明けましておめでとうございます。
筥迫工房開店休業のまま年が明けてしまいました。
年明けの家族親族ご奉公が終わりましたら、また筥迫街道まっしぐらでがんばりますので、
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、トップ画像に掲載いたしましたのは、我が家のお正月飾りです。
私は昔からアンティークの雛人形が大好きで、
筥迫を始めるまではかなり熱烈に収集していました。
とはいえ、東京の狭いマンション暮らしで泣く泣く処分を余儀なくされ、
今ではお気に入りの数点だけを残してその余韻に浸っています。
その点、筥迫はどんなに多くても一つ一つが小さいので助かりますが、
それでさえ現在は山となって散乱するに至り、
試作品等は段ボール一杯になるとさすがに処分することにしています。
しかし作品として作ったものはさすがに処分することもできず、
常に保管に悩まされる人生です(苦笑)。
そんな訳で、筥迫以外に雛の話題もかなり出て来ることとは思いますがどうぞお許しください。
こちらの雛は『楽人(がくじん)』といいます。
一般的な雛人形では「五人囃子」にあたるものです。
こちらの楽人、どこか様子が違うのがおわかりになるでしょうか。
そう、「子ども」ではなく「大人」なのです。
もう一つの大きな違いは、『能』の楽器を持つ五人囃子に対し、
楽人は「火焔太鼓」「鞨鼓」「笙」「龍笛」「篳篥」という『雅楽』の楽器を持っていることです。
この雅な雰囲気がお正月にぴったりで、我が家ではこの時期に楽人を飾ることにしています。
この楽人をつける内裏雛は「有職雛(ゆうそくびな)」と言います。
有職雛とは、古来宮中に伝わる有職故実に基づく衣装の着せ方でできた雛のことで、
かつては皇族やお公家さんたちがお持ちになるものでした。
現在では有職雛は雛人形の一つの種類として売られているのであまり有り難みはありませんが、
アンティークと呼ばれる時代の楽人は、有職雛を持てる人が限られていたため、
あまり数が出ません。
この楽人は「芥子雛」と言われるとても小さな人形です。
高さが8cmぐらいで、顔などは指先ぐらいの大きさしかなく、
手先の細かさなど職人技を感じずにはいられません。
小道具も今時の雛の小道具では考えられないほどの緻密な作りです。
今どきの華美な雛人形を見慣れている目にはとても地味に見える衣装ですが、
大変重厚な生地を用い、袖からのぞく深紅の内袖が
格調高い雰囲気をかもし出しています。
飾り台もあえて塗りではなく、欅と銀杏を使い分けて素材の違いを出しているなど、
この時代の粋が小さな世界に凝縮された一品です。
筥迫にしても雛にしても、昔の職人の心意気、その偉大さに敬意を払わずにはいられません。
実は私はこの楽人をつける有職の内裏雛を持っていません。
この時代は今のように雛人形をセットで販売していませんでした。
単体でそれぞれ買い揃えたのですが、それだからか単体であっても充分に存在感があり、
それだけで飾ってもすばらしい人形がたくさんあるのです。