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日本の伝統という幻想
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    「打掛けを着る時は筥迫の胴締めを外すっていうこと、今の人は知らないんですよ。

    だからそういうことを私たちがきちんと伝えていかなければならないと思うんです。」

     

    ある時、婚礼事業に携わるその道の大ベテランといわれる方に言われた言葉です。

     

    人は自分にその技術を与えてくれた年長者から教えられたことを、長い歴史の中で伝えられてきた「伝統」と信じ込むもののようです。

     

    長年そう信じてきた人に対し物申すのは、、と葛藤すること数分、最後についぼそっと本音が出てしまいました。

     

    「そもそも筥迫から胴締めを外してしまったら、それは筥迫とは言えなくて、、、」

     

    今時は婚礼用の「筥迫セット」として売られているものの中に、初めから胴締めが付いていないものがあります。

    胴締めは前面背面の二層式を止めるための物で、いわゆる「これがあってこそ筥迫!」なのに、胴締めがないということは袋物的に言えばそれはただ布をぐるっと回したただの「紙入れ」!

     

    紙入れだったら一般人の日常使いですが、本来筥迫は高位の武家婦人だけが身に着けられるものであって、千代田城本丸なら御目見得以上の女性がここぞ!という時にしか使わなかったもの。

     

    ハレの日にわざわざ「格」を落としてどうする。

     

     

     

    日本の伝統という幻想(筥迫工房の伝統という幻想)

     

    何で急にそんな話題を出したのかといいますと、去年こんな本を読んで面白かったので今回取り上げさせていただきました。

     

     

    筥迫工房が作っているものを「伝統工芸」と勘違いされる方が多いのですが、実際は全く伝統として受け継がれていません。

     

    ほぼ絶滅した文化であって、筥迫工房が独自の解釈で改造して勝手に文化に仕立て上げているだけのものです(夢を壊して申し訳ない)。

     

    あくまでニッチなニーズですが、それでもこんな活動をリスペクトしてくれてる人は少なからずいて、それは多分伝統的な雰囲気に吸い寄せられて集まって来た人々なのではないかと思います。

    (あなたのことよ?)

     

     

    以下、この本からの引用です。

     

    日本人が弱い「伝統」のパターン

    <日本人は伝統好きで保守的>だ。これは間違いない。

    けれど同時に、<日本人は新しいもの好きでミーハー>の一面を持つ。まったく逆だ。

    この矛盾を二つ合わせると、<新しく登場したけれど、実は古い伝統をバックボーンに持っているもの>となる。

     

    何これ、筥迫工房のこと? あなたのこと?

     

     

    「江戸マジックについて」

    さて、伝統ビジネスにおいては、なによりも時代の古さが価値を持つ。さきほどから何度も言ってきたが「明治以来の日本伝統」よりは「江戸以来の日本の伝統」のほうが当然古いので、価値がある。なので、江戸以来を名乗る伝統は多く、私たちも、「ああ、ずいぶん昔からあるんだな」と感じるのだ。

    (中略)

    江戸時代の初期に始まった伝統ならば、約四百年の歴史がある。しかし、幕末に始まった伝統はほとんど明治初年と同じなのだから、約百五十年の歴史。しかし「江戸時代から」という言い方をすれば、この二つはほぼ同じ程度の歴史があるように受け取られる、ここに「江戸」マジックがあるのだ。

    確かに筥迫全盛といえば「篤姫」の時代。

    ほぼ明治維新〜。

     

    以前掲示板に自作筥迫をアップしてくださった方が、結婚式の時にびら簪をつけて着付けの方に渡したところ、ビラ簪を取って着付けられてとても残念だったと書いていました。

    「花嫁さんには ビラ簪はつけないものなんですね?」

    って、そんなことない〜〜(冷汗)。
     

    胴締めを外されたということは多分「打掛」を着ていたらしたのではないかと思います(打掛にびら簪は邪魔なのだろう)。

    しかし庶民が打掛を着るようになったのも多分戦後のレンタル時代からのことだと思いますので、たかが昭和からの伝統〜。

     

    もし万が一、皆様の身の上に上記のような災害が起こりましたら、「こちとら江戸時代の価値観に基づいて作っているんでい!」と私が小一時間説教して差し上げましょう。(爆笑)。

     

    実は明治時代に創られた、日本古来っぽい伝統が多い

    今時の和婚の衣装を説明したページには決まってこう書かれています。

     

    「江戸時代に武家の女性が用いた懐中用小物入れが起源で、身だしなみの必需品だった。」

    「筥迫は成人女性として美しく身だしなみを整えるという意味が込められています。」

    「筥迫は身だしなみを整えるための化粧道具を入れて持ち歩くための小物入れで、今でいうところの化粧ポーチのようなもの」

     

    筥迫が「化粧ポーチ」的イメージにダウングレードしたとすれば、それは完全に維新以降。

    武家女性関係なし!

    維新以降だって、急激に小さくなった筥迫に化粧道具なぞ入るスペースなし!

     

    大体にしてこの時代でさえ「筥迫=身だしなみ」という価値観はないので、「鏡と懐紙が入っているから身だしなみ用にしとく?」ぐらいのこじつけという名の伝統(多分昭和20年以降)。

     

    風俗博物館のHPでは江戸時代の筥迫を次のように説明しています。

    「一種の威儀具のような贅沢品へと紙入を脱皮させた」

     

    「威儀具(いぎぐ)」というのは祭儀の場において中心人物の威儀を正すために使用された重要な道具のことなので、当時の筥迫を身に着けた女性たちは、そっくり返りそうなぐらい胸を張って歩いていたんでしょうねぇ。

     

    その筥迫を明治以降の花嫁アイコンとして用いたのは最良の選択だったと思いますが、「威儀具」より「化粧ポーチ」を当てるあたり、現代人の伝統的イメージも明治止まりということですね。

     

     

    「京都」マジックについて

    「よーじやのあぶらとり紙」は、京都の映画産業の要請。撮影時の顔のテカリを押さえるために生まれたもの。デザインに「舞妓さん」を使っているので、つい、昔から舞妓さんが使っていたんだろうな、と思ってしまう。こういうふうに「すでに古い伝統があるもの」の中に取り込んでしまえば、たとえ明治以降のものでさえ、さながら平安時代から続いているかのように思える。このあたりが、さすが千年の京都の知恵。京都は伝統感の演出がうまい。「都踊り」ではなく「都おどり」でもなく、「都をどり」。この「を」が持つ時代感の演出には、千年の都の叡智すら感じられる。

    ああ、ごめんなさい、筥迫工房も「縢襠付筥迫」とか「四ツ襠紙入」とか使っている。

    伝統文化ではなくても、伝統感はバリバリ演出していました。

    あさはかな10年の叡智でした(苦笑)。

     

    一つ前はダサく、二つ前以上はロマン

    つまり、昭和はダサく、大正明治以上はロマン。

    いや、今は令和なので、そのうち平成はダサく昭和がロマンになるはず!

    江戸や明治は更にロマン満載になるな。やった!

     

    「伝統」に惑わされないためのリテラシーを磨け!

    まさか、筥迫工房のことを言っているんじゃないですよね?(冷汗)

     

    筥迫工房の袋物細工は伝統文化ではなく(そうそう)、伝統ビジネスである(そうそ、、、、えええ〜〜!!)。

     

     

     

    この本は日本の伝統文化を痛烈批判している内容ではないのですが、まぁウンチクとして読むのは楽しいかなと思います。

    こちらに藤井さんの書いた本の内容とリンクした記事がありますので、ご興味のあるかたは是非どうぞ。

     

    着物警察が若い女性を目の敵にする歴史事情(藤井青銅)


     

     

     

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    【2020.01.11 Saturday 12:03】 author : Rom筥
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