『筥迫工房』のブログ 筥迫の作り方と材料の販売 筥迫!箱迫!箱セコ!ハコセコ!はこせこ! 管理人:Rom筥
 
<< 実用筥迫 Rom筥作品12-1 〜二つ折小被付筥迫〜 | main | 『打ち紐』新色ご紹介 >>
筥迫(はこせこ)とは
0
    今更ながらですねぇ(笑)。

    筥迫(箱迫 函迫 函狭子 はこせこ ハコセコ)とは、七五三や和装の花嫁が胸元に入れている、薄い箱型の装身具です。
    筥迫全盛時代(江戸中期〜後期)でこそ「小物入れ」でしたが、時代とともに帯の形状がかわり、着付けも変わっていったことにより、現代では懐紙さえも入らない、実用を離れた装身具(アクセサリー)となっています。

    和装の花嫁が持つ筥迫には、「身だしなみを整える」「成人女性のたしなみ」という意味があると解説されていたりもしますが、これにはちょっと裏がありそうです。
    筥迫がなぜ筥迫が現代の花嫁衣装に用いられるようになったのか『婚礼用和装小物の作り方』(教本)に私なりの考えを述べています。
    ご興味のある方は、是非懐剣入れを作ってください(笑)。

    江戸時代の装身具というのは、その人の身分や格式を明確に表わすものでした。
    現代のように、猫も杓子もブランドバックを持つ、なんてことはありえなかったんですね。
    中でも筥迫は、それを持てることがすでにステイタスでした。
    大奥でいえば「御目見得(おめみえ)以上」、武家でいえば「中流以上」、商人でいえば「豪商級」の婦人という、ごく少数の上流階級の女性のみが持つことができました。
    筥迫を胸に入れて人目のつくところを歩く、、、それがどのぐらいの優越感だったか容易に想像がつくというものです。
    現代なら、成人式などで筥迫を胸に入れて歩けば、きっとこの気分を味わえると思いますよ(笑)。
    (↑目立ちたいなら「びら簪」は必須です!)

    また筥迫は「化粧ポーチのようなもの」と説明されることが多いのですが、私はどちらかというと「クラッチバックのようなもの」ではないかと思います。
    クラッチバックというのは、紐のない、抱えて持つバックの総称です。
    中でも女性用のクラッチバックと言えば、最も華やかな場で持つ、装飾重視の(あまり物が入らない)小型のバックというイメージです。
    日本でクラッチバックがあまり流行らないのは、パーティーが少ないからだそうです。
    今では「よそいき」というような服を着る場も少なくなってしまったような気がします。

    古来より日本では、袋を手に下げて持ち運ぶという習慣がありませんでした。
    意外に思われる方も多いかと思いますが、手提げ袋文化の全くなかった我が日本に、初めて登場したのが「信玄袋」で、それでさえ使われるようになったのは明治の終わり頃です。
    何か物を携帯するときは、掛ける、(帯に)下げる、懐中する、背負う、(風呂敷を)抱える、という具合です。
    ※筥迫だけでは必要なものが入らないので、「袂落し」と併用したようです。

    そういう意味では、着物は大きなポケットがたくさんあるようなものですね。
    着物に似たブータンの「ゴ」(男性用民族衣装)は、お腹のあたりに本などを入れて持ち運べるほど実用的です。
    着物のような形は、帯を下に巻きさえすれば、けっこう何でも入りそうです。
    江戸の人々は、もっとゆったりとした着物に、小さな嚢物を入れて持ち運んだんですね。

    江戸と明治を挟んで、筥迫の価値は異なります。
    江戸の頃の筥迫は、依頼主の好みをふんだんに盛り込んだ完全オリジナルの一点物として作られ、材料、装飾は最高級のものが使われました。
    そういう意味では「クラッチバック」というイメージです。
    大政奉還後は、お得意先の大奥や大名家を失い、筥迫も一次影をひそめたと思いますが、明治30年代に再び流行が訪れます。
    流行の中心は山手の令嬢たちでしたが、芸妓社会にもその流行は及んでいたようです。
    限られた上流階級を相手にしていた時代と違い、広く多くの顧客に対応したのでしょうから、同じ型やデザインで効率的に仕上げた既製品へと移行していったのだと考えられます。
    そうなると、この時代の筥迫は「おしゃれな化粧ポーチ」といえるかもしれません。

    西洋文化が怒濤のように押し寄せた明治以降、かつての嚢物職人たちは、次第に西洋式の袋物(バック)を作るようになっていきました。
    現代でも、和装のときに使うクラッチバックは、筥迫の作り方をまねて作られたものなんだそうですよ。
    たぶん、あのたくさんの襠が折られた(アコーディオンのような)バックのことなんでしょうか。
    よく見れば、大型の筥迫に見えなくもない、、、かな?
    筥迫の材料を探しまわって、どこにもない!というような時、最後に行き着いた皮材料のお店で見つかったりすることが多かったので、やはり筥迫はバックとつながっているなと感じたものです。

    私としては、いつかクラッチバック級の特別な筥迫を作りたい、、と思いを馳せる毎日です。
    【2012.02.21 Tuesday 23:05】 author : Rom筥
    | 筥迫の使い方 | comments(6) | trackbacks(0) | - | - |
    この記事に関するコメント

    私にとって、Romさんが作る「はこせこ」はクラッチバッグのように立派なものだと思います!

    ようやく完成しました〜〜♪
    いろいろ曲がって下手くそですけど。。。

    結婚式が終わったら、改めて写真を送付させていただきます。
    いろいろとありがとうございました。


    あまりにも嬉しくて、ブログに載せちゃいました。
    今回も、勝手に画像をお借りして申し訳ありません。。。

    | oku | 2012/02/24 9:00 PM |
    Okuさま>

    ついにできましたか〜。
    しかし、針を3本折るとは、、(いったいどんな使い方を、、)
    もしかしたら、細いきぬ針なんかを使ってしまったんでしょうかねぇ。
    しかし、できてしまえばいいのです。
    これで心おきなく結婚式を迎えられますね!
    結婚式が終わりましたら、写真楽しみにしています。

    okuさんのブログわかりにくかったので、ご覧になりたいかたは
    どうぞこちらへ!↓
    http://blog31738.stylful.jp/hanayomekiroku/2012/02/182-42d9.html#more
    | Rom筥 | 2012/02/24 9:40 PM |
    Romさん、
    突然すみません、コメントで失礼します。

    この間手に入ったもので、筥迫っぽいものであって(私のブログに写真が載ってますが)、最初はアンティークの筥迫かと思ったのですが、江戸時代の古いものを調べても今の筥迫と形が変わらないのでやっぱり違うかと、、、
    それでネットで筥迫について調べたらこちらのブログに来ちゃいました。

    人によると、筥迫は花嫁さんの衣装のみの使い方でしたと言う意見の方も居ますが、こっちのは筆に紅がついてたので絶対使われてると思います。Romさんのブログを読んだらやっぱり思った通り、当時は普段でも高級な化粧品ポーチやクラッチとして、飾りだけではなく、花嫁さんの衣装だけではなく、使われてたということですかね?ご意見頂ければ嬉しいですo(*&#186;▽&#186;*)o
    | 秋乃 | 2017/01/17 12:26 PM |
    秋乃さん

    ブログ拝見いたしました。
    「携帯化粧道具入れ」のことは秋乃さんのブログに返させていただきますね。
    | Rom筥 | 2017/01/17 3:16 PM |
    Rom筥さん、
    質問にお返事頂き、本当に有難うございます!!とても嬉しいです!
    何回か自分のブログでそれに返事してみたんですが、なぜか勝手にカットされちゃうのでこちらでコメントします、、、


    私は少し勉強不足で、いくつか質問ありますがよろしいでしょうか?

    「毛抜」その時代に毛抜きもあったんですか??

    「小刀」
    「鋸(のこぎり)」
    「錐(きり)」
    この三つはどんな道具でしょうか?ネットで画像検索してもよくわからないので、、、その中でネイルファイルみたいなものも入ってますでしょうか? (もし道具のことブログにすでに書いてあるのであればすみません、まだ全部読み切れてないのです、、、)

    どこかでその江戸時代の大奥で使われていたようなはこせこの絵や写真どこかみれたりしますか?

    そして、その小袋の写真や、Rom筥さんが持ってるはこせこの写真見せて頂けますでしょうか?とても興味深いです!!

    ちなみに私が持ってるセットには、後ろに水銀鏡も入っています。


    もし、このセットで抜けてる道具を揃えようと思ったら、やっぱり単独で見つけるのはかなり難しいことですよね?足りない道具を自分で作くるのは無理かな?


    そして、ブログにリンクを貼っていただければ画像を使っても構いません!

    最近自分で日本髪を頑張って結ってるのでちょうどこういう携帯用ンお櫛が欲しくて、このセットに出会いました、、
    Rom筥さんのお言葉はとても嬉しいです!!
    大切に使います!!
    | 秋乃 | 2017/01/18 10:06 PM |
    秋乃さま

    私のお道具は揃いの内容から、秋乃さんのお道具より古いものだと思うので、明治時代ぐらいかもしれませんが、「毛抜」はあったと思いますよ。

    それから「水銀鏡」は入っていますが、ネイルファイル(爪磨き?)なんてハイカラなものは入っていません。
    すごく微妙な時代の違いですが(笑)。

    江戸時代の筥迫は、歴博画像データベースの「資料名称」に「筥迫」と入力すると、当時の筥迫を見ることができます。
    維新以降は現在の筥迫の形でほとんど変わりはありません。

    このお道具のことはコメントでは書ききれないぐらい興味深いものがありますので、いつか掲載したら必ずお知らせいたします。
    | Rom筥 | 2017/01/18 10:47 PM |
    コメントする









    この記事のトラックバックURL
    http://rombako.hakoseko.mods.jp/trackback/981727
    トラックバック