仕立て直すというのもけっこうすてきかもしれませんね(着物使用なら、二面だけなら柄合せ可)。



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相変わらずのマグロっぷり

作品展に出品する袋物はほぼ仕上がってはいるのですが、残るはMidoriさんが作る「婚礼道具一式」と私の「江戸型筥迫」のみ。

作品展の時は新しい型や使ったことのない材料を試す良い機会でもあるのですが、半面慣れないことをやるために時間がかかったり、材料の調達に時間がかかるのが難。

依頼の最後となるMidoriさんの刺繍裂が私の手元にやってきたのも五月に入る直前。
そこから材料を調達したり試作を作ったりで、結局一週間前の今になって、やっと仕上りが見えて来たという状況。

この後私の江戸型を作るということで、ホントもう作品展直前の仕上り。
時間が余ったら作品の予告宣伝しておこうと思ったのに、そんな時間なんてほとんどない。


こちらのMidoriさんの作品は、定家文庫の他、小物入れ、紙挟み、携帯裁縫用具入れの四点セットです。
現在紙挟みを残して他はほぼ完成し、あとは取り寄せている紐等の材料を待つのみ。
しかしこの図案、婚礼道具一式というよりも、新春縁起道具一式という感じですね(笑)。

↓前回の作品展でのMidori作品はこちら。
犬張子と鈴花と蝶雪雀

実は作年末、Midoriさんがちょっと暇そうにしているという耳寄りな情報を得て、婚礼道具一式のサンプルを持参して「Midoriちゃんこういうの好きじゃない?」と猛アピール。
生徒さんの中で、婚礼道具一式などというハードワークに興味を持ってくれる人なんてMidoriさんしかいない(性格&技術&早さ的に)。

つる姫さんは筥迫用刺繍にとりかかる度「も〜しばらくは筥迫やりたくない」とおっしゃいますが(でもほとぼりが冷めるとまた作ってくれる)、婚礼道具一式は定家文庫を中心に何点ものお揃いの小物を作らなければならず、また種類があるほどゴージャス感が出るので、よほどエネルギーがある人でないとできない。
もちろん、私自身はやろうとも思わない(笑)。

Midoriさんがフルタイムのお勤め人にもかかわらず刺繍のペースが教室の誰よりも早いのは、人が寝なくてはいけない時間に作業しているからで (他にも色々な趣味をお持ちです)、一般の人にはストレスになることが彼女にとってはストレス発散になるらしいので、まぐろな人を普通の人と同じに考えちゃいけません。

※マグロな人=マグロは泳ぎ続けていないと死ぬことにかけて、多忙な活動をし続けていないと生きていられない人のこと。

それなのに、気がつけば単品の定家文庫の刺繍なんかしていて、そうじゃなくて婚礼道具一式〜!と私があせっていると「それはこの後作りま〜す♡」

それでも一ヶ月前ぐらいの状況は、

先生「Midoriさん、もしかしたら作品展には定家文庫の二個目しか
   間に合わないかもよ?(小物は無理?)」
(後日メールで)
Rom筥「Midoriちゃん、先生がそう言うんだけど進捗状況は
    いかが?」
Midori「何とか期日通り間に合いそうで〜す」
Rom筥「、、、、。じゃさ、携帯裁縫用具入れっていうのが
    あるんだけどさ、すごく小さいもので布の余ったところに
    ちょっと梅の花一輪のワンポイントするぐらいのもので
    いいから、これもいっちょ追加する気ない?」
Midori「オッケーで〜す。まかせてください!」

Rom筥(筥迫って言っておけばよかった、、、チッ)



相手との連携

矢部先生は几帳面な性格なので、図案の段階で打ち合わせを密にして細かく配置をチェックされる方。
定家文庫の型をよく理解した上で作品を作るので完璧な作品に仕上ります。
一方のMidoriさんは、打ち合わせ?何それ、おいしいの?とばかりに、下図の確認もしないまま超スピードで図案を作りあっと言う間に刺繍に入ってしまう。

「折り込んだり見えない後側は刺繍を入れなくて大丈夫だから」と言っても、「それはダメです!」と言って、人が見ない所にも刺繍を入れまくるという無駄なエネルギーにあふれている。
ここは房で隠れるから見えなくてもいいような(差し障りのないような)図案にしておいてと言っても、おかまいなしに一番に目がいく柄を入れてくる。

ですから、何でこんな配置になるの〜!ここ図案入れるとこ?!こんな印の入れ方やめて〜!ということが日常茶飯事。
今回も入れてはいけないところに立派な刺繍が入っている。

「Rom筥さんからいただく雛形は、図案を入れるところに網掛けしてあるけれど、入れてはいけない所に網掛けしといた方がいいんじゃない?」と矢部先生。

フリーダムなMidoriさんだからこそ、枠にはまらない自由な図案を作る能力は長けているのですが、これから発注が来るであろうお客様たちがしそうな間違いを全てやってくれるので、ウォーミングアップにはすごく役立っているのかも(苦笑)。
そして何より、依頼人に差し出された素材に合わせて仕立てるのが職人の技量!ということを思い起こさせてくれるありがたい存在でもあります。


このような技術者同士の関係はかなりの連携が必要で、何度も繰り返し仕事をして阿吽の呼吸になって、この人ならここまでは間違いなくまかせても大丈夫だけどここだけは言っておいた方がよい、という全てをわかり合えていて、初めていい作品が出来るのだと思います。

ですから、今ではidoriさんからどんな作品が届こうが、何をやらかそうか慣れっこになっちゃっているので、もう何でもど〜んと来いです。(←これを強がりとも言う)

今回の定家文庫もと何人かの職人さんが関わって作り上げた物ですが、特に金具のT氏とは、ここに至るまでには定家文庫の前に一年ぐらい様々な材料の打ち合わせをしてきて、簡単な物一つ作り上げるのにも意思の疎通ができなくて悶々とした時期を過ごしましたが、今回の定家文庫で初めて同じ方向を向いてスムーズに仕事ができた気がします。
これまでの一年はお互いを知るという意味で無駄な時間ではなかったことを感じます。




そういえば、Midoriさんに初めて定家文庫をお勧めしたときに、暇に任せてやっているとしか思えない「ミッフィー」の刺繍をしていたのですが(日本刺繍でミッフィーって何??)、「じゃ、これで定家文庫作ってください」と言われましたっけ、、、。
お仕事なら何でもやりますけどね、定家文庫の仕立てってそんなにお安くないですよ?
ミッフィーの定家文庫にお金かけてまで作る意味がある???

そして、後日ミッフィーの刺繍裂が来るとビクビクしていた私の手元に届いたのは、素敵な「鯉と紅葉」図案の刺繍裂でした(これは仕立て済)。

しかし、この婚礼道具一式の刺繍裂を私に引き渡した直後にMidoriさんは胃炎でダウン。
こんな調子で刺繍の追い込みが胃炎を招いたのかどうかは定かではありませんが、この力作を是非作品展でご覧いただければ、胃炎を押して作り続けたMidoriさんの苦労も浮かばれることでしょう。
(検査の結果何事もなかったようで、いつものマグロに戻って回遊していました。よかった。)

今回、Midoriさんが出品する作品は、振袖(&半襟&筥迫)、バッグ、定家文庫、婚礼(新春縁起)道具一式の出品です。

ちなみに、彼女は今年20歳になるお嬢さんを持つ母です。
そして作品展の時は隣国旅行に行っているそうなので、残念ながらこれらの作品を前にしたMidoriさんにお会いすることはできません。

どこまでマグロなんだか(笑)。


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第2回 お針子会 日本刺繍教室作品展
総刺繍の振袖から小物まで
(帯・着物・半衿・筥迫・バッグ・額など60点)

2015年 5月16日(土)〜19日(火)
12:00〜18:30 ※最終日は18時閉場

場所:ORANGE GALLERY(オレンジギャラリー)


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