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飾り筥(中山きよみ+13)<9>『鳳凰あしらい』と大谷選手の話題

こちらは2016年に開催された中山きよみ先生の日本刺繍教室(金沢)の生徒さんたちによる『飾り筥展(中山きよみ+13)』の中の作品で、筥迫工房がお仕立てさせていただいたものです。

クリスマスなので、何かプレゼント的なイメージの画像はないものかと探して、こちらの華やかな『鳳凰あしらい』を選んでみました。

 

こちらは背面です。


定家文庫は前面に大きな飾り房がかかるので絵が隠れてしまう部分があるのですが、こちらの作品では前面、背面とも同じ刺繍が施されています。

友禅の着物地に日本刺繍をあしらった作品なので、柄合わせはされていませんが、奇跡的にも定家文庫にジャストサイズに配置sがすばらしい。

定家文庫は現代ではなくなってしまった文化ですが、以前どうしてもこれを現代に再現したいとの思いから、桐箱などの材料を全て特注で調達しました。


桐箱もただの箱ではなく、化粧箱仕立てになっています。
この当時は私がつたない飾り房を作りましたが、現在では専門の職人さんに協力していただき、かなり立派な房になっています。
在庫が全てはけた時にこれで終わりにしようと思ったのですが、需要があり最近また復活しました。

定家文庫と筥迫は似て非なる物です。
定家文庫は京阪の古風を残す文化のひとつで、江戸では従来よりこれは用いていないそうです。
他方、筥迫は江戸文化と東西にはっきりと分かれます。
筥迫もすたれつつあるとはいえ現代でも愛好者は少なからずいますが、定家文庫は関西固有の文化であるにも関わらず、当地の人たちから完全に忘れ去られている文化です。
こんな素敵な飾り箱なので、是非関西の刺繍愛好家の方達に作っていただきたい。
材料が全て特注品なので仕立てはお安いとは言えないのですが、他にはない古風な定家文庫を作りたい方は是非お問い合わせください。

 

大谷選手にみる江戸人からのDNA

最近の大きな話題といえば、大谷選手のトレードで盛り上がりましたね。

その入団会見で、大谷選手が身につけていた「時計」がグランドセイコーの「SBGM221」だったことが海外の人たちの間で話題になりました。

あれだけの契約金を手にするのに、その価格である60万5000円はあまりにもささやかということのようですが、大谷選手が日常生活でも全く「物欲」がないことは有名で、さもありなんという感じで好意を持って伝えられています。

なぜ今回この話題を出したかと言えば、ちょうど今私が読んでいる「逝きし世の面影」(渡辺京二著)という本の中で、幕末から明治にかけて日本を訪れた外国人によって伝えられた当時のリアルな日本人像と、今回の大谷選手に対する外国人の評価に似たものを感じて、ちょっと和んでしまったからです。


今回はこの本から、第三章の「簡素とゆたかさ」の内容を少しご紹介致します。

現代に生きる私たちにとって、封建社会の中で生きていた当時の日本人は、圧制的な支配に苦しめられていたというイメージを持っていると思います。

当時の外国の人々も同様の情報を持って日本にやってきたのですが、実際に彼らが見た日本は、それが事実であると同時に、全く反対の印象を持って不思議の国日本を観察しています。

それは、重税で貧乏を余儀なくされている民衆が、それにも関わらず豊かな環境の中で満ち足りた生活をし繁栄していたことでした。

 

中でも当時の外国人が共通して書いていることが、世界のあらゆる国で貧困に付き物の「不潔さ」というものが、日本には少しも見られないということが驚きを持って伝えられています。

気候よく、豊かで肥えた農地は美しく整備されてはいるものの、収入に対し不相応なほどの重税が課せられているため、人々は余剰がなく一様に貧しい生活である。

しかし日本の貧困には、当時の欧米における貧困が誘発する不潔さ野卑や犯罪がないことが驚愕であったようです。

ロンドンのスラム街といえば、市場では腐った野菜や果物が平然と売られ、肉屋からは不快な臭気が漂っている。

住人の家には完全な窓ガラスはほとんどなく、壁は砕け、戸柱や窓枠は壊れてガタガタの荒廃した有様である。

それに対して日本では、貧民ですら衣服や住居は清潔で、人々は小屋まがいの家に住んではいるものの、壊れた家や農作業小屋は見当たらず、家の中は汚れた長靴で立ち入るのをはばかるほど清潔だと書います。

イザベラ・バードに至っては、日光の町の街路があまりにも清潔に掃き清められているので、泥靴でその上を歩くのが気が引けたとさえ言っています。

 

また貧富の差に関わらず、総じて日本の家には自分たちが「家具」と呼ぶような物が一切ない、ということもよく書かれています。

上流家庭の食事とても、至って簡素であるから、貧乏人だとて富貴の人々とさほど違った食事をしている訳ではない。
日本人が他の東洋諸民族と異なる特性の一つは、奢侈贅沢に執着心を持たないことであって、非常に高貴な人々の館ですら、簡素、単純きわまるものである。

外国人からすれば家具のない家は全く快適には思えないのに、日本人はと言えば、自分たちには雨露をしのぐ屋根もあるし、食べる米ぐらいは持っているぞ!と至って満足な様子です。

「たしかに、これほど厳格であり、またこれほど広く一般に贅沢さが欠如していることは、すべての人びとにごくわずかな物で生活することを可能ならしめ、各人に行動の自主性を保障している」。
幸福より惨めさの源泉となり、しばしば破滅をもたらすような、自己顕示欲にもとづく競争がここには存在しない。

そして彼は 「幸福な農民生活」についての或る詩句を、まさに日本にふさわしいものとして引用する。 
「気楽な暮らしを送り、欲しい物もなければ、余分な物もない」。

このように、当時日本を訪れた外国人たちは一様に「貧乏人は存在するが、貧困なるものは存在しない」「生活が容易で単純な国ではほとんどすべての者が貧しいが、悲惨なものは一人もいない」「日本人は要求が低くて、毎日の生活が安価に行われている」と言っています。

当時の欧米人が到達した物質文明の基準からみた「豊かさ」ではなく、日本人のそれは次元の異なる「豊かさ」であり、「彼らの全生活に及んでいるように思えるこのスパルタ的な習慣の簡素さのなかには、称賛すべきなにものかがある」と述べています。

 

大谷選手をこの時代の貧しい人々とは比べようもありませんが、「他の東洋諸民族と異なる日本人の特性」として「奢侈贅沢に執着心を持たない」「スパルタ的な習慣の簡素さ」には大いなる共通性を感じてしまいます(笑)。

世界最高峰のメジャーリーグで野球選手として活動できることが彼にとっての望みの全てであり、その他は「欲しい物もなければ、余分な物もない」ただただシンプルな生活(有り余るお金は銀行に預けておけば邪魔にもならない)。

贅沢さが欠如しているがための豊かさ。

大谷選手は、現代にあって江戸人のDNAを誰よりも強く引き継いでいる人なのかもしれません。

 

最後に、高貴な方のシンプルな住居で思い出すのがこの一枚の画像(2016年の平成天皇)です。
海外「これが日本との差だ!」 皇居で行われたご会見の光景にアラブ社会が衝撃


 

 

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中山きよみ+13 江戸型筥迫『忍吹枝(しのぶえ)』

今回は久々に中山きよみ+13のコレクションを掲載させていただこうと中山先生のブログにお邪魔すると、綺麗な刺繍裂の画像がたくさん掲載されていました。(中山先生がんばっている!)

 

これは江戸型筥迫の開き扉タイプのものです。

 

何度も言っていますが、「江戸型筥迫」というのは私が便宜的につけた名称です。

明治維新を境に、筥迫は大きさや形が全く違うからです。

 

現代でこんな型を作っても、まず着物の襟元に入れる人はいない(ぐらい大きい)。

 

被せ、胴締め(前)は無論のこと、被せ下、背面、側面まで同じ熱量で刺繍が施されています。

前だか背だかわからないぐらい刺繍で埋め尽くすのが江戸型の特徴です。

(たぶん帯一本分ぐらいの刺繍量はあると思う)

 

筥迫の不思議な意匠に複雑な中の仕組み。

大奥の女性たちが心ときめかせた絢爛豪華な装身具、それが(江戸型)筥迫です。

 

 

2016年10月に金沢で行われた『飾り筥展』(中山きよみ+13)では、筥迫工房にお仕立てのご依頼をいただきました。

 

これらの作品群は、中山きよみ先生のブログ『日本刺繍 nui.nui』に掲載されておりますので、是非こちらでオリジナル画像をご堪能ください(こちらのブログへの使用は許可いただいております)。

 

筥迫工房にお仕立てをいただいたものは、自分自身の記録として全ての画像を保管していますが、今後は著作を持っている方のブログへリンクするような形で掲載させていただこうと思います。

 

 

画像の取り扱い

 

画像についているコピーライト(Ⓒ)は著作を示すマークです。

実際にはコピーライトがなくても全ての画像に著作権はあるのですが、ネット上の画像なんて簡単にコピーできるので、「これには著作権があるんですよ!」とか「画像を無断使用しないでね!」と著作者がはっきり主張しているものだとお考えください。

 

 

仕立てについて

 

『飾り筥展』では、よくもこんなにたくさん筥迫を作ったものだと改めて思いますが、今現在、同じことをしようと思っても、仕立てのための時間を作ることが難しい状況になっているので不可能でしょう。

 

これまでは、型の研究、教本(資料・型紙)作り、それに伴う材料の販売(ネットショップ)、講習会、そして仕立ての受注など、全て同時にこなすことが出来る程度にささやかな活動でした。

 

しかしながら、ここ数年で全ての活動が急激に広がり出し、一人でこなせる範囲を超えるようになってしまいました。

現在は周りの人の手を借りながらなんとか必死に毎日を送っていますが、時間的にできないことも多く出てきました。

 

筥迫仕立の需要はほとんどが刺繍裂なのですが、通常の仕立てより専門的な技術が必要となります。

新しいことを生み出しながら、ネットショップの仕入れや受注作業をしながら、片手間に扱えるようなものではありません。

 

そこで、今年から当分の間、新規のお客様からの「お仕立ての依頼」はお断りすることにいたしました。

 

しかし、ほぼ絶滅した技術を一からコツコツと積み上げてきたので、できれば次の時代も続く文化であってほしい。

それには自分だけが技術を持っていてもしかたない。

 

今後は自分以外でも専門的な仕立てができる職人さんを、時間をかけて育てていきたいと考えています。

 

そして、遠方の人が東京まで講習会に来なくてもいいように、貼り込みの嚢物ができる講師も育てていければと思っています。

 

 


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2017.7 中山きよみ+13コレクション(3)江戸型筥迫『しあわせ尽くし』

おめでた〜い宝尽くしの図案が詰まった筥迫です。

刺繍に関しては中山先生のブログ「日本刺繍nui nui」をご覧ください。

 

こちらのブログでは、あくまで仕立ての面から筥迫を見ていきたいと思います。

 

私は筥迫を作り始める人たちに「帯地はやめてね〜」と常々言っておりますが、筥迫を作る人が誰でも刺繍ができるわけではないので、刺繍に匹敵するものとして金襴などの派手な生地で作りたがる人が多い。

 

裏に糸がたくさん渡っているようなゴージャスな織地でも筥迫を仕立てられないわけではありませんが、どんなに不格好になっても使うのは婚礼の一回こっきり、「襟元から出すわけじゃなければほとんどわからないから!」というだけならどうぞご自由に。

 

しかしこれが筥迫作りに凝り出すようになってくると、とにかくきれいな仕立てで筥迫を作りたいと思うようになる。

 

懐中袋物というのは布をたくさん折りたたんで作るものなので、ほんの少しの厚みの違いで出来上がりに大きな差が出るという世界。

どんな素材を使っても同じようにスマートに一定の仕上がりに作ることに苦心するようになる。

 

薄手の金襴や錦などであればきれいに仕立てられなくもないのですが、どこまでの厚みならOKで、それ以上の厚みならどう処理するかの判別は、とにかく数を作って経験として判断していくだけです。

 

 

刺繍の厚みは別物

 

刺繍の筥迫には、帯や着物にしないような分厚く肉を盛った刺繍をすることがあります。

今回の作品は肉入れこそされてはいませんが、帯地にふんだんに刺繍が施されています。

 

既存の布は生地全面の厚みは均一なので「厚みのある生地はダメ」とひとくくりに言えるのですが、刺繍の場合は装飾にいかに厚みが出ようが、布が折り返される「縁」の部分にさえ刺繍をいれなければ問題なし。

 

「縁」にあたる部分に厚みがあると、同じ分だけ裏にも厚みが回るので倍々で厚みが増えていきます。

これに厚みの出る挟み玉縁を付けようものなら、三倍ぐらいの厚みになります。

 

これが金襴の厚みがダメで刺繍の厚みがOKな理由です。

 

全体的に肉付きがいいよりも、締まるところは程良く締まり、ふくよかなところはより肉が盛られている(もしくは刺繍こってりな)姿の方がより魅力的に感じてしまうのは人間も筥迫も同じってことです。

 

中山コレクションのすごいところは、江戸時代の筥迫さながらの全面刺繍です。

刺繍がないのは底面ぐらい。

 

裏面にも刺繍がびっしり。

 

もちろん胴締めなどの柄合わせ部分はどうしても「断ち切り」になってしまいますし、あえて被せ内で断ち切りにすることもある。

 

そんなときは、玉縁のすんでで刺繍を止めていただければ仕立てには影響しません。

刺繍が玉縁に被ってしまうと玉縁は凸凹になりますが、その前で刺繍を止めてもらえれば玉縁のラインはあくまで真っ直ぐにできるのです。

 

折り返しにするときも刺繍は小口(折り返した厚みの部分)部分までで止め、裏まで回さないというのがベスト。

これは厚みを出さないようにするためなのですが、厚みが出るとそれによって柄合わせがずれてしまうからですね。

 

しかし、これを刺繍師に理解してもらうのはかなり難しい。

これが打ち合わせに時間がかかる理由なのですが、そんな打ち合わせの必要性がわからない方はどんどん刺繍を進めてしまう。

 

このような場合はこちらも腹をくくって、とにかく筥迫の形に仕上げてみた上で、次作られる場合はこうした方がいいですよと提案しすることにしています。

納得して次の刺繍に役立てていただけると、一つこなすごとによい作品に仕上がっていく。

もちろん必ず納得していただけるとは限らないのですが。

 

これが、筥迫の制作には刺繍師と仕立師の連携が必要と言っている所以です。

 

仕立てやすさは仕立て師だけのメリットではなく、仕立てやすい=スマートな仕上がり(出来上がりの美しさ)につながるので、刺繍師にも無視できないことなのです。

 

中山+13の作品は、中山先生と何年もかけて打ち合わせしたこともあり、大変仕立てやすく美しい仕上がりになったと自負しております。

 

 

筥迫の王道は『玉縁仕立て』

 

筥迫と玉縁は切っても切れない関係にあります。

 

とはいっても、折り返し仕立てだから格が下がるなんてことはありません。

お客様から「玉縁で」と指示されても、あきらからに折り返しの方が効果的と思われる場合は折り返しをお勧めします。

より美しく仕上がる方法を考えます。

 

教本で筥迫の玉縁を作る場合は「挟み玉縁」を採用していますが、これは誰がやってもほとんど失敗がなく極細の玉縁に仕立てられるからです。

 

そんな挟み玉縁のデメリットは、何と言っても厚みが出ること。

ただでさえ厚みのある布や、こってりと刺繍が入った半襟などに使うと、とんでもなく分厚い筥迫が出来上がります。

 

そんなことから、厚みを抑えた仕立ての美しさを重視したいのであれば絶対に「縫い玉縁」です。

 

縫い玉縁は表布を折り返さずに玉縁布で包んで、極薄の玉縁布だけで折り返すので厚みは最小限に抑えられるからです。

 

しかし、この縫い玉縁は相当ミシンのスキルがないとできないのですね。

簡単と思われるかもしれませんが、1mmの際を縫っても布や厚紙の厚みで仕上がりは2mm。

これが2〜3mmでしか縫えないとなると仕上がりは3〜4mm。

う〜ん、3〜4mmの野暮ったい玉縁にするぐらいなら、太っても挟み玉縁の方がマシ!

 

仕立ての依頼が来るときは、できれば縫い玉縁で仕立てたいという気持ちはあるのですが、刺繍の仕上がりによっては不本意ながら挟み玉縁で仕立てざるを得ないということが多い(というかほとんど)。

 

縫い玉縁は刺繍する人にも難しく、仕立てる人にも難しい。

 

私は未だに昔のあの美しい玉縁には追いつけない。

でも、いつか、いつかあの筥迫に追いつきたいと夢見て今日も筥迫を仕立てています。

 

 

 

こちらの筥迫は「開き扉」型。

被せを開いて、更にパタパタっと扉を開いていきます。

 

最後の蓋は「針山」になっています。

あくまで裁縫道具入れが好きな私。

 

でも裁縫道具入れなのに「鏡」がついているのはおかしいので、「本来の化粧道具入れにしましょうか?」(ブラシが入るように細長の仕切りを付ける)と中山先生にお聞きしたところ、「針山がかわいいのよ〜」とのこと。

やっぱり女は裁縫道具が好きなのね♡
 

ということで、こちらの筥迫にだけサンプルとして「糸切りハサミ」と「指貫」のセットをつけました。

欲しい方はオプションでお請けいたしますと言ったところ、開き扉をご依頼された全ての方から後日ご注文いただきました。

 

 

オプションはこちらの三点セット。

(この画像は別の筥迫のものです。通常は筥迫の内布とお揃いにします)

ハサミは携帯裁縫用具入れ用の「三条みすや」のハサミでは小さすぎるので、もう少し大きめのです。

糸巻きも入れました。

後は各自何でもお好きな物を入れていただき、是非おもちゃ箱に仕上げてください。

(こんなものを実用できないので、たまに出して楽しんで見るだけのおもちゃ箱という感じです)

 

 

このような型は中に何を入れなくても、蓋や底に中側に刺繍が次々と出てくる仕掛けがあったら絵本のようで素敵だろうな〜と思うのですが、こんな小さな筥迫に相当量の刺繍をすることになるので考えるだに恐ろしい。

まず自分は絶対にやらないだろうけど、仕立ての依頼があったら楽しいだろうな〜と思うだけ。
 

自分だけの宝物を作りたい方、是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

 

江戸型の筥迫は今のところ「一つ口」とこの「開き扉」しかできませんが、この型は如何様にも中を変化させることはできます。

これからもっと楽しい仕掛けを作って、見る人に「あの中どうなっているのか見てみたい!」と言わせるようなワクワク感を感じさせる筥迫を作っていきたいと思っています。

 

 


 

<コピーライトについて

 

以前「転載禁止」などというテキストも入れてみたのですが、意味のあるテキストを入れるのはあまりのも無粋なので、今回は画像にコピーライトを重ねることにしました。

※当ブログの無断転載、無断複製、あきらかな図案コピーは禁止です。画像の取り扱いは十分ご注意ください。

 


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2017.4 中山きよみ+13コレクション(2)筥迫&懐剣『桜』

春なので、中山きよみ+13コレクションの中から『桜』の筥迫&懐剣をご紹介します。

東京はもう散ってしまいましたが、まだ東北や北海道ぐらいなら咲いているんじゃないかと思うのでお許しを。

 

あでやかな赤が全く桜っぽくないので、桜と言われなければ誰も気がつか無さそう。

私も刺繍裂をいただいたときに全く桜だと思わず、配色だけで筥迫房も懐剣房も真っ赤にしてしまいました。

 

タイトルを見て「これ桜だったんだ〜(汗)」と気がついた次第。

でもこれが桜だとわかっていたとしても、ピンクや白は使えないですね。

 

桜は「枝」とか「幹」を入れてしまうと桜の季節限定使用になってしまうけれど、花だけなら日本の花として一年中使えると聞きますし、それで桜っぽくない色にされたのかもしれません。

 

被せと胴締めが同柄になっていても、胴締めには被せより長く上下にスペースがあるので(山と胴部分)、打ち合わせではここをしっかり埋めるようにお願いしています。

 

アンティークの筥迫などでは、被せの下辺に合わせて胴締めの図案が途切れていたりするものが多いのですが、

「刺繍職人と仕立て職人の連携が取れていないな〜」と思ってしまいます。

刺繍は上手いのにやたらと不自然。

 

胴締めの天面まである程度埋まっていると、筥迫全体が装飾されている感じになるので完成度が違います。

 

私がお仕立ての依頼を受けるときは、必ず図案の段階で見せていただいて、筥迫としてより効果的な刺繍の配置を提案させていただいております。

結局、図案にかける打ち合わせの時間が一番長く、また何より大事と思っています。

 

この筥迫では胴締めに白い花がかかっていますが、白い花の下の葉と、天面の赤い花は被せには入っていません。

そういうことです。

 

特に胴締めの「山線」に刺繍が少しでもかかっていると、刺繍に立体感が出ます。

この山線にどのように図案を掛けるかがけっこうポイントだと思っています。

 

着物地で作るとなかなか具合よくはできませんが、刺繍は自分で好きに配置できますから、やはり自分で装飾できる物があると筥迫の楽しさは倍増します。

 

 

中山13コレクションの「巾着」は、このようにけっこう大きな図案がされています。

実はこういうのって仕立て師泣かせではある、、、。

 

ここは巾着の「タック」が入るところだから仕立てが難しいのよ(泣)。

つまり刺繍に折り線をいれなければならないということ。

 

私も以前自分の筥迫で、左から右に流れる数本の葉を刺繍したのですが、タックが入ると刺繍が浮くんですね。

 

仕立てする側とすれば、できるだけ小さなワンポイントでタックに掛からずに刺繍を入れてほしいところですが、刺繍をする人たちにとって巾着の図案は凝りどころ(中山先生はそんな余裕はなかったとは思いますが)。

 

どうしてもタックに刺繍が入ってしまう場合は、できるだけ細かい針目で刺繍するか、もしくは細かく押さえをするとよいでしょう。

 

 

筥迫に赤は当たり前すぎてつまらなく感じる時も多いですが、それでもやっぱり赤を配置すると「赤の力はあなどれん」と思ってしまいます。

 

刺繍裂をいただいたときの印象と、筥迫が仕立て上がった後の印象がガラリと変わることがあります。

今回のように赤が効果的に刺繍を引き立てたときは、仕立て師として「やった!」と思う瞬間です。

 

その驚きを知るのは、刺繍をした人と仕立て師だけ。

すごく役得だな〜と感じます。

 

 



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中山きよみ+13コレクション(1)江戸型筥迫『すずめのお宿』

今回より「中山きよみ+13コレクション」を始めることにしました。

もちろん次々と出すのはもったいなさすぎるので、ちびちびと出していきます(笑)。

 

これはRom筥がケチだからというよりも、このような日本刺繍の筥迫は小さいながら作るのにものすっごく手間のかかる物なので、私としては作られた方々に敬意を表す意味でも一つのものが出来上がる時間ぐらいは十分間をおいて、少しずつ掲載させていただいているというわけです。

 

初登場は、江戸型筥迫(一ツ口)の『すずめのお宿』です。

こちらはご案内はがきでも使わせていただいたので、皆さん的にはちょっと馴染みのある作品かと思います。

 

 

中山先生のブログ「日本刺繍 nui.nui」にも掲載されていますので、都度そちらを追っかけた中からの追記ブログとなります。

中山先生は刺繍の面から、私は主に仕立ての面から攻めてみます。

 

 

江戸型によく使われているのが、この斑(まだら)の玉縁。

江戸時代の筥迫はこの玉縁がお約束でした。

 

筥迫を作り始めた頃から、いつか江戸型を作れるようになったら絶対この斑の玉縁に挑戦したい!という強い憧れを持っていました。

 

そしてやっと今に至るわけですが、けっこうな時間と過程をかけてここまで辿り着きました。

職人さんに断られ、失敗され、お金もかかった貴重な玉縁なのです。

 

でも結局は「自分でやった方がいい」とあらゆる人から言われています。

もうこれ以上、仕立て以外の色々なことに関わりたくないと思っているのですが、なかなかそれも許されない状況ということで。

 

いつか違う色の斑の玉縁が出てきたら、あ〜がんばってんな〜ぐらいに思ってやってください。

 

こちらの型は、江戸型筥迫に一番多い「一ツ口」と私が分類しているものです。

 

被せの下は単純な「箱型」になっていて、上の口から物を入れるようになっています。

その後ろが「紙入れ」という二層式の構造で、それを胴締めでとめます。

 

もう少し高価な物になると、この前側の被せ下が開くような型になっていて、そこに「挿し込み」が付けられ七つ道具が納められていました。

つまり、箱部分が刺し込み面と紙入れ面に挟まれているというかなり複雑な構造です。

 

実は私はこれを文献で知っているだけで、実物をまだ一度も見たことがありません。

徳川美術館あたりに行けば、たぶんそんな筥迫はあるはず。

ただ、中を開いて展示されることはないので、中を見る機会がないのがとても残念。

 

内布は実際には無地が使われていたようです。

挿し込まれた物がある型はそれでいいのでしょうが、一ツ口は型としては単純なもの。

そこで、私は刺繍の邪魔にならないようにかなり慎重に柄物を選んでいます。

 

やはり筥迫はね、開いたときに「わ〜っ♡」と言って欲しいのよ。

そのためには内布の力も必要なのです。

 

 

現代の筥迫は「被せ」と「胴締め」の二面柄合わせです。

すでにそんな作りの市販筥迫も稀となっていますが、江戸型筥迫は「被せ」「被せ下」「胴締め」の三面柄合わせに加え、裏も「背」「胴締め」の二面柄合わせがされているので、仕立て師泣かせの5面柄合わせです。

 

ただし、被せ下は表面と同じ柄を施すのは大変なので、通常はフェードアウトするような感じになっています。

 

しかし中山+13の筥迫はきっちり被せ下も刺繍があります。

この作品の場合は、被せ下と柄が合っているのは右下だけで、その他は違う図案に展開されています。

 

次々と画面が展開する、まるで絵本のような楽しさです。

 

 

そして裏面に雀。

やっと出てきた、主役の雀!

 

正面からあえて見えない部分や、襟に隠れる部分、開かないと見えない部分に象徴的な図案を持ってくるのが懐中物の贅沢な発想。

 

筥迫は展示しても正面の装飾しか見えませんし、身に付けてもチラッとしか見えないもの。

 

しかしその部分だけで、

 

「あの筥迫取り出して見てみたい〜」

「あの被せをめくって見てみたい〜」

「後ろはどうなっているの〜」

「中に何いれるの〜」

 

と思わせることが大事で、その中身の本当の凄さは本人だけしか見ることができないという優越感こそが筥迫を持つ一番の魅力です。

 

筥迫は何と隠微な装身具なのかとしみじみ思います。

 

 

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今後、筥迫画像を扱うブログには、以下の注意書きを載せることにいたしました。

ぜひ一度お読みくださいますようお願い申し上げます。

画像の取り扱い、皆さんにお願い

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金沢 『飾り筥展』レポート その3

金沢『飾り筥』展を離れて、金沢記を書いてみます。

金沢は初めて訪れた地ですが、京都などとは違う、これまた次元の違う文化の街という印象を感じました。

 

ほとんどは会場に詰めていたので、ゆっくり金沢を堪能とまでは行きませんでしたが、これから金沢を訪れたいという人の参考になればと書いてみます。

 

10月14日(金)

つる姫さんと二人で大宮から新幹線に乗り10:00ごろ金沢到着。

 

まずは金沢駅中の名店街『あんと』をリサーチ。

ここだけで、すでにお上りさん気分が上昇するほど名菓が充実していました。

 

私のお目当は、いつも中山先生が東京に来られるときにお土産にいただく、芝船小出の『山野草』。

芝船が有名なようですが、私はこの山野草が大好きです。

 

金沢に行く日が決まってすぐに、講習会の常連さんH.Sさんから「不室屋のランチに行きませんか?」とのお誘いがあり、ホテルや新幹線の予約を取る前に、ここのランチの予約を取ってくださいました(人気のお店なのね)。

私たちはタクシーで向かったのですが、そのタクシーで運転手さんから夜の食事どころ情報を収集。

 

金沢おでんを食べたかったので、会場近隣でオススメの店を聞いたところ、運転手さんからは「三幸(みゆき)」と「あまつぼ」を押されました。

果たして当日予約は取れるのか、、、。

 

H.Sさんとは不室屋前で待ち合わせ。

中の写真は不可だったのですが、なんとも可愛らしいすてきな御膳が並びました。

 

三人とも介護生活なので、年寄りへの贈り物は、甘いものより、カロリーがなく、手軽で、柔らかいものが一番、ということで、お土産用に「玉の麩」を購入。

 

そのまま三人で会場入り。

多くの筥迫関係者においでいただき、ひとしきり筥迫談義。

 

夕方までに集まった、マダムKを含めた面々で夕食時まで近くを散策。

 

旧中村邸の裏側へ回り込むと、この不思議な空間はいったい何?という場所に通じていました。

来館者自らが思索する場として利用することを目的に開設されたという「鈴木大拙館」の敷地に通じていたのでした。

 

 

そのまま、近くのアンティークショップなどがありそうな商店街へ。

東京のアンティークショップとは何かが違う時の流れとマニアックさ。

地元の掘り出し物があるかと思ったのですが、以外とお値段高め。

けっこう東京の方がお安いものなのね、、、。

 

結局、希望していた金沢おでんの「三幸」も「あまつぼ」も予約が取れなかったので、プラス13の皆さんに勧められた居酒屋「長八」へ。

お麩料理と治部煮などを堪能いたしました。

 

さて、私以外の面々は何をお土産に買ったのかと聞いてみると、Eちゃんは地元限定色の糸と糸巻きを、つる姫さんは小さなお針セットを見せてくれました。

そういえば、先に帰ってしまった刺繍職人のH.Sさんも、針を買い占めていましたっけ。

金沢に来てそういうものばかりに目が行く面々って、、、。

 

ホテルはつる姫さんが会場近くで予約してくれた香林坊の「東横イン」へ。

お値段お安めで探してくれた宿でしたが、清潔感もあり、簡単な朝食も付いていて、泊まるだけなら何の問題もなしというホテルでした。

 

ちょうど大相撲の金沢場所期間だったようで、おなじホテルにお相撲さんが歩いていました。

 

 

10月15日(土)

翌日は朝食を食べてすぐに、ホテルの裏手にある「武家屋敷街」を散策。

 

つる姫さん曰く、このあたりの今の時期は 「弁当忘れても傘忘れるな」と言われるほど天気は不安定なようですが、この両日はなんとも爽やかな秋晴れで、気持ちのよい青空が景色に映えて写真日和でもありました。

 

道すがら、おしゃれな外観に引き寄せられ立ち寄ったのは

茶菓工房「たろう」。

おしゃれな和菓子。おしゃれな包装。

な〜んか東京とは違う。

 

軽く21世紀美術館だけ覗いて、兼六園は時間がなくてあきらめ、二日目の会場に向かったのでした。

 

あっと言う間の二日間でしたが、金沢って東京とほとんど変わらないような大都会でびっくり。

ただし、一つだけ違うな〜と思ったことが。

 

それは「自動販売機」が少ない。

 

1分も歩けば次の自動販売機があるような生活に慣れていたので、喉が渇いてどうしよう、と思ったことがない。

でも金沢に自動販売機が少ないんじゃなくて(たぶん普通にはある)、きっと東京が多すぎるんでしょう、、、。

 

 


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筥迫工房の教本や自慢の細工物を、皆さん自身で披露できる掲示板です。写真のアップロードが簡単になりました(一回の投稿で6枚掲載可)。丹誠込めて作った筥迫を大勢の人に見てもらいしましょう!

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金沢 『飾り筥展』レポート その2

金沢から東京に帰ってきました。

たくさんのお客様に足をお運びいただき、黒子としても我が事のように喜んでおります。

 

慣れないipadで撮影したところ、どれもピンボケでちょっと残念ですが、いつか作品を一づつ掲載させていただきたいとは思っておりますので、今回は雰囲気だけ感じていただければと思います(2016.10.15)。

(どうやらiPadのアプリからの更新に対応できていないようだったので、再度画像入れ替えました2016.10.16)

 

この『飾り筥展』によせて、主幹の中山きよみ先生のご挨拶文がありますので、今回は写真を交えながら転記させていただきます。

 

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ごあいさつ

 

本日はご来場くださいましてありがとうございます。

今回の作品展「飾り筥」は、少し大げさに申し上げれば、40年の想いが詰まった作品展になりました。

 

41年前「銀花」(1975年文化出版局刊)に16ページにわたり記載されている言葉に心打たれます。

 

ちょうど同じ頃、ふっくらと、艶やかな絹糸で刺繍された、古い小袖や、筥迫、定家文庫、懐中物、などの嚢ものを、美術館、博物館でガラス越しに見た時、こんなに大事にされる美しい品々を、自分の手で作れたらどんなに素敵だろう、、、と思ったのが、日本刺繍入門の原点です。

 

 

小袖では、実物大では大きくて一般の家庭では飾りにくいので、縦半分、横半分で製作しました。

現在13枚できました!

 


 

小袖と並行しながら、筥迫の夢も追いかけていましたが、お仕立てをお願いする方を探せないまま、30数年が過ぎていました。

 

 

4年ぐらい前、ある方のブログから「筥迫工房」を知りヒットした時、「クイーポ資料館へ筥迫を見に行きましょう!!」の呼びかけを目にして、惹かれる想いで上京しました。

 

 

この時お会いしたのが、今回、筥迫、定家文庫のお仕立てをお願いした「山崎先生」です。

半分、押し付けるようにお仕立てをお願いしてから、4年近く沢山のご指導を頂きました。

 

 

〜筥迫〜筥迫〜と、筥迫と心中するような毎日でしたが、終わってみれば本当に楽しく充実した日々でございました。

 

 

後で分かったことですが、、、。

上記の「銀花」に記載されていた「中村清コレクション」の作品は、「クイーポ資料館」に納められている事を知りました(同じ作品を2度見たことになります)

 


 

41年前の「銀花」と「クイーポ資料館」が、ここで一つに重なり「筥迫工房」へと繋がり、今回の「飾り筥展」へと更に繋がりました。

不思議なご縁で結ばれ、熱くなる思いでございます。

 

 

沢山の方に助けて頂き、日本刺繍「飾り筥」展を催すことが出来ました。

今回、「中山きよみプラス13」とグループ名を付けましたのは、この佳き日を全員で迎える事が出来ますように、、、との祈りでございます。

 

そして今日、この場所で沢山の皆様にお会いできましたことを心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。

 

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このご案内は受付のところに置かれていたものです。

 

「これ是非読んでみて〜」と中山先生に手渡されるまで、接客に忙しくて目を通す暇がありませんでした。

中山先生とももう4年近くものお付き合いになるのですが、改めてこのようなご縁があったことは必然と感じてしまいます。

 

一言で筥迫展とは言いましても、これだけの数を制作し展示することは並の情熱ではできないことです。

 

一般的な日本刺繍の作品展とは違うので、このように小さな展示品だけを展示する方法さえ試行錯誤だったと思います。

一つのテーマを持って、更にこんな小さな作品群の集まりだからこその難しさ。

これは、指導する先生の献身、生徒さんたちとの信頼、長年の理解、そして多くの人の協力がなくてはできなかったことだと思います。

 

改めて、今回の「飾り筥展」の開催、心よりお祝い申し上げます。

 

この規模で筥迫展を開催することは難しいとは思いますが、この作品展を通して筥迫に触発される方が増え、今後他の刺繍教室でも(もしくは他のカテゴリーでも)一点、二点と筥迫が含まれるようになり、一人でも多くの方に、かつて存在していた本来の絢爛豪華な筥迫を知っていただけたらうれしいな〜と小さな期待を持ったRom筥でした。

 

 

そして、こちらは本日の北國新聞に掲載された記事です。

 

(拡大)


飾り筥展は、明日10月16(日)までです。

16:00には終了してしまいますので、お時間にご注意ください。


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金沢『飾り筥展』レポート その1

やっと迎えた、中山きよみプラス13の『飾り筥』展(金沢)。

出不精の私としては、新幹線に乗って遠出をするなんて何年ぶりか。

 

そこで突如問題発生。

当日、ブログを更新したい私は、実はガラケー派(ほとんど外に出ない仕事だからスマホは必要なしとの理由)。

 

でも直前にスマホ持ちになるのは辛い。

ということで、とりあえずiPad+キーボード併用することにし、慣れないブログの更新に挑戦してみました(2016.10.14)。

 

iPadのアプリから画像をアップしたところ、画像が粗々になってしまったので、後日PCから画像を入れ替え、また文章もいつも通り盛りだくさんで更新しなおしました(2016.10.16現在)

 

それでは行ってみましょう。

会場となる金沢の旧中村邸は、こんな木立ちを抜けたところにあります。

 

お!見えてきた、こんな素敵な日本家屋!

入り口に見えるあの見慣れたポスターはもしや、、、びっくり

 

うわっ!あのご案内ハガキの特大版ですよ、、、あせ

もうこれだけで圧倒されます。

 

二階では21世紀美術館の展示もされていました。

 

それでは入ってみましょう。

受付の横に展示されていたのは、刺繍がされた小さな「香袋」と、江戸時代の打掛。

 

初日はたいへんな人出で、これでも人が空いた場所を見計らって撮影しています。

こちらのブースにはミニ小袖が4点。

ミニとはいえ、相当の刺繍量です。

 

そのお隣の一角にも、小さな守り巾着と香袋。

小さいとは言っても10cmぐらいはありますよ。

筥迫の巾着から見るとかなりの巨大版です。


守り巾着は、お宮参りのときに、赤ちゃんの掛け着に付ける掛けるでんでん太鼓や犬張子と一緒に使ったものです。

本来はここにお守りを入れるので、結びは二重叶結びでも「封じ結び」を使います。

実際には中に詰め物をしてしっかりとした形を作りますので、そこにお守りを入れる人はいない〜。

古くは、子供の迷子札(住所を書いたもの)を入れて、兵児帯などに下げていたようです。

 

いよいよ、筥迫の登場です。

こちらは「江戸型筥迫」です。

元祖ともいえる筥迫で、実際に大奥ではこんな大きさの筥迫を懐中していたのですよ。

一つづつ台に乗せられているなんて、なんて豪華、、、。


現代の筥迫は、せいぜい被せと胴締めの二面に柄を配するぐらいですが、江戸型の場合は、被せ+胴締め+被せ下+天面+側面まで刺繍をびっちりと埋め尽くします。

落とし巾着もワンポイントなんてものではなく、しっかりと本体にからめた図案がなされています。

 

その上、今回の作品群のほとんどは、背面+胴締め(背面)まで柄があるのですよ。

(仕立師としては気が遠くなる仕事)

 

刺繍師たちも仕立師も苦労した背面ですが、残念ながらそれを展示で見せることはできないので、今回は背面や内面をモニターで次々とスライドショーにして見せていました。

お客様たちから「こんな風になっているのね〜」という声があがります。

 

作品によっては、このように胴締めを外し、すこし中を見せているものもあります。親切な展示ですね。

びら簪は江戸型に合うように、全て鎖を長く太いものに付け替えています。

 

こちらは壁面を使って筥迫&懐剣セットが展示されていました。

これは私たちの刺繍教室でも展示した方法ですが、垂直に展示すると、びら簪と懐剣房が真っ直ぐ下がることで、実際に花嫁さんがつけている美しい状態で見ることができるのです。

 

こちらは定家文庫です。

床の間に置かれているので、皆さんしゃがんでゆっくりと見ていらっしゃいました。




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飾り筥展 最終納品!

 

先日、金沢の『飾り筥展』の最終納品、定家文庫3点、その他副資材一式の発送を完了しました

 

作品展までほぼ一週間前でのぎりぎり納品、、、。

私にとって、今年明けからの怒涛の半年がやっと終わったのでした。

 

9月中に全てが納品できるはずだったのですが、土壇場になって定家文庫の紐の指定を間違えていたことに気づき、業者さんにお願しまくって超特急で紐を作り直してもらいました。

 

中山先生と生徒さんたちには、こんな時期になってはらはらとした思いをさせてしまい、本当に申し訳ないです、、、。

 

そんな訳で、つい最近まで手元にあった定家文庫をちょびっとだけTOP画像でご紹介させていただきました。

これは房を付けて最後の綴じをするところです。

 

(中山先生のブログ「日本刺繍nuinui」にも先行お披露目の作品が載っていますので、文中にそちらのリンクを差し込ませていただきます)

 

本物はもっと豪華な作品なので、是非実物を見ていただきたいと思いますが、筥迫も定家文庫も、小さな筥に空き間なく刺繍が敷き詰められているものの、立体なので展示して見えるのはせいぜい三面という悲しさ。

 

見えないところに凝る、というのが私は袋物細工の妙だと思っているのですが、作品展ともなるとやはり全部見てもらいたい〜というのが本音です。

日本刺繍nuinui:江戸型筥迫の中のお披露目

 

このような作品を展示する場合、つい方向から見たプリントも一緒に飾りたくなるのですが、それでは筥迫本来の美しさが散漫になってしまいます。

 

私が所属する刺繍教室の作品展では、背面や中の様子はファイルにプリントしたものを入れて見てもらうことにしましたが、この飾り筥展では会場にモニターを設置して、背面や中の画像をスライドショーで流すことにしたそうです。

確かにそれが一番いい展示方法かもしれませんね。

 

今回の作品展では、江戸型筥迫が15点、懐剣付き筥迫が9点、定家文庫4点、それとミニ小袖数点、巾着などが展示されるそうです。

 

筥迫や定家文庫は小さい面積に刺繍がぎゅっと凝縮されているのですが、実際の刺繍面積は帯の刺繍ぐらいのボリュームはあるにもかかわらず、それを飾るとなるとやたらと小さい、、、。

日本刺繍nuinui:守り巾着壁にぶつかる!

 

特に今回の会場である「旧中村邸」は畳敷きの日本家屋で、それも何部屋かに連なった場所に飾られるとのことで(なんと贅沢な!)、そこに小さな筥迫を一つづつ台に乗せて飾られるんだそうですよ。

 

一般的な日本刺繍の作品展を想像して来られた人にはちょっと寂しく感じるかも〜、と中山先生は心配そうにおっしゃっていました。

日本刺繍nuinui:守り巾着のおしり

 

ということで、みなさん、通常の日本刺繍の作品展に行くというイメージではなく、素敵な日本家屋に小さな宝箱のような筥迫が贅沢に並べられている作品展を見に行くんだ!と思って行きましょうね。

日本刺繍nuinui:筥迫!出来上がり

 

最後に、この飾り展を私の個展と勘違いされている方がいらっしゃるようですが、私は単に仕立てのお仕事をいただいただけの黒子ですのでお間違いなく!

主役は中山きよみ先生と、その刺繍教室に通われている13名の生徒さんたちですから!

 

そして秋の金沢は行事が盛りだくさんのようです。

仕立てから解放されて、毎日秋の金沢を妄想しつつ、お待たせしまくっている他のお仕立てに取り掛かかろうと思っております。

 

 

ネットショップお休み

 

この飾り筥展を見に行くため、大変申し訳ありませんが10月14日、15日はショップをお休みさせていただきます。

 

10日〜13日までにご注文の方は、初回のお客様であっても先に発送(後払い)させていただきますので、どうぞご注文はお早めに。

両日ともショップは開けておきますが、ご注文を受けるのみで、返信などは一切できませんのでご了承ください。

 

私がお仕立ての依頼を積極的に受けられない理由は、ひとえにこのネットショップの存在があります。

 

私の仕事は、注文を受けての仕立てや、講習会、教本作りやブログなどがメインと思われがちですが、実は最も時間を割けなければならないのがネットショップの対応なのです。

 

日によっては発送作業に一日潰れることもあり、最近は扱う物も多くなってきたので、ひんぱんに在庫が切れる→発注、などの手間は本当にばかになりません。

 

 

また、7〜8年ブログを続けているおかげで、ネットで筥迫と検索すればすぐ出てくるようになりました。

始めたばかりの頃は、検索ページを10ページぐらいいかないと出てこなかったのになぁ(遠い目)。

 

しかし、様々な部品でウンチクを書いているせいで、全く違う畑の人がそのキーワードだけで直接商品ページに来るようになってしまいました。

そうなると、今まで思いもよらなかったトラブルが続出するようになり、最近はその対応が地味に辛い(泣)。

 

筥迫目当ての人は、ブログからやってきたり、まずトップページを経由して来てくれるので、このショップは筥迫用の材料専門なんだなとか、筥迫の部品に使うものなんだなとか、手作り対象の品揃えなんだなとか、当たり前のことですが理解した上で購入してくださるので、まずトラブルにはならない。

 

トラブルになりやすいのは、全く違う用途で使おうとする方々。

こちらも何に使うかわからないので、免責事項も書けないし。

 

最近は「タッセル」目当ての方も多く来られるのですが、筥迫の部品は一つの色を増やすと4つの部品で同色を揃えなければならということもあり、一種類のものを大量に在庫することはできません。

 

だから在庫が少ないと文句を言わないでくれ、、、(ここは紐屋でも房屋でもないんですから)。

 

ネットというものは、とても便利でとても面倒なものだと改めて感じます。

 

 

最近は、商品によって問題が出やすいものはさっさとショップから削除してしまうので、実はあるけれど売っていないもの、というのもあります。

 

色もねぇ、手元にはあるけれど売っていないものもあったりするのですが、追加したり変更したりしている暇がないのよ、、、。

一つ直すと他の材料で影響することも多く、忙しいとなかなか頭が回らないこともあって。

 

ネットショップのデザインもちゃんと作ればもっと売れますよ、とも言われるのですが、正直なところ、これ以上お客さんが増えると困るという状況なので、よくわからない、目立たないショップであることに存在意義があるのです(苦笑)。

 

でも、あまりにも対応できなくなってきたら、もしかしたら一時的にショップを閉じる時が出てくるかもしれません。

だからお手元にはなるべく材料のストックはしておいてくださいね。

 

すごい適当な運営で申し訳ないのですが。

そろそろバイトか内職してくれる人を近所で見つけねばとも考えています。




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筥迫工房の教本や自慢の細工物を、皆さん自身で披露できる掲示板です。写真のアップロードが簡単になりました(一回の投稿で6枚掲載可)。丹誠込めて作った筥迫を大勢の人に見てもらいしましょう!

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