『筥迫工房』のブログ 筥迫の作り方と材料の販売 筥迫!箱迫!箱セコ!ハコセコ!はこせこ! 管理人:Rom筥
 
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『房』について<その2> 〜撚り房と切り房〜
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    またまた房のお話です。
    あいかわらずの地味ネタで、更にあいかわらずの長文、読んでくださる皆さまには、ホントご苦労さまと言いたいです(苦笑)。

    一般的に房というものは、専門の職人さんによって作られます。
    「房職人」「房師」など、いかにも専門職らしい響きがあります。
    しかし、量販品の七五三筥迫、婚礼用筥迫に使われる房などは、たぶん99%(もしかしたら100%)は海外で作られているかもしれません。
    筥迫工房で販売予定の市販房も、撚り糸部分は中国で、組み立てだけ日本で行なわれるとのことでした。
    そうなると、どこまでを本物の房職人というのかは難しいところがあります。
    たぶんそんな現象は、どこの職人の世界でもおこっていることとは思いますが。

    房と言いましてもその種類は多く、職人さんによってそれぞれ名称も違うと思います。
    更には西洋風のタッセルとも異なります。
    あくまでも、筥迫周辺の房に限定したテーマとご理解ください。

    房というものは「紐」と一体になってこそ成り立つものです。
    紐と房の最も単純な形は「帯締め」などの形にみられるように、紐の先端をほどいただけの、紐と房が同化した形です。

    一方、房を豪華に見せるために、房だけを単独に作って紐に付けるものを「足し房」と言うそうです。
    より装飾性を高めるために「頭」を付けたものが一般的です。
    これを「房頭」といいますが、芯を入れないものと、芯を入れたものがあり、使う芯の種類によって「木芯」「紙芯」と呼ばれるようです。

    この芯を使う房の代表に『撚り房(よりふさ・よりぶさ)』と『切り房(きりふさ・きりぶさ)』があります。



    上が筥迫工房で作り方を解説している「切り房」です。
    下が市販の筥迫で一般的に使われている「撚り房」です。
    この二つの房は、実際にアンティークの筥迫に付いていた筥迫房です。


    ◆撚り房(よりふさ)

    撚り房とは字のごとく、糸を撚ってある房のことです。
    糸の先が小さなループ状になっているのが特徴で、「撚返し房」とも呼ばれます。



    撚りを返す=ほつれない、つまり耐久性があるということです。
    撚り返し房は何十年でもそのままの形を保つことができるというのが最大の特徴です。

    房頭は同色の糸でかがり編みをして房頭を包み込んでいます。
    芯には金の紙が貼ってあるので、編み込みの間から薄っすら金が除きます。
    日本人にとってはあまりにも見慣れた形状ですが、あらためてよく見ると、先人たちはよくもまぁこんな面倒くさい意匠を考えたものだなと思ってしまします。

    実はこの撚房には、とても似た形で2つの種類があります。
    使われている芯の形が違います。


    左は筥迫や一般的な房に使われる撚房です。
    土台となる芯にくぼみがあり、そこで糸の処理を行ないます。
    仕上りはウエストをギュッと締めて腰が張ったようなグラマラスなプロポーションです。
    ここでは比較しやすい房を探しましたが、実際にこの形状が筥迫房というわけではありません。
    あえて筥迫房と定義づけるとするなら、この木芯に紅白の糸(+金)を使った意匠のことをいうかもしれませんね。

    対して右は、『数珠房』『念珠房』とよばれるものです。
    長細い房頭の中から真っ直ぐに房がおりてていて、なんだか長細いキノコのようなプロポーションですね。
    最近は色々なパワーストーンを使って自分で念珠を作られる方も多いので、念珠房は色数が揃っています。
    ほんとうらやましい限りです。

    昔、この房の違いがわからなくて、嬉々として色々な念珠房を購入して使ってみましたが、いざ付けてみると何だか雰囲気が違う、、、。
    房頭の形状も細長、丸形、平丸形と微妙に違うので、筥迫房に近いものもありますし、念珠房の頭を使って、下芯に紐を巻いて何となくスカートを広げている筥迫房もありますので、何が正しいというものではないのかもしれませんが、筥迫に付けてみると、やはり念珠房は違和感を感じます。
    使うものの性質によって微妙に芯の形が違うというのも、いかにも日本人らしいこだわりかもしれませんね。

    ◆切り房(きりふさ)


    切り房はまず房を仕上げてから、最後に希望の長さに切って作ります。
    文字通り、これが「切り房」です。


    切り房の頭は、芯に単純に房糸をかぶせた形です。
    糸をそのまま切りっぱなしにしているので、時間が経てば糸の先がほどけてくるため、撚り房に比べて耐久性は劣ります。
    しかし、切り房の最大の特徴はその「しなやかさ」です。
    切り房に比べると、撚り房は「ごっつい」という表現になるかもしれません。
    房を持った時の感触で言えば、圧倒的に切り房に軍配があがるでしょう(安価な撚り房はまるでプラスチックのようにギシギシしています)。

    わたしがサンプルで集めた多くの筥迫は、ほとんどが撚り房を使っています。
    そんなことから、筥迫には撚り房!という先入観があり、当初はしかたなく、代替え品として切り房を作っていました。
    そんなとき、ふとしたことで切り房を使ったアンティークの筥迫を入手しました。
    初めは筥迫にばかり目が行っていたので気がつきませんでしたが、この切り房に気がついた時に、いわゆる「目からウロコが落ちた」と感じました。
    そのぐらい美しいと思ったのです。
    それが画像の切り房です。
    写真ではわかりにくいかもしれませんが、今までの自分が適当に作っていた房と比べると(比べるのも恥ずかしいほど)雲泥の差です。
    後にも先にも、いかにも職人が作った切り房の筥迫房を見たのはこれだけです。
    更には、芯は「紙芯」を使っています。
    この頃は、日本で、職人の手で、筥迫の房が作られていたんでしょうね。
    その後、私の房の師匠はこの切り房になり、これを真似して真似して今に至っています。

    切り房は使用頻度によって糸の先端が多少ほずれはしますが、サラサラの手触りがなんとも言えません。
    筥迫の胸元で涼やかに揺れる様がなんとも美しいです。
    撚房を自分で作るには、それこそ専用に教本を作らなければならくなりますが、切房なら誰でも作ることができます。
    では先端がどうしようもなくほずれてきたら?
    そこは自作筥迫の良いところで、いくらでも作り直すことができます(笑)。
    まぁ筥迫は念珠のような使い方はしませんから、そこまでひどくほずれることはありませんのでご安心ください。

    ちなみに、このアンティークの切り房、買ったときのボサボサのまま保管していました。

    撚り房も材質によりヨレヨレになることがありますが、ここまでひどくはならないでしょう。
    でも、どんなにボサボサの切り房だって蒸気にあてればこの通り。

    蒸気にあてるときは、筥迫房が小さいからといって少しのお湯では満足な蒸気がたちません。
    ある程度たっぷりのお湯でモクモクに湯気をたててくださいね。

    このように、どちらの房を選ぶかは、それを使う目的、頻度によって分けることができるでしょう。
    【2011.08.11 Thursday 15:50】 author : Rom筥
    | 筥迫材料-飾り房 | comments(3) | trackbacks(0) | - | - |
    この記事に関するコメント
    房によってこんなに印象が違うとはびっくりです。私もネットで念珠房を見つけて、同じ?でもなんか違う???と思っていました。
    筥迫工房で販売予定の房は撚り房なんですね。懐剣袋用にも使用できますか?
    | SONO | 2011/08/12 10:39 AM |
    質問を何回にも分けてしまって申し訳ありません。
    一般に見られる懐剣袋の房は撚り房ですけれど、切り房で作ったらおかしいものでしょうか?
    というのは、以前作った筥迫の房が切り房でしたから、それよりはボリューミーに作れば懐剣袋と筥迫がお揃いになるのではないか、と思いついたもので。
    どうぞアドバイスをお願いいたします。
    | SONO | 2011/08/12 12:28 PM |
    SONOさんお久しぶりです、こんにちは。

    SONOさんは、『婚礼用和装小物の作り方』をお待ちいただいているお一人でしたね。
    今、必死で追い込みに入っているところですので、もう少々お待ちくださいね。
    早くて8月下旬、遅くても9月中旬までには何とか発売に持ち込めそうです。
    もしそれでは間に合わない!とおっしゃるのであれば、内容はすでにできていますので、個人的に対応させていただきまので、直接御連絡ください。

    筥迫と懐剣を持つのであれば、やはりどちらもお揃いにした方がよいでしょう。
    撚り房にしたいのであれば、どちらも撚り房、切り房ならどちらも切り房というように。

    懐剣房に切り房はとてもすてきですよ。
    今回の『婚礼用和装小物の作り方』は、筥迫の切り房に合わせて、切り房をみっちり解説しています。
    筥迫のように簡易の房ではありません。
    私が最も苦労して研究した房です。
    ハンマーも使いますよぉ(笑)。
    とっても面倒ですが、筥迫ができたときぐらいの達成感はあると思いますので、是非挑戦してみてください。

    それから、末広用の房も『筥迫の作り方』に追加しました(末広も単体で発売いたします)。
    こちらは近々改訂版がでます。
    懐剣房があまりにも本格的に作るので、筥迫房がかなり見劣りしてしまう、、、ということで、もう少し詰めた筥迫房の作り方に改訂しております。
    SONOさんのようにすでに教本をご購入いただいている方には、改訂内容のPDFを送るという形になると思います(あくまで希望者のみです。後日改訂のお知らせをいたします)。

    新しい教本の発売、婚礼用小物の材料の開拓、仕入れ、筥迫の作り方の改訂、、、これらを同時進行しているので、なかなか思うように進みませんが、あともう少し待っていてくださいね!
    | Rom筥 | 2011/08/12 6:16 PM |
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