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キーワード:我国固有の趣味

「袋物」というと、現代では園児が使うような巾着や、小学生のサイドバッグのような「柔らかい布地の手提げ袋」というイメージがあります。

 

しかしその昔は、主に帛(布)と革で作られた「物を入れる(カバーする)」ような物は全て「袋物」でした。

 

その中でも、茶道の「仕覆(しふく)」は今も昔もそのまま袋物というイメージですが、筥迫が袋物というと現代人にはちょっとイメージが結びつかない。

 

筥迫工房の講習会ではまだそれほど複雑な型は作っていませんが、最近はこれらの袋物を熱心に作り込み、上達する人が増えてきました。

このような人たちがいるうちに、徐々にでもかつての手提げ文化に入る前のあの複雑な型を作っていきたい。

 

そうなると、現代人のイメージする袋物とどうしても区別したくなるのですが、やはり「嚢物(ふくろもの)」で書いた方が区別しやすい。

 

漢検準一級で出てくる漢字なので、私も書けません(苦笑)。

でもこのブログを見ているような皆さんは、ぜひ見た目で覚えていてくださいね。

 

 

 

我が国固有の趣味

 

筥迫というものは、現代人にはやたらと不思議な形に思えます。

 

しかし袋物を取り巻く日本文化や筥迫の沿革を辿ってみると、実は成るべくして成ったという型のように思えます。

 

筥迫は非常に日本的というか日本趣味なものです。

(これらの成り立ちはブログでは書きにくいので、対面で話せる研究会のような場を借りてお話したいと思います。)

 

筥迫と同じような時代に作られた袋物というのは、現代ではほとんど作られておりません。

 

生活様式が変わったから、という言葉で片付けてしまうには実に惜しい、日本文化だからこそ生み出されたというような型がたくさんありました。

 

その時代に書かれた袋物の本の中に、こんなキーワードがあります。

 

紙入れが時勢と風俗につれて変換し内知人に洋服を着する者が多くなり(中略)同時に洋服用の紙入といふものが製出されたのでありました。(中略)

形状や、材料や、意匠等によって、之れを三種に分類することが出来ます。

それは我国固有の趣味に依って造りましたものと、欧米風を模倣したものと、和洋折衷して造りましたものと此三種類あります。(日本嚢物史:井戸文人 大正8年)

 

其れらの技芸の中には、海外の趣味より来たものが有る様ですが、ここの私の説きます処の、袋物は、我国固有の趣味より生まれて発達致しましたもの故

他の趣味に超越して其の型最も曲雅の風致あるもので在ります。

(新型袋物拵へ方:藤井茂太郎 大正14年)

 

西洋の手提バッグ文化が怒涛のように押し寄せた明治・大正期は、袋物業界は否が応でも一大転機を迫られました。

それでも何とか西洋趣味を取り入れようとする姿勢が、当時の嚢物から感じ取ることができます。

 

その当時の西洋趣味は、現代の私たちの目からすればどっぷり日本趣味ですが(笑)。

それらの西洋趣味をすっかり取り除いたものが我が国固有の趣味。

 

現代では、和柄を使った袋物を「和風」ということはあっても、「我が国固有の趣味」というほどの特別感は感じられません。

 

筥迫工房では、この「我が国固有の趣味」を最大限に生かしつつ、ちょっぴり現代感も入れた嚢物を目指したいと思っています。

 

 

 

日本固有の仕立て方

 

ショップや教本の序文に「筥迫は和のカルトナージュ」という比喩を使っていますが、最近はこの言葉にやたらと違和感を覚えるようになりました。

 

私が筥迫作りを始めた当時、ある方に貼り込みの説明をしたところ、「つまり和風のカルトナージュですね」と言われました。

 

言われてみればそうなのかな?と深く考えずに思い使い始めたのですが、当時は「貼り込みとはなんぞや?」を解くようなレベルではなかったので、手芸的なノリで使っていました。

 

しかし、その後資料として古い袋物を集め出すようになって、これはただのカルトナージュなどというものではない、ということに気がつき始めましたのですね。

これはずっとモヤモヤと自分の中でくすぶり続けていました。

 

古いサンプルを集めて知った「日本固有の趣味」というヤツのこだわり方が尋常ではなかったからですね。

 

かつて或材料を以って或名工に最上の仕立を依頼しました事がありました。(中略)

其形状、肉合、手ザハリなどが一点の難もなく、誠に鮮やかに出来て居ります。(中略)綴った痕跡が認められないのでありましたから、其事を質問しますと、全部針を使わないで作り上げたと得意になって居りました。(中略)

上等品の製作の妙所は此仕立方に限ると申しました(中略)

名工必ずしも糊張にはしませんが、最上等品に、最巧な技を揮ふのは之を第一とするのであります。

(日本嚢物史:大正8年)

 

材料に同じ革を用いましても日本風のものにあつては、その縫方までも日本趣味を応用して居ります。

(日本嚢物史:井戸文人 大正8年)

 

ここでは「縫方」とありますが「貼方」も同じようなことがいえます。

 

作り方さえ日本趣味、というところがいかにもな嚢物ですが、ここにカルトナージュと簡単につなげられない理由があるような気がします。

 

昔の日本刺繍の筥迫の仕立は、本職の職人さんが作っていたものです。

現在の筥迫は業者さんが作っています。

この二つは技術的には雲泥の差があります。

 

しかしそんな筥迫仕立ての技術を持った職人さんは、昭和50年始め頃にはすでにいなくなっていたようです。

 

職人さんがいなくなって久しい現代ですが、なんとか私たちの手で、あの時代の筥迫を蘇らせたいと切に願っております。

 

 

 

ショップ『緒締め玉』入れ替えました

 

 

「緒締め玉」とは、筥迫の「緒締め」として使われるビーズです。
 

ショップでこの緒締め玉の種類を入れ替えることは前々から考えていましたが、ビーズは打ち紐と同じぐらい面倒で、今までのびのびにしてきました。

 

しかし最近、意を決してビーズを入れ替えることにしました。

 

「丸玉ビーズ」は色を絞りました(全10色)。

「Aパール」は、前回使っていたパールからもうちょっと質の良いものに入れ替えました(全7色)。

「ガラスビーズ(大穴)」は、元は大穴ビーズです。これは種類を色数を増やしました(全10色)。

 

それと一袋単位の個数も6〜10粒にしました。

値段を上げるよりも、個数を減らすことにしたということでご了承ください。

 

 

 


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