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2018.7 日本刺繍の定家文庫 nano mofさんの作品

こちらは、7月10日に一瞬掲載したものですが、改めて掲載させていただきます。

 


 

画像は前々から用意していたのですが、確か梅雨も早々に開けて急に蒸し暑くなった時期で、何か清涼感のある作品をと思って用意していたものでした。

 

nano mofさんの刺繍による定家文庫をご紹介させていただきます。

去年(2017年)の秋にお仕立てさせていただきました。

ご好意により掲載させていただきます。

 

菊=秋ですが、この猛暑にうんざりしている皆さんへ、爽やかな秋をイメージしてほしいという願いを込めて(笑)。

 

色味が何とも上品で、清楚なお嬢様的お筥です。

 

 

nano mofさんにコメントを求めたところ、「刺繍下手くそなのに定家文庫に手を出してごめんなさい」とのことでした。
刺繍教室の作品展に出品するために作られたそうですが、当時は五十肩との闘いだったそうです(ご苦労さまです、、、)。

 

今の世の中で定家文庫を持っているのってほんの数人ですよね…。
「やった(^^♪」って感じです。

 

 

nano mofさんは、お嬢さんの成人式の筥迫のために筥迫作りをはじめました。

掲示板を遡るとその頃のnano mofさんの筥迫が登場しますが、始めの頃は、確か刺繍半襟で筥迫をたくさん作っていらっしゃったと思います。

 

刺繍半襟は見かけは素敵なのですが、筥迫を作り慣れてくると色々とうまくできないところができてくる。

 

限界を感じた(弱った)nano mofさんさんに、すかさず日本刺繍を勧めたのがRom筥でした。

 

その後はあっという間に地元の日本刺繍の先生を探し、お嬢さんの成人式に念願の刺繍筥迫を作ってしまったのでした。

その間、確か一年ぐらい、、、。

母の執念ですね。

その時の様子はこちらの過去ブログをご覧ください。

 

 

筥迫が縁で日本刺繍を始め、講習会にもちょくちょく参加いただき、今では定家文庫に至るです。

 

最近のnano mofさんは、次女さんの成人式の前撮りが終わったそうで、次の三女さんの筥迫の前に、花嫁さんの筥迫を作ることにしたそうです(三姉妹!作りがいありそう〜)。

 

人生は幾つからでも、思いもよらない方向に進むものだと、nano mofさん含め、己の胸にも手を当てて実感しています。

 

 

 

定家文庫の飾り房

 

定家文庫を鑑賞する場合、まず全面に施された「刺繍」に目が行くのは当然のこと。

しかし、仕立師側の立場から言えば、定家文庫のこの雰囲気を作っているのは「房」です。

 

この定家文庫から、飾り房は専門の職人さんに依頼しています。

 

以前はショップで販売している房糸を使って私が作っていたのですが、定家文庫の格には絶対に「正絹の撚り房」というこだわりを持ち続けていました。

 

筥迫や念珠などの撚り房は機械で作られたものがほとんどですが、このような定家文庫の房は「工芸の房」です。

日本刺繍の定家文庫にこそ、この格が必要なのです。

 

しかしながら、現代でその技術を持つ職人さんがいたとしても、この房を再現してもらうことはとても難しいことです。

 

物作りは、自分が作るだけではなく、どうしても他の人の力が必要になる時があります。

 

ネット全盛の現代は、あらゆるものがネットで探せるような気がしてしまいますが、実際は職人さんを見つけても、飛び込みでどのような知識があるかわからない人を相手にすることは、職人さんにもリスクがあるのでまず断られます。

(私自身も、最近はネットだけでやり取りする方からのお仕立ては受けないようにしていますし)

 

相手がどんな人かを短時間で理解するには、紹介という「人の縁」に勝る確実性はありません。

 

何かをやっていれば、いつかどこかで縁は繋がるもの。

しかし、そのような縁は、じっくり待つ姿勢を持ってこそやってくるものだと痛感しています。

 

 

そんなご縁が結ばれても、一口に撚り房を依頼するといっても、房の色から房頭の角度まで細かい指定が必要で、「適当にこんな感じ作ってください」は職人さんには通用しません(苦笑)。

 

たった一つの房のために、何度も試作が繰り返されて出来上がったものだからこそ美しいのだと思います。

 

 

出来上がった作品は、その都度撮影し、関わった職人さんたちにお見せしています。

 

職人というものは、出来上がった作品に自分の技術が埋め込まれ、それが更に美しい作品に昇華されることに、何よりも誇りを感じるものだからです。

 

皆で寄ってたかって一つの美しい作品を作る。

 

何とも素敵な世界です。

 

 

 

定家文庫と筥迫

 

『定家文庫』は別名「定家袋」ともいい、 武家女性や裕福な女性が化粧道具その他の小物を入れ、お供の女性に持たせた袋物です。

 

私の手元に、花魁と禿を写したこのような古い画像があります。

 

 

禿(かむろ)というのは、花魁の身の回りのお世話をする10歳前後の女の子のことで、ほとんどの花魁の写真には、この禿が華を添えています。

 

そして、この画像で禿が抱えているのは「定家文庫」ではなかろうか?!

 

禿の小道具(?)はいくつかあるようですが、定家文庫のような物を携えている画像を見つけると、ついうれしくなって保存してしまいます。

 

定家文庫は、

粧具を納めた箱を錦の嚢(ふくろ)に入れて組緒で結び、晴れの時は小婢、長婢が携えて従うことは、京坂で古風を残すひとつである。江戸では従来からこれは用いていない。(日本の美術5「守貞漫稿」定家文庫解説より)

とあるように、関西の文化です。

 

更にこちらの写真には、「花魁」ではなく「大夫」とあるので、「大夫=関西」(?)と考えるとしっくりきます。

(これは定家文庫?それともただの箱?)

 

しかし、よく見ると二人の禿の胸元には「筥迫」が!

 

左の子は何だかすごい角度で入っているので、よく見ないと気がつかないですが(苦笑)。

 

「装飾された筥」という面では、筥迫と定家文庫は近いイメージを持ちがちですが、風俗博物館の筥迫の説明によれば、

 

御所周辺で確立をみた紙挟そして紙入が、いわば女官の手慰みとして、その趣味の発露として展開したとは別に、江戸での大流行は、専門職を登場させ、一種の威儀具のような贅沢品へと紙入を脱皮させた。 (風俗博物館)

 

とあるように、定家文庫=関西、筥迫=江戸とはっきり棲み分けられていたと思います。

 

維新以降は関西でも筥迫は普及していたでしょうし、定家文庫と筥迫が一緒に撮影されているというのも、私的にはちょっと感慨深いものがあります。

 

 

※現在、手持ちの材料(桐箱・金具等)が全てなくなった状態なので、しばらく定家文庫のお仕立てはお請けできません。

あしからずご了承ください。

 

 

 

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