『筥迫工房』のブログ 筥迫の作り方と材料の販売 筥迫!箱迫!箱セコ!ハコセコ!はこせこ! 管理人:Rom筥
 
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嚢物とハンドバッグ
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    先日、教本を買っていただいた「とんぼさん」から、ご自身のブログ「ほばーりんぐ・とと」で筥迫について書いたとのご連絡をいただきました。
    常日頃から筥迫を調べて色々なサイトを巡っているので、こちらのブログは過去何度か訪れたことがあるのですが、そんなところから反対に連絡をいただいたりすると不思議なご縁を感じます。
    筥迫の輪が広がっているようでうれしいですね。

    嚢物の世界』(平野英夫著/1998年発行)をお持ちと書かれていますが、これは嚢物に興味のある人なら一度は目を通したことがあるだろうという有名な図録です。
    ため息の出るようなコレクションがたくさん載っていますが、お値段もまたため息が出るような豪華本なので、私はもっぱら近所の図書館に通うことで満足しています。

    ブログの中で、筥迫のような「筥(はこ)」が「嚢(ふくろ)」であることを疑問に思われていたようなので、これをブログでリレーしてみましょう。

    「嚢」と「袋」は、訓読みではどちらも「ふくろ」ですが、音読みでは「嚢=ノウ」「袋=タイ」と異なります。
    同義語ではあるけれど、旧漢字というワケではないんですね。
    さらには「嚢」と音訓も同じで、ぱっと見も区別がつかない「囊」という漢字も存在します。
    いや、ぱっと見どころかじっと見ても違いがわからないので拡大してみます。

    真ん中あたりが「ハ」か「口口」かという違いです。
    嚢物は「ハ」の方で、土嚢(どのう)や氷嚢(ひょうのう)がこの字です。
    「口口」の方は、胆囊(たんのう)などの臓器系に使われているようです。
    前出のブログのコメント欄に、“医師曰く「囊は中に何かが詰まっている状態の袋のこと」(sariさん)” とありました。
    カンタンに出し入れできるだけが袋じゃないんですね〜。納得!

    以前「はこせこはどう書く?」にも書きましたが、「ハコ」にも多種多様な漢字があるのですが、現代ではそれをひとまとめにして「箱」にしているのと同じことなのでしょう。
    ちなみに「衣嚢(いのう)」という言葉がありますが、これは衣に付いている嚢で「ポケット」のことなんだそうですよ。


    それでは、ここから本題の嚢物に入りましょう。
    「嚢物」とは、身の廻り品を持ち運ぶための入れ物の総称です。
    現代人の感覚では、「袋物」というと手提げ袋や巾着などの柔らかくて簡易な入れものをイメージしがちですが、日本では本来、広い範囲の袋一般に使われていました。
    武具や調度品の保存袋、茶器等を保存するための
    仕覆、携帯するための煙草入れや筥迫、紙入れ、鏡入れ、巾着、お守り袋などです。

    それでは
    「鞄」も袋物かと言えば、実はこれは「かばん」なのですね。
    平成22年、東京鞄協会と東日本ハンドバッグ協会によって「日本鞄ハンドバッグ協会」が発足しました。
    これが業界で“大事件”であったことからも、この二つのグループが日本で違う道を歩んで今日に至ったことがわかります。

    総務省の日本標準産業分類では、これらは「製造業」の中の「なめし革・同製品・毛皮製造業」に属し、
    かばん製造業」と「袋物製造業」に分類されています。
    さらに袋物製造業は
    袋物製造業(ハンドバッグを除く)」と「ハンドバッグ製造業」に分類されています。
    実はこのハンドバッグ業界の成り立ちこそ、袋物(特に筥迫)とは深いつながりがあるのです。

    袋物製造業は、嚢物煙草具を扱う組合がルーツとなっていて、煙草入れや紙入れなどを作る専門の職人たちの集まりということがわかります。
    これらの職人たちが、西洋式の袋物を作るようになったことは自然な流れでした。
    そして袋物である筥迫の「貼りこみ技法」から、つかんでもつタイプの抱え型バッグが考案され、これがハンドバッグのルーツになったそうです。(※ちなみにハンドバッグという名称は日本固有のものです。)

    対して「鞄」は、杞柳細工の行李職人が、西洋のトランク型を模した「杞柳製箱式行李かばん」を作ったのがルーツだそうです。
    「かばん」も「ハンドバッグ」も、西洋のものをそのまま複製するのではなく、日本の伝統の技を絶対的な基礎とし、その上に好奇心を持って新しい物を取り込み、より高度なものを創り出していく。
    この日本人の誇るべき精神は、今も昔も変わりません。

    ちなみに「袋物製造業(ハンドバッグを除く)」は、主に「財布」とのことです。
    筥迫は紙入れが進化したものですが、紙入れとは紙だけを入れるわけではなく、薬や楊子、お金も入れたので、今でいう財布でもあったわけです。
    実用筥迫でも、使い勝手がよく改良を加えていくと、結局は今時の「財布」の形になってしまいます。
    昔ながらの袋物らしさを出すためには、ちょっとばかし使い勝手の悪さを残すぐらいがちょうどよいかもしれません(笑)。


    現代では、形がしっかりして崩れないものを「箱」、柔らかく形状が変化するものを「袋」と分類しているようですが、「物を入れる」「出し入れのための口がある」「保護する」「持ち運ぶ」という意味においては同じです。

    もう少し細かく分類すれば、

    「箱」という漢字は、物を保護するための要素が強く、
    「筥」という漢字は、そのもの自体に価値があったり、装飾の要素が強い。

    「鞄」は比較的大きなもので、実用の要素が強く、
    「ハンドバッグ」は小さなもので、ファッション的な要素が強い。

    なんとなく、筥迫が嚢物であることのイメージがつながりましたでしょうか。






    あ〜疲れた、、、、。



    《参考》
    太田垣の鞄のリンク集(Japanbag.com) 
    東京鞄・ハンドバッグ業界共催合同暑気払いパーティ(2010/8/29)
    日本標準産業分類の中の鞄産業
    有限会社ACAハセガワ ハンドバックとは
    ・東京袋物商工協同組合 著者:佐藤咲子 袋物の歴史
    日本ハンドバッグ協会「GOLD BOOK」日本でのハンドバッグ
    ウィキペディア 鞄 ハンドバッグ(handbag)
    日本繊維製品品質技術センター ミニ博物館めぐり「袋物参考館」
    袋物参考館
    【ハンドバッグ製造業】業界動向/マーケティング情報
    参考:漢字考「のう」
    【2012.07.13 Friday 13:42】 author : Rom筥
    | 筥迫の使い方 | comments(2) | trackbacks(0) | - | - |
    この記事に関するコメント
    とんぼです。
    こちらこそ、ご紹介と、素敵なご縁をありがとうございます。
    またまた書き足すことが見つかりましたので、
    字のことなど、書かせていただこうと思います。

    「鞄」も「箱」もほんとうに、いわれてみればの
    的確な「違い」ですね。
    鞄の文化は新しく入ってきたから、当時の人たちも、
    一生懸命知恵を絞ったのでしょうね。

    犬筥には、いつ出会えることやら…ですが、
    いつか見つけたいと思っています。

    筥迫の「生地」がまだ決まりません。
    あまり柄が大きいと、いいところを出すのが難しいし、
    柄がよくても、もう少しシボがあるといいなと思ったり。
    とても楽しく、悩んでおります。
    | とんぼ | 2012/07/13 7:54 PM |
    こんにちは、とんぼさん。

    私も知らないことがまだまだありますので、
    皆で調べ合って筥迫のナゾを追求したいですね。
    今後ともご協力お願いいたします。

    「犬筥」かわいいですよね!
    我が家では一年中玄関の飾り棚で番犬してくれています。
    そのうち、刺繍教室の仲間が作った「狛犬」の筥迫ができます。
    こちらもとってもかわいいです。
    ブログに載せてもいいとのことなので、そのうちお目見えいたします。

    筥迫作り是非がんばってくださいね。
    | Rom筥 | 2012/07/13 10:17 PM |
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