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2017.7 中山きよみ+13コレクション(3)江戸型筥迫『しあわせ尽くし』
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    おめでた〜い宝尽くしの図案が詰まった筥迫です。

    刺繍に関しては中山先生のブログ「日本刺繍nui nui」をご覧ください。

     

    こちらのブログでは、あくまで仕立ての面から筥迫を見ていきたいと思います。

     

    私は筥迫を作り始める人たちに「帯地はやめてね〜」と常々言っておりますが、筥迫を作る人が誰でも刺繍ができるわけではないので、刺繍に匹敵するものとして金襴などの派手な生地で作りたがる人が多い。

     

    裏に糸がたくさん渡っているようなゴージャスな織地でも筥迫を仕立てられないわけではありませんが、どんなに不格好になっても使うのは婚礼の一回こっきり、「襟元から出すわけじゃなければほとんどわからないから!」というだけならどうぞご自由に。

     

    しかしこれが筥迫作りに凝り出すようになってくると、とにかくきれいな仕立てで筥迫を作りたいと思うようになる。

     

    懐中袋物というのは布をたくさん折りたたんで作るものなので、ほんの少しの厚みの違いで出来上がりに大きな差が出るという世界。

    どんな素材を使っても同じようにスマートに一定の仕上がりに作ることに苦心するようになる。

     

    薄手の金襴や錦などであればきれいに仕立てられなくもないのですが、どこまでの厚みならOKで、それ以上の厚みならどう処理するかの判別は、とにかく数を作って経験として判断していくだけです。

     

     

    刺繍の厚みは別物

     

    刺繍の筥迫には、帯や着物にしないような分厚く肉を盛った刺繍をすることがあります。

    今回の作品は肉入れこそされてはいませんが、帯地にふんだんに刺繍が施されています。

     

    既存の布は生地全面の厚みは均一なので「厚みのある生地はダメ」とひとくくりに言えるのですが、刺繍の場合は装飾にいかに厚みが出ようが、布が折り返される「縁」の部分にさえ刺繍をいれなければ問題なし。

     

    「縁」にあたる部分に厚みがあると、同じ分だけ裏にも厚みが回るので倍々で厚みが増えていきます。

    これに厚みの出る挟み玉縁を付けようものなら、三倍ぐらいの厚みになります。

     

    これが金襴の厚みがダメで刺繍の厚みがOKな理由です。

     

    全体的に肉付きがいいよりも、締まるところは程良く締まり、ふくよかなところはより肉が盛られている(もしくは刺繍こってりな)姿の方がより魅力的に感じてしまうのは人間も筥迫も同じってことです。

     

    中山コレクションのすごいところは、江戸時代の筥迫さながらの全面刺繍です。

    刺繍がないのは底面ぐらい。

     

    裏面にも刺繍がびっしり。

     

    もちろん胴締めなどの柄合わせ部分はどうしても「断ち切り」になってしまいますし、あえて被せ内で断ち切りにすることもある。

     

    そんなときは、玉縁のすんでで刺繍を止めていただければ仕立てには影響しません。

    刺繍が玉縁に被ってしまうと玉縁は凸凹になりますが、その前で刺繍を止めてもらえれば玉縁のラインはあくまで真っ直ぐにできるのです。

     

    折り返しにするときも刺繍は小口(折り返した厚みの部分)部分までで止め、裏まで回さないというのがベスト。

    これは厚みを出さないようにするためなのですが、厚みが出るとそれによって柄合わせがずれてしまうからですね。

     

    しかし、これを刺繍師に理解してもらうのはかなり難しい。

    これが打ち合わせに時間がかかる理由なのですが、そんな打ち合わせの必要性がわからない方はどんどん刺繍を進めてしまう。

     

    このような場合はこちらも腹をくくって、とにかく筥迫の形に仕上げてみた上で、次作られる場合はこうした方がいいですよと提案しすることにしています。

    納得して次の刺繍に役立てていただけると、一つこなすごとによい作品に仕上がっていく。

    もちろん必ず納得していただけるとは限らないのですが。

     

    これが、筥迫の制作には刺繍師と仕立師の連携が必要と言っている所以です。

     

    仕立てやすさは仕立て師だけのメリットではなく、仕立てやすい=スマートな仕上がり(出来上がりの美しさ)につながるので、刺繍師にも無視できないことなのです。

     

    中山+13の作品は、中山先生と何年もかけて打ち合わせしたこともあり、大変仕立てやすく美しい仕上がりになったと自負しております。

     

     

    筥迫の王道は『玉縁仕立て』

     

    筥迫と玉縁は切っても切れない関係にあります。

     

    とはいっても、折り返し仕立てだから格が下がるなんてことはありません。

    お客様から「玉縁で」と指示されても、あきらからに折り返しの方が効果的と思われる場合は折り返しをお勧めします。

    より美しく仕上がる方法を考えます。

     

    教本で筥迫の玉縁を作る場合は「挟み玉縁」を採用していますが、これは誰がやってもほとんど失敗がなく極細の玉縁に仕立てられるからです。

     

    そんな挟み玉縁のデメリットは、何と言っても厚みが出ること。

    ただでさえ厚みのある布や、こってりと刺繍が入った半襟などに使うと、とんでもなく分厚い筥迫が出来上がります。

     

    そんなことから、厚みを抑えた仕立ての美しさを重視したいのであれば絶対に「縫い玉縁」です。

     

    縫い玉縁は表布を折り返さずに玉縁布で包んで、極薄の玉縁布だけで折り返すので厚みは最小限に抑えられるからです。

     

    しかし、この縫い玉縁は相当ミシンのスキルがないとできないのですね。

    簡単と思われるかもしれませんが、1mmの際を縫っても布や厚紙の厚みで仕上がりは2mm。

    これが2〜3mmでしか縫えないとなると仕上がりは3〜4mm。

    う〜ん、3〜4mmの野暮ったい玉縁にするぐらいなら、太っても挟み玉縁の方がマシ!

     

    仕立ての依頼が来るときは、できれば縫い玉縁で仕立てたいという気持ちはあるのですが、刺繍の仕上がりによっては不本意ながら挟み玉縁で仕立てざるを得ないということが多い(というかほとんど)。

     

    縫い玉縁は刺繍する人にも難しく、仕立てる人にも難しい。

     

    私は未だに昔のあの美しい玉縁には追いつけない。

    でも、いつか、いつかあの筥迫に追いつきたいと夢見て今日も筥迫を仕立てています。

     

     

     

    こちらの筥迫は「開き扉」型。

    被せを開いて、更にパタパタっと扉を開いていきます。

     

    最後の蓋は「針山」になっています。

    あくまで裁縫道具入れが好きな私。

     

    でも裁縫道具入れなのに「鏡」がついているのはおかしいので、「本来の化粧道具入れにしましょうか?」(ブラシが入るように細長の仕切りを付ける)と中山先生にお聞きしたところ、「針山がかわいいのよ〜」とのこと。

    やっぱり女は裁縫道具が好きなのね♡
     

    ということで、こちらの筥迫にだけサンプルとして「糸切りハサミ」と「指貫」のセットをつけました。

    欲しい方はオプションでお請けいたしますと言ったところ、開き扉をご依頼された全ての方から後日ご注文いただきました。

     

     

    オプションはこちらの三点セット。

    (この画像は別の筥迫のものです。通常は筥迫の内布とお揃いにします)

    ハサミは携帯裁縫用具入れ用の「三条みすや」のハサミでは小さすぎるので、もう少し大きめのです。

    糸巻きも入れました。

    後は各自何でもお好きな物を入れていただき、是非おもちゃ箱に仕上げてください。

    (こんなものを実用できないので、たまに出して楽しんで見るだけのおもちゃ箱という感じです)

     

     

    このような型は中に何を入れなくても、蓋や底に中側に刺繍が次々と出てくる仕掛けがあったら絵本のようで素敵だろうな〜と思うのですが、こんな小さな筥迫に相当量の刺繍をすることになるので考えるだに恐ろしい。

    まず自分は絶対にやらないだろうけど、仕立ての依頼があったら楽しいだろうな〜と思うだけ。
     

    自分だけの宝物を作りたい方、是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

     

     

    江戸型の筥迫は今のところ「一つ口」とこの「開き扉」しかできませんが、この型は如何様にも中を変化させることはできます。

    これからもっと楽しい仕掛けを作って、見る人に「あの中どうなっているのか見てみたい!」と言わせるようなワクワク感を感じさせる筥迫を作っていきたいと思っています。

     

     


     

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    【2017.07.30 Sunday 16:16】 author : Rom筥
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