『筥迫工房』のブログ 筥迫の作り方と材料の販売 筥迫!箱迫!箱セコ!ハコセコ!はこせこ! 管理人:Rom筥
春なので、中山きよみ+13コレクションの中から『桜』の筥迫&懐剣をご紹介します。
東京はもう散ってしまいましたが、まだ東北や北海道ぐらいなら咲いているんじゃないかと思うのでお許しを。
あでやかな赤が全く桜っぽくないので、桜と言われなければ誰も気がつか無さそう。
私も刺繍裂をいただいたときに全く桜だと思わず、配色だけで筥迫房も懐剣房も真っ赤にしてしまいました。
タイトルを見て「これ桜だったんだ〜(汗)」と気がついた次第。
でもこれが桜だとわかっていたとしても、ピンクや白は使えないですね。
桜は「枝」とか「幹」を入れてしまうと桜の季節限定使用になってしまうけれど、花だけなら日本の花として一年中使えると聞きますし、それで桜っぽくない色にされたのかもしれません。
被せと胴締めが同柄になっていても、胴締めには被せより長く上下にスペースがあるので(山と胴部分)、打ち合わせではここをしっかり埋めるようにお願いしています。
アンティークの筥迫などでは、被せの下辺に合わせて胴締めの図案が途切れていたりするものが多いのですが、
「刺繍職人と仕立て職人の連携が取れていないな〜」と思ってしまいます。
刺繍は上手いのにやたらと不自然。
胴締めの天面まである程度埋まっていると、筥迫全体が装飾されている感じになるので完成度が違います。
私がお仕立ての依頼を受けるときは、必ず図案の段階で見せていただいて、筥迫としてより効果的な刺繍の配置を提案させていただいております。
結局、図案にかける打ち合わせの時間が一番長く、また何より大事と思っています。
この筥迫では胴締めに白い花がかかっていますが、白い花の下の葉と、天面の赤い花は被せには入っていません。
そういうことです。
特に胴締めの「山線」に刺繍が少しでもかかっていると、刺繍に立体感が出ます。
この山線にどのように図案を掛けるかがけっこうポイントだと思っています。
着物地で作るとなかなか具合よくはできませんが、刺繍は自分で好きに配置できますから、やはり自分で装飾できる物があると筥迫の楽しさは倍増します。
中山13コレクションの「巾着」は、このようにけっこう大きな図案がされています。
実はこういうのって仕立て師泣かせではある、、、。
ここは巾着の「タック」が入るところだから仕立てが難しいのよ(泣)。
つまり刺繍に折り線をいれなければならないということ。
私も以前自分の筥迫で、左から右に流れる数本の葉を刺繍したのですが、タックが入ると刺繍が浮くんですね。
仕立てする側とすれば、できるだけ小さなワンポイントでタックに掛からずに刺繍を入れてほしいところですが、刺繍をする人たちにとって巾着の図案は凝りどころ(中山先生はそんな余裕はなかったとは思いますが)。
どうしてもタックに刺繍が入ってしまう場合は、できるだけ細かい針目で刺繍するか、もしくは細かく押さえをするとよいでしょう。
筥迫に赤は当たり前すぎてつまらなく感じる時も多いですが、それでもやっぱり赤を配置すると「赤の力はあなどれん」と思ってしまいます。
刺繍裂をいただいたときの印象と、筥迫が仕立て上がった後の印象がガラリと変わることがあります。
今回のように赤が効果的に刺繍を引き立てたときは、仕立て師として「やった!」と思う瞬間です。
その驚きを知るのは、刺繍をした人と仕立て師だけ。
すごく役得だな〜と感じます。
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