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これから何をすべきか(1)

皆様ご無沙汰しておりました。

なんだかんだと3週間ぶりの登場になってしまいました。

Rom筥はとりあえず元気にしております。

 

久々にブログを書いていたらやたらと長くなってしまったので、今回は二回に分けて掲載します。

 

あいかわらずの長文で読む人も辛かろうと思い(苦笑)、以前私が作った「櫛入れ」なんぞを挟んでみます。

(私が刺繍したものなのでヘタクソなのはご容赦を!)

 

 

修理に出していたMacが無事帰還したのもつかの間、その後の処理に追われ、毎年恒例の教会の馬小屋作りに泣き、今年最後の講習会を終え、仕立ての納期にギリギリ間に合わせるために走り回っていたので、ブログを書く気持ちの余裕がありませんでした。ごめんなさい。

 

残りの仕立て仕事は職人見習いのYさんに任せ、私自身はやっと来年度の講習会や教室のこと、これから自分の進むべき道を12月、1月で組み立てる時間ができました。

 

ブログを書きながら自分の考え方をまとめるというのが常なので、この内容を元にショップの方でもう少しわかりやすい説明にして近日中にアップすることにします。

 

 

なぜこの文化がなくなってしまったのか?

 

成り行きで始めた筥迫活動が、今や私のライフワークになってしまったという人生の不思議。

とはいえ、始めた年齢が遅かったので、自分がこれからフルに筥迫に費やせる時間は限られています。

 

筥迫に真剣に向き合い始めた頃、始めに思い浮かんだ自分の将来像は「職人」でした。

しかし今年でやっと10年、これでは本格的に職人として花開く前に年老いてリタイアしてしまいそうです。

ではこの限られた時間で自分が何をすべきなのか。

 

現代で物作りをする人たちは、自分で作ったものは自分で売ることを考えるでしょう。

ネット全盛の今はそんな時代ですよね。

 

でも私の場合は「マニュアルを売る」というのが出発点だったので、初めから「筥迫を作って売る」という考え方はなかったような気がします。

 

それよりも筥迫作りを通して感じたのは、

「糊だけでこれだけ精巧な物が作れて、作ることもこんなに楽しいのに、なぜ今この文化がないのか?」でした。

 

 

筥迫はニッチ市場

 

ブログを始めた頃に「箱迫」ではなく「筥迫」という書き方にこだわったのは、その当時ネットで「箱迫」を検索すると花嫁さんや七五三のページがたくさん出てくるのに対して、「筥迫」で検索すると純粋に筥迫が好きな人たちの情報に辿り着いたことからでした。

 

筥迫のことをまだ何も知っちゃいない頃の私でも、筥迫に愛着を持っている人たちは「筥迫」という字を使うのだということが痛く心に響いたのですね。

 

筥迫が好きでなければ辿り着かない桃源郷のようなところにしたいと思い、あえて検索しにくい「筥迫工房」という名称を使ったのです(笑)。

 

それが最近では婚礼関係のサイトでも「筥迫」を使うところが増えてきたようで、市民権が出てきたのが嬉しいようなつまらないような。

 

 

筥迫は完全なニッチ市場です。

知っている人はとても少ないけれど、好きな人は大好きな世界。

 

愛好者の中には「筥迫を自分で作ってみたい!」という人がいることも知っていました。

 

その人たちの熱量はネットを通してでも感じられたので、例え日本中にそんな人たちが5人ぐらいしかいなかったとしても、その人たちのために自分が労力をかけることは意義のあることに思えたのです。

 

しかし筥迫工房の宣伝ツールといえば、週に約一回程度アップされるこのブログのみです。

始めた頃はネットの検索ページを10ページぐらい行かないと出てこなかったこのブログですが、毎週「筥迫!筥迫!」と書き続けていたおかげで、今では堂々と始めの方に出てくるようになりました。

 

おかげさまでこれまで売れた教本(縢襠付筥迫のみ)を数えてみたところ、この10年で900冊ちょっとぐらい。

何千部、何万部という一般的な出版物には比べようもありませんが、少なすぎもしないこの数はニッチなニーズを物語っているのではないかと思います。

 

教本の方は来年か再来年ぐらいにはもう一度改定しようと考えています(またか!)。

内容はそれほど変わらないので、今持っている人たちは新たに買い直す必要はありませんが、この教本は実際に講習会とも絡んでくるので、互換性を考えての改定だと思ってください。

 

これについては来年から始まる「通信」のことも合わせて(2)でご説明したいと思います。

 

 

これから何をすべきか

 

講習会は筥迫以外の袋物を作るきっかけとなりました。

貼り込みというものを見直すきっかけにもなりました。

 

講習会に来る人たちに「貼り込みの良さは?」と聞くと、

「縫わないでこれほどの物ができることに感動する」

といいます。

 

このような技法こそ昔はプロの領域だったので、職人がいなくなったと同時に文化が消滅してしまったのです。

必然とはいえ私にとっては大きな損失に思えました。

 

昔の袋物が取り上げられるとき、メインになるのは装飾や使っている素材に対しての価値だけ。

しかし、私は筥迫に代表される昔の袋物の仕立ての美しさに魅せられたのです。

この仕立てがあるからこそこの装飾(刺繍)が生きるのだと。

 

いくら筥迫の形を真似して作ったところで、昔の職人が作った筥迫とは子供と大人が作ったほどの違いがあります。

どうしたらあそこまでの筥迫ができるのか。

どうしてこのような考え方で物を作る方法が失われてしまったのか。

 

そんなジレンマを感じていた私が講習会で人を教えることに、「私が教えてほしいぐらいだ」という気持ちになることも少なからずありました。

 

しかし、人を教えることによって新たな技法を見つけ出し、これまで答えが出なかったものに次々とヒントが与えられてきました。

人に教えることによって気がつくことのなんと多いことか。

 

気がつけば講習会中心に物事を考えるようになっている自分に気がつきます。

 

 

 

昔も今も

 

古い袋物を崩してみたときに、今の自分と全く同じ考え方で作っている箇所を見つけることがあります。

 

昔の袋物が残っていてその作り方が失われていたとしても、貼り込みという考え方をしっかり理解して突き詰めて考えていくことができれば、当時それを作った人と似たような発想で作れるものだということに気がついたのです。

 

100年前に同じ型を作った人にシンパシーを感じるとは、なんと感慨深い瞬間でしょうか。

 

そうやって積み重ねてきたものがたくさんありますが、もしいつか私が筥迫活動を辞めた後に、他の人が私と同じようにやることは正直難しいと考えています。

 

何事もなければ私もあと10年は同じ状況で続けられるのではないかと思うのですが、その後は同じエネルギーで活動できるかまでは自信がない。

これまでの10年で驚くほど仕事の幅も広くなってきたので、これから一人で全てをこなすことにも限界を感じています。

 

仕立ての仕事は自分より上手い人は出てくると思うので、これからはできるだけ職人さんを育てていきたいと考えています。

技法と作り方を確立してしまえば私以外でも教えられる人はいると思うので、各地で活躍できる講師も育てていきたいと思っています。

 

そんな中で私自身がやるべきことは、自分にしかできないことにできるだけ的を絞ること。

それが何かを考えると、やはり日本固有の趣味である昔の型をできるだけ多く再現し、その型紙と作り方を一つでも多く作り残すことなのだと思っています。(ちなみに昔の袋物の教科書に型紙が付いていますがあれは使えない)

 

そして実務的な活動に限界を感じてきたら、本当に動けなくなる前に出版することを考えましょうかね。

 

 

ニッチな世界ではありますが、昔流行った物を現代向けに再現しているだけなので、技法と材料の供給さえ確立してしまえば流行に左右されることもない。

 

趣味で楽しんでくれる人がいて、それをちょっと超えたところで志を持つ人がいて、そういった人たちの手でこの文化が細く長く続いてくれることを願っています。

 

 

 

 

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