『筥迫工房』のブログ 筥迫の作り方と材料の販売 筥迫!箱迫!箱セコ!ハコセコ!はこせこ! 管理人:Rom筥
 
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日本刺繍の筥迫 江戸型『稲穂雀』
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    装 飾:日本刺繍『稲穂雀』(製作:矢部博子)
    仕立て:江戸型筥迫(一つ口)平肉、玉縁(製作:筥迫工房)
    打ち紐:正絹、唐打ち紐(十印)
    緒締め玉:天然石(琥珀)
    びら簪:アンティーク
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    矢部博子先生が刺繍された江戸型の筥迫です。

    新宿伊勢丹での展示販売でいくつかは売れてしまったのですが、こちらは運良く残ってくれたので、ブログでご紹介させていただくことができました。

    以前も書きましたが、江戸型というのはそのような名称が一般的にあるのではなく、明治維新を挟んで筥迫の型が大きく変わってしまったので(特にサイズ)、現代の型と区別するために私が便宜的に付けている名称です。

    以前、この型を再現してみたときは、この型を現代で使うことはないので、あくまで興味本位で始めたことでした。
    (正確には、歌舞伎の舞台ではこの大きさのものが使われている)

    しかし、これが意外と需要がある。
    一体どんな人に?

    それは日本刺繍をされている方々です。

    現代版の筥迫は、刺繍をするには「小さすぎる」。
    というよりも「作品にするには小さすぎる」ということです。



    通常の筥迫は「被せ&胴締め」の二面柄合わせですが、江戸型の場合は「被せ&胴締め&被せ下」の三面柄合わせをします。



    もっと本格的に作るならば、背面も柄合わせをするので「被せ&胴締め(表)&被せ下」に「胴(背)&胴締め(背)」を合わせた五面柄合わせになります。

    この型の難しさは、形をつくることよりも柄合わせをする難しさにつきます。
    柄合わせが三面以上あると、刺繍をする人の糸の締め方や刺繍の歪みがあるので、型(接着芯やホットメルト紙)通りに仕立てることはできません。
    ほとんどアタリだけを付けて、その場で微調整しながら貼り込んでいきます。

    筥迫は前部分は箱襠の付いた物入れ、後ろ部分に紙挟みのついた二部式で、これを胴締めでまとめます。


    江戸時代から受け継がれているこの形状が、筥迫という不思議な単語と共に人々の心に焼きつくのかもしれません。
    (特に小さい頃にこの意匠を見て強烈な印象を持つ人が多い)


    そして江戸型の最大の特徴は、この大きさと側面の「箱襠」の存在です。
    これが筥迫の「筥(箱)」たる所以ですね。


    現代の筥迫(縢襠付筥迫)は全体的には江戸時代の筥迫の雰囲気が残っていますが、実際にはこのこの箱襠部分が省略されているので、「どこが箱?」と思われるのも当然のことです。

    以前、私が作った「開き扉」は、当時の筥迫の中を実際に見たことはなかったので、あくまでも空想の中の型を具現化したものでした。

    その後筥迫の中を見る機会は増えたので筥迫の謎に決着が着きましたが、江戸型で最も多いのは、今回の筥迫のようにただ箱に被せが付いただけの単純なものでした。
    私はこの形を便宜的に「一つ口」と呼んでいます。

    ただ、記述として残っているものには「三つ折り」「差し込み」があったそうです。
    たぶん地位が上の人たちはそのような凝った仕様のものをお金をかけて作らせ、そのもうちょっと下の地位の人がこのような一つ口を使っていたのかもしれません。
    とは言っても、筥迫を持てるというだけで相当の地位かお金持ちなんですけどね。


    正面、背面の柄合わせとは別に、巾着のように箱襠部分にもワンポイントを施します。
    これがまたかわいいmoe

    ここは通常柄合わせはされていないのですが、このぐらいの厚みがあれば柄合わせも可能ですよね(誰か挑戦してください)。

    立体と空間を感じさせる、帯や着物のように平面を対象とする日本刺繍にはかつてなかったような作品作りをすることができます。


    巾着のワンポイントは「俵」です。
    巾着は何といっても筥迫のmoeポイント。
    筥迫刺繍をしようと思ったら、このmoeポイントは手を抜いてはいけません。



    玉縁は筥迫の妙

    今回、仕立ての面での特徴といえば「斑暈しの玉縁(まだらぼかしのたまぶち)」を使ったことです。
    美術館などで当時の江戸型筥迫を見たことのある方はお気づきだと思いますが、江戸型の装飾的特徴の一つがこの縞々に染めた玉縁を使っていることなんですね。

    これに私は昔から強い憧れを抱いていました。
    いつか実現したいと何年か越しの夢を叶えました。

    素人見には何てことなさそうに見える縞々ですが、職人さん的には非常に難しい技術なんだそうです(サンプルを見せるやいなや即座にお断りされること度々)。

    他の色も欲しいのですが、お金をかけて染めに出していたら正直儲けなんてない。
    そんな私のこだわりを知って、講習会に参加しているH.Sさんから現在色々な方法を提案していただいております。

    最終的には、職人さんに頼むよりも私自身が染色を勉強したほうが早いという方向に向いているのですが(これだけを教えてくれる先生を探している)、何事も習得には時間がかかるので、まだしばらくは職人さん頼りの斑暈しの玉縁です。


    ちなみに、今回の玉縁は「縫い玉縁(包み玉縁)」です。

    初めの頃の教本にはこの縫い玉縁のやり方で解説していたのですが、かなり細い玉縁のためミシンの技術が必須なことから、現在の教本では「挟み玉縁」のみを解説しています。

    縫って細い玉縁にするのは至難の技ですが、挟み玉縁なら初心者でも失敗なく極細の玉縁を作ることができます。
    ある意味画期的な方法ではあるのですが、挟み玉縁は「薄い布」でこそ生きる技。
    少しでも厚みのある生地を使うと、途端に仕立ての限界にぶちあたります。

    それが嫌で、私は今は縫い玉縁オンリーです。
    細い玉縁さえできれば、縫い玉縁は断然スマートな仕上がりになります。

    縫い玉縁は難儀で試行錯誤の連続でしたが、あるときフとした閃きから解決の糸口を見出し今に至りました。

    何年悩んでも解決しないときは、ちょっと休んで寄り道(挟み玉縁)していると、あるとき急に天から閃きが降ってくるものなんですね。
    このように、細い玉縁一つにも長い苦労があるのです。


    それでも、お客様が「筥迫ステキだわ〜ハート」と歓声をあげている姿を見ると、報われた、、、と思うのです。

    しかし筥迫を見たご婦人方が一様に発するあの歓声は何なんでしょうね。あのミーハー感(笑)。
    いや、それがうれしくて言ってるんですけどね。

    そういう歓声を上げさせてこそ筥迫!という作品を、これからもたくさん作っていきたいと思っています。


    ------------------追 記------------------

    大阪の刺繍教室『いち桃』さんが、筥迫工房の刺繍台を使った独自の方法を考案してくださいました。
    ご興味のある方は是非ご参照ください。
    小物用日本刺繍台の張り方 その1

    『筥迫用 刺繍台の使い方』にリンクを貼ってくださいましたが、
    実はこれは以前の台で、今はここに『糸止め』というものが追加されております。
    たぶんいち桃さんがその後に解説してくれると思いますが。
    (他人任せ、、、汗)



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    【2016.04.07 Thursday 15:58】 author : Rom筥
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